14.新型コロナウィルスの死者率と肥満率の密接な関係
緊急事態宣言の解除から約2週間が経過したので、その状況と、新型コロナウィルスで亡くなる率と、肥満率の関係について表にしてみると、興味深い内容となったのでそれを紹介することにしました。
2020年04月に実施された緊急事態宣言も、05月25日に全国で解除されました。それから約2週間が経過しましたが、本日の厚生労働省の発表では、幸いなことに、「入院治療等を要する人」は1042名と、1000人近くにまで減ってきました。5月上旬には約6000名もいた事を考えれば、大きな改善です。「退院又は療養解除となった人」も合計14961名となりました。退院された方おめでとうございます。
新型コロナウィルスの感染から発症までの平均日数は5.7日と言われているので、「入院治療等を要する人」が減り続けている状況は、国民の多くが行動変容したことを意味しており、この事実を日本国民の一人として大変誇らしく思います。緊急事態宣言を解除したら、感染者が激増して制御不能に陥り、「入院治療等を要する人」が溢れ返る、そんな悲観論者の予想は外れることになりました。この未来に到達して本当に良かったです。
ネット上では、新型コロナウィルスに対する対応方法の周知徹底は十分だ、といった主張が増えてきたように思いますが、東京都で感染クラスターが発生したのは、キャバレーのような「夜の店」であり、同じ店のホストなどが大量に感染したと報道されています。また、緊急事態宣言が解除される前に、誕生会ということで何十人も集まり、そこで感染クラスターが発生したという話もありました。
なぜ、そんな無防備で思慮の欠けた行動をする人がいるのか、強く疑問に思う人も多いでしょう。
私もそう思いました。これだけ新型コロナに関する情報が日々、発信されているのに、なぜ、そんな行動ができるのか、と。
……残念なことに、ネットリテラシーの高い人とそうでない人が世の中にいるのが現実です。ネットを利用していても、そこに流れる新型コロナ関連情報を見るか、というと、それを意識しない人は、とことん無知なままでいます。
そこに目を向けずとも、好みの情報(例えばゲームとか)だけつまみ食いしていても脳の処理が溢れるほど、情報が氾濫しているからこそ起きている問題です。
ネット上で意見発信をしたり、情報収集をしたりしているある種の「意識の高い人」というのは、実は国民全体からすれば、偏った集団なのだ、という点は、理解していかなくてはならないでしょう。聞き飽きたというほど、ネットでは新型コロナウィルスに対する様々な情報が流れていますが、感染クラスターを起こすような人々には、必要な量と質の情報が届いていないのです。
試験でも80点まで取る努力と、80点を90点に引き上げる努力、90点から100点に引き上げる努力は後者になるほど手間が増える割には効果が出にくくなってくるのと同じです。
それでも日本はまだずーっとマシなほうなんですけどね。幼少時からずっと身近に天災がある状態なので、人知を超えた災厄というものが存在しており、人はそれに注意を払い、共存していくしかない、と我々、日本人は骨身に染みています。完全に制圧し、制御下に置けるなどと考えるほど厚顔無恥ではありませんから。
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さて、今回の話題は、新型コロナウィルスによる人口あたりの死者数と、肥満率の関係についてです。ちらほらとですが、肥満の人は生活習慣病を患っていることも多く、新型コロナウィルスに感染すると、重症化しやすいといった記事も出てくるようになりました。
そこで、以下のように表を作ってみました。
左側が感染者が多い上位16か国と、よく注目される2国(スウェーデン、ポルトガル)の人口、新型コロナによる死者数、死者数を人口(万人)で割った死者率、それに肥満率と南半球に位置している国かどうか示しています。ちなみに肥満率とは人口に占める体脂肪率30%超の肥満者の割合でWHOが発表しているデータです。……世界はデブで満ちている、驚きです。
※日本人は体脂肪率25%を超えると肥満と認定して治療対象としていますが、これは日本人は遺伝的に体脂肪率が高まると、生活習慣病などの問題が多発してしまい、海外ではごろごろいる体脂肪率30%とか40%なんてレベルに行く前に亡くなることが多いからなんだそうです。
そして、右側は、新型コロナウィルスに対して死者数がとても低いと話題になっている東アジア、東南アジア、大洋州の国々を示しました。少し欄が余ったので、左右の表に出てこない残りの人口1億人超の3か国(ナイジェリア、パキスタン、バングラデシュ)を追加しました。
死亡率の色分けは同程度の数字を私のほうでグループ化してみたものです。赤い方が死亡率が高く、水色がとても少ないことを示しています。
死者数ではアメリカがダントツですが、そもそもアメリカは人口が多いので、この表では、国民1万人あたりの死者数で比較してみることにしました。そうして視点を変えてみると、アメリカに比べて、イギリス、スペイン、イタリア、フランス、スウェーデンは死亡率が高いことがわかります。連日の死者数増の報道から比べると、ちょっと意外な印象ではないでしょうか。
それで、左右両方の表を見比べてみると、確かに右側の地域は、新型コロナウィルスでの死者数がとても少ないことが見て取れます。
よく抑えている、と話題になっているドイツは、実は亡くなっている方が実は結構多かったり、赤い色の濃い国々に先進国が多いことも見えてくるでしょう。
そこで、見比べてみると、肥満率が1桁%の国々は死者数がとても少ないことがわかりますよね。それに、国の豊かさ、医療体制の厚さとか、清潔さとか、そういったことは実は重要な因子ではなさそう、ということもわかります。左側の表で唯一、水色表記のインドですが、感染者数は多いんですけど、膨大な人口に比べると死者数はとても少なく、そして左側の表で、肥満率が1桁%の国はそのインドだけです。
……実際、この表ですが、死者数(と死者率)を隠して、肥満率だけで死者数の色分けをしてもけっこう近い結果になりそうです。勿論、肥満率の割に死者数が低かったり高かったりはしてますけど、その国の豊かさ、医療体制、清潔さ、民度などを知らなくても、肥満率1桁%の国は死者数が極端に低いのです。
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南半球の国々はこれから冬を迎えると言うこともあり、現在、爆発的に感染が広がっている状況で、ピークを迎えるのは当分先となることから、この表にあるより死者率が悪化する可能性はある点にご注意ください。
また、右側の表にある国でも、肥満率が高く、南半球にある国(オーストラリア、ニュージーランド)があり、このまま抑え込み続けられるか気になるところです。もっともオーストラリア、ニュージーランドのどちらも、他国と海で隔てられているので、感染者の入国を制御しやすい特徴は備えていると思います。日本もそうなんですけどね。
新型コロナウィルスですが、亡くなるほど悪化する、その因子が何か。それはもしかしたら、肥満率だけでその大半を説明できるのかもしれません。それと追加する要素があるとしたら、貧富の格差(貧しい人は三密状態に陥りやすく治療の手も届きにくい)、BCG接種率が絡むかどうか、でしょうか。
皆さんも表を眺めてみて、国を見て、あれ?なんで似たような国なのにこんなに違いがあるの?って思うことがいろいろ出てくると思います。地域が近くても置かれている状況が違う、国同士を比較するのは結構難しいことの理解の助けとなれば幸いです。
例えば、マレーシアは海に完全には囲まれておらず、肥満率もそれなりに高く、独裁政権でもない割に、死亡率が低く抑えられているのが興味深いです。隣接している国が全て死亡率の低い国であることも重要なポイントかもしれません。でも遺伝的には差はないと思うので、なぜ抑えられているか、調べてみるのもよさそうです。
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・補足1
東アジア系で被害が少ないのは、同じ地域ということもあり、元々、似たウィルスに感染することで免疫を持っており、その為、被害を軽減できているという説もあります。
ただ、その場合、一億超えのナイジェリア、パキスタン、バングラデシュやインドまで低い理由の説明としては根拠が薄いと思います。
バングラデシュ、インドは中国に近いですけど、パキスタンは中東寄りですし、ナイジェリアに至っては西アフリカの国ですからね。やはり要因としては低いのではないでしょうか?
右の表の中では、日本は突出して被害が大きいと書いている記事も時折見つけますが、それ程に見えるでしょうか? どれも低い、が正しい見方と思います。
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・補足2
2020年06月06日、ブラジルが死者累計数の公表を取り止める発表をしました。回復者、新規感染者数、死者数は公表するこということなので、完全に止める訳ではないんですけど、改悪って感じがして、気になるところです。経済活動を抑制しているために経済的に生きていけなくなる状況に陥る人が多く出てきていて、国民の貧しい階層からも経済活動を再開することを強く求められており、「どうせ人はいつか死ぬ」と発言し、経済活動再開を訴えているボルソナーロ大統領への支持も高まっているとのことです。今後を注視していきたいと思います。
肥満率が低いと、新型コロナウィルスに感染しても悪化しにくい、これは初期の頃から言われてきたことです。そして、肥満率はそうそう変わるものではないので、今回紹介した右側の国々(+インド)については、今後も死亡率は左側の国々ほど悪化しないだろうと考えられます。
日本が右側の表の側にあることの幸運に感謝したいと思います。