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4 葛藤してみました

 


 結局、午後を回っても、わたしは通報しなかった。


(それじゃダメでしょ)

 心の声が訴えかけてくる。身元不明の少年を囲ってしまっていいわけがない。

 とはいえ……(仮に)彼の話が本当なら、サイファーくんに近親者は居ない。少なくともこの、世界には。

 

 (アタマおかしくなったかな?)


 このまま行けばわたしは間違いなく未成年略取の容疑をかけられる。ヘンタイオンナと世間から見なされ裁かれることになる。

 不幸にもわたしの家にはその「証拠」が揃っている。本棚の文庫本からマンガ、PCの書きかけの小説、全部まずい。

 サイファーくんがその本棚に近寄って薄い本を抜き出した。

 「まずいって!」

 「え?」

 「いえなんでもないっす!」

 「申し訳ない、あなたが出掛けているあいだに本棚を少し漁ってしまった」

 「ドッまッ……!!」

 そのおそろしいひと言が胸の内に浸みると、わたしの羞恥係数の針が振り切れた。

 「姉君も所蔵していたよ。ご婦人はみな、こういうのがお好きだ」

 「え?そ・そう――?」

 「別に風変わりではないと思う……まあ俺の限られた経験では」

 「そうなんだ……」わたしは安堵のあまりふにゃふにゃに溶けかけた。おかげで「限られた経験」というじつに生々しい言葉を華麗にスルーしていた。

 「やはり裕福な街なんだな。書物をこんなにたくさん揃えられるのだから」

 わたしの自尊心はサイファーくんの尊すぎるお言葉に癒されていた。

 「しかしまだ文字が読めないのだ。あなたがたの風俗にも精通したい。協力してもらえないだろうか?」

 「喜んで~」


 また安請け合いしちゃった。


 わたしはとりあえずテレビの使い方を教えた。

 「このテレビというモノにいろいろ映し出されるからえ~……世界を把握する助けになるかも」

 「なるほど」

 サイファーくんはリモコンの使い方を覚えてザッピングしていた。

 お昼のニュースに眼が留まったようだ。

 わたしはその様子を見つつPCで彼の役に立ちそうなサイトを漁った。日本語を読めるようになるサイトってあるのか?いくつかテキストと動画サイトをピックアップした。

 そうしつつも心は疑念でいっぱいだった。


 彼と一緒に生活する気なのわたし?


 彼の寝床は?わたしