12.新型コロナウィルスが収まっても、もう世界的流行(パンデミック)前には戻らない
最終話です。
本日(2020年05月10日)の厚生労働省の新型コロナウィルス特設ページを見ると、前日との差は入院を必要とする人数(-52名)に対して、退院した人数(+166名)と入院治療を要する方が減り、退院された方も伸びました。退院された皆様おめでとうございます。
※以下の表は厚生労働省の新型コロナウィルス特設ページのものです。
西村経済再生大臣が13の特別警戒都道府県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県、北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府)以外の34県について、緊急事態宣言の解除も視野に入ってきている、とコメントしましたね。
行動を改めても結果がでるのは早くて一週間後というタイムラグがある関係上、どうしてもこの基準をクリアしたら解除、みたいなデジタル思考な判定は難しい案件です。
同じ数値でもそれまでの傾向が増えているのか、減っているのか、突発的なものなのか、など考慮すべき内容も多岐に渡るでしょうから。
マスコミは、基準があやふやだとか言ってますけど、正解のない案件への手探り対応なのに、なんで明快な基準があるとか思うのか謎です。まぁ、記事を書く際にあれこれ理由をつけて書くより、基準クリア、だから解除、のほうがシンプルで書きやすいからだとは思いますけど。
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さて、最終話、今回の話題は「新型コロナウィルスが収まっても、もう世界的流行前には戻らない」です。あらすじでも書いたように、今年(2020年)の年始の頃には、お店のほとんどが締まり、20:00にもなれば、深夜のように人通りが少なくなるような事態に陥るとは夢にも思っていませんでした。
いつまでも続く世界的流行はない、だから終われば元に戻れる。早く終わって欲しい。
そんな願いを口にする人も当初は見受けられました。
しかし、新型コロナウィルスの厄介過ぎる性質が明らかになってくるにつれて、そもそもワクチンができるとか、皆が免疫を獲得して、流行が自然に収まるかどうかも、わからなくなってきました。インフルエンザのように毎年、季節性の流行をするようになり、共存していくことになるのかもしれないからです。
ワクチン開発、新薬開発もそんなすぐにできるものではなく、1年後にできれば相当に幸運なことだといわれています。もし幸運に恵まれて開発ができたとしても、それを量産して各国に配り、治療に使われるようになるまでにはそこからさらに時間がかかります。
延期はないと明言された東京オリンピックは開催を2021年としていますが、そもそもそんな時期では、世界各国の感染爆発が収束しているかどうかすら怪しい状況です。残念ながら延期がないのなら中止でしょう。残念ですが仕方ありません。スペイン風邪の時と同様、変異をしたウィルスが再感染を起こして、第二波、第三波と世界的流行を引き起こす事態も考えられるからです。
というか、一発で収まる、というほうがまずありえないパターンでしょう。なにせこれだけ感染力が強いんですから。広く感染を繰り返せば変異する確率も高くなるものです。
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すぐ収束しないという暗い話になってしまいましたが、どんな状況でもそれに適応して、しぶとく生き延びてきたのが人類です。緊急事態宣言から一か月でも、人々はかなりの行動変容を行い、厳しい事態にも適用しつつあります。
そして、この新しい生活スタイルをワクチンができるか新薬ができるか、新型コロナウィルスが変容して毒性が弱まるか、人々が免疫を獲得して大流行が発生しなくなるか……。数年後までは、感染を予防するスタイルでの生活が続くことでしょう。
そして、それは人々の生活に不可逆の変化を齎します。
民主党がコンクリートから人へ、と称して予算凍結を行い、建設業の仕事止めてしまった件では、生活が成り立たないため多くの作業者が転職してしまい、仕事量が戻った後も現在に至るまで慢性的な人手不足に陥っているのは、皆さんご存じの通りです。
数年も経過してしまえば、定着した新しい生活スタイルをやめて元に戻す、そんな無駄は行う筈もありません。別に世界的流行を起こすのは、新型コロナウィルスだけではないのですから。より感染を防げる生活スタイルが定着すれば、それを続けていくのが自然です。
という訳で、不可逆に変化してしまい戻らないであろう生活スタイルについて列挙していくことにします。
1.テレワークの定着
→会社との移動時間という無駄をなくし、仕事が終わればすぐ近所で買い物をすることもできる、ということで、テレワークも慣れてしまえば快適に感じる人も増えてきたのではないでしょうか? 無駄に頭数を揃えて行う会議もなくなり、遠隔地の人同士でもコミュニケーションをとり、作業が滞らないよう工夫も行われています。出社しないとできない仕事は出社するとしても、出社しないで済むなら、テレワークにしてくれたほうが、オフィス面積を縮小できて、会社としても大助かりです。今はまだ過渡期ですが、通信環境は今後、どんどん快適になっていきますし、テレワークにも皆が慣れてくれば、この流れは続くことになると思います。
2.ハンコ文化の終焉
→二次元印影を押す、という文化はセキュリティ的にみても捏造しやすくてザルな仕組みでしたが、押印するためにわざわざ出勤するなど無駄だ、という認識が広がり、官公庁でもハンコを廃止していく流れが生まれてきています。どうしても押印が必要なら電子押印にすればいいんですからね。これが普及すれば、地権者の同意書を捏造していつのまにか売買されてしまうとか、記憶のない婚姻届けが行われいて身に覚えのない離婚者になっていた、などという酷い話も減っていくことでしょう。
3.FAX文化の終焉
→書類に記入してFAX送付して、という文化もいまだに根強く残っていますが、そういう紙を介する文化も見直しが行われようとしています。紙に出す流れがあると、出社しないといけませんが、それって感染リスクを無駄に高めるだけですから。
4.スポーツジムの衰退
→オープンな広場で皆で運動をする、とか形を変えることである程度は残ると思いますが、換気を強めて、器具を毎回消毒して、とか配慮するとしても、器具待ちの間はマスクして、などとはいかないでしょうし、シャワールームなど共同利用の設備を、すべて感染予防対策を徹底して、というのはやはり厳しいものがあるでしょう。健康のためにも運動するのはいいことなんですけど。残念です。
5.通勤混雑の緩和
→通勤時間帯をズラす工夫や、テレワークと組み合わせることで、混雑を回避しようという流れが続く結果、始業時間を合わせなくても仕事が成立するとなれば、混雑を回避する流れは元には戻らないでしょう。誰だってぎゅうぎゅう押し合いへし合いする満員電車なんて嫌ですからね。
6.持ち帰り文化の定着
→今は店内での飲食が困難なことから、持ち帰りサービスを始めた飲食店も多い訳ですが、持ち帰ってくれるなら、店内の混雑緩和にもなるので、ニーズが消えることもないでしょうし、持ち帰りサービスを行う飲食店は、そのまま継続していくところが増えていくことでしょう。
7.マスク着用の一般化
→布マスクが全世帯配布された後であれば、マスクをつけてないことを嫌悪する動きも加速していくでしょう。街中で歩くときまでつけている必要はないと思いますが、混雑エリアではマスクをつける、それが状態化する、と。ただ、梅雨時や夏場にマスクをつけるのはきついでしょうし、暑さ対策のマスクも開発が進んでいくことでしょう。冷感素材で作成されたマスクとかも出てますから。室内ではエアコンを動かせば、マスクをしててもキツイ、ということは避けられると思います。
8.観光施設の入場制限
→一定人数になったらそれ以上の入場を制限する、それによって施設内の人同士の距離を保てるようにする、この流れは導入を行いやすいので、定着していくと思います。博物館、美術館などなら、入場者数の制御はこれまでにもやってますからね。入山規制なんかもやろうと思えばできるでしょう。海水浴場とかは制御が難しそうです。
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これまで列挙した内容は、身近な生活レベルの話でしたが、これからは世界に目を向けてみましょう。
1.旅行業界の衰退
→これまでのように無防備に大量の人々が行き来するお気楽な時代は終わりを迎えることでしょう。検疫体制は強化されるでしょうし、日本はピークの山をなだらかにしてゆっくり終息させる方法を選択したので、「まだ感染者が出ている日本からの旅行者は受け入れない」と判断する国も続くことが予想されます。また、医療体制が脆弱で感染が広がり自然終息するのに任せるしかない多くの国との行き来も、日本は遮断せざるをえません。出入国のたびに二週間留め置かれる状況でも海外旅行に行きたいというのはよほどのもの好きか、仕事だから、などほかの理由がある筈です。
こうして数年、冬の時代が続いて、旅行業界が世界的流行前の状態を維持し続けられるか、といえばそれは無理というものです。規模は縮小し、検疫などもクリアしなくてはならないし、病気への対応もとるなど、関連費用が増えるため、旅行費用は以前より割高になっていくのは避けられません。
技術革新により様々な病気への検査がさほど手間なく行えるようになっていくでしょうし、出入国時に感染調査として血液検査とか、唾液検査とかが義務付けられるようになるかもしれません。自覚症状や発熱など、外からではわからない感染もあると判明したのですから、裕福な国であれば、そういった予防策をとるようになるのではないでしょうか。
2.経済グローバル化の終焉
→いざとなれば物流を止めざるを得ない、また相手国の匙加減で状況が左右されるようでは、安定した社会活動を営むことは困難になります。そのため、無邪気に世界中を繋いで、平時に特化した形で最適化していた経済活動スタイルは終わりを迎えることでしょう。より信用のおける国同士で繋がるようになる、つまりブロック化の促進です。
3.EUの終わり
→掲げた理念は高かったものの、経済力の差がありすぎる国の参加も認めたあたりできな臭くなり、経済が困窮してもEUに属している限り、通貨政策も行えなかったイタリアは、緊縮財政の一環として医療資源を削りまくり、結果として今回、医療崩壊が発生して多くの悲惨な死を傍観しているしかありませんでした。だいたい、意図せず入ってきている膨大な量の難民の方々をきちんと管理できているとも思えません。感染者数や死者数に難民も含まれているのか、というと疑問でしょう。ドイツ(人口8302万)は周辺諸国と比較すれば傷は浅いものの、2020年05月05日時点で、6821名も死者を出している状況ですからね。イギリスはよいタイミングで抜けたように思います。今後、各国は施策を行おうとするたびにEU憲章に縛られて動きにくい、という事態に陥るでしょう。人、モノ、金の移動を自由にする、というEU理念自体が、新型コロナウィルスと相性が最悪ですから。
形だけは残るかもしれませんが、強い結束により、アメリカ、中国と並ぶ経済圏を確立しようという流れは頓挫するでしょう。
4.国内格差の露呈
→アメリカやシンガポールのようにとても豊かなのに、感染爆発を起こした国には共通点があります。それは、とても豊かな層と、貧しい層に国内が極端に分かれているということです。貧しい層は、感染予防対策をとる余力もないし、住居も狭い、お金もないとないない尽くし。そのため、感染予防という観点からすると、常に国内に爆弾を抱えているようなものです。これまでは格差があっても、いずれ豊かになれる、と夢を見させることで不満を抑えることもできましたが、ウィルスは貧富の差など気にしません。日本も総中流社会の崩壊などと言われてはいますが、国民全体でみた場合の平均的な清潔さ、豊かさ、健康さでは他の追随を許しません。マスコミは常に他国の輝かしい面だけをつまみ食いして紹介して、だから日本は駄目、という論調をしてきましたが、今後はその手口も効果を失っていくことでしょう。
5.中国への警戒網構築
→今回、中国は露骨な手口で行動をやり過ぎました。粗悪なマスクを高値で売り付けたり、粗悪な検査キットを売り付けて返品されたり、困っている時に暴利を貪るような輩に親しみを持つ訳もありません。それに独裁体制特有の情報隠蔽もありますし、中国の出す統計情報自体、前々から当てにならないと言われてきましたが、それが引き起こした未曽有の大災害の記憶は人々から消えることはないでしょう。勿論、警戒網といっても、完全にスクラムを組んで竹のカーテンを敷くかといえば、それは微妙です。なにせ、中国の膨大な資金をあてにしている国も多いのも事実だからです。
ですが、こんなご時世に領海侵犯もばんばん行っているなど、困難な状況を使って有利に事を動かしていこう、という功利主義な動きが露骨過ぎます。もう誰も、豊かになれば中国も民主的な国になるなどと夢見ていません。天災の際には利害を超えて手を取り合うくらいの度量の広さを見せてれば、風向きもかなり変わっていたでしょうに。
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行動変容ではありませんが、死生観の変容についても触れておきます。
人生100年時代と言われて、実際、長生きする人も増えてきましたが、そんな考えも今回の新型コロナウィルスの世界的流行で、流れが変わりました。コメディアンの志村けんさんが70歳で亡くなり、はなまるマーケットでも活躍されていた岡江久美子さんも63歳で亡くなりました。今回の新型コロナウィルスでは持病のある方は重症化しやすく、また亡くなった人の9割が60歳以上という状況です。
お金持ちで高度な治療を受けても助からない、大統領のような立場の人でも感染してしまう、というのは、ショックを受けた人も多いのではないでしょうか。
ある意味、日本人が元々持っている死生観に近づいたとも言えます。天変地異に頻繁に襲われる日本では「死ねば皆、仏」という考え方もあるように、どれだけ善人であろうと、健康であろうと、金持ちであろうと、死ぬ時は死ぬ、それが当たり前でした。
あと百年もすれば、AI技術の進歩により、未知のウィルスに対してもわずかな期間でワクチンや新薬を作れるようになるでしょうけど、今はまだそんな時代は夢物語です。
長生きするのが当たり前、だから貯めこんでおこう、節制した生活をしよう、という大筋の流れは変わらないでしょうけど、どうせあの世には貯めこんだ金は持っていけません。生きていさえすればいいと、チューブ接続だらけにした老人の痛ましい姿も、見直す動きは出てくるでしょう。
気候変動によって、これまでより苛烈な天災に襲われる時代になる訳ですからね。どう気を付けても死ぬときは死ぬ。だからこそ、死から目を背けていた態度も改まっていくことでしょう。
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最後になりますが、今年は活動自粛の影響や、新型コロナウィルス対策もあって、インフルエンザで亡くなる人が大きく減少し、交通事故死の人も減っています。いずれ統計的データが出揃えば、快適さのためにある程度の死者を許容してきた実態も見えてくる筈です。快適さや経済性のためにどこまでの死者数は許容していくのか、それがいずれ議論されるようになると思います。
二度と元には戻りません。
でも、変わった世もそう悪くもないでしょう。それに昔はよかったと懐かしむことだって、生きてなくてはできません。皆さんも新常態の時代に適応していきましょう。
他国と比べれば思ったより被害も少なく、日本はうまく乗り切れたね、皆、頑張ったね。
そう言える日を楽しみにしています。以上でこの連載も終了です。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。よろしければ、評価や感想などよろしくお願いします。
<補足>
今後は、節目、節目でその後について情報を追加していこうと思います。
<追加情報>
今回の感染対策として、自衛隊の部隊の医官は充足率は定員の2割という寂しい状況、自衛隊病院のほうでも充足率8割とのことですので、戦時中の韓国と違い、三千人の医官を派遣して~などという対応はそもそも日本はできないんです。残念ですね。ちなみに戦闘部隊のほうも定員割れだらけで大変ピンチです。そのため、定年年齢を引き上げようという流れも起きています。泥縄的対応で本来は若者が入隊できるよう対策を行う必要があるんですが……。
<おまけ>
喉元過ぎれば熱さ忘れる、ということで、憲法見直し議論は下火になるかもしれません。それでも緊急事態宣言の無力さを見直す動きは出てくると思います。今回はなんとか乗り切れそうですけど、もっと凶悪なウィルスが出てきても、お願いするだけ、ではちと辛いでしょうから。
それと、話し合えば解決できるなどという理想論は、現実には適用できないことも今回、あちこち出歩く輩が続出したことで露呈しましたし、パチンコ中毒に陥っている輩は、店が開いていれば理性では行動を止められないことも露呈しました。パチンコ業界への法制度は見直される気がします。
ステイホーム期間中に書き上げようと頑張りましたが、木、金とお休みを取って連休を伸ばしている人もいるし、ギリギリセーフってとこでしょうか。今後、どう推移していくか予断を許さない状況ですが、過剰に恐れず、正しく恐れて、ストレスにならないよう順応していきたいものです。変に危機意識を煽る記事とかも落ち着いて、一度読んでも、本当にそうか?と考えてから読み返す癖はつけたいです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。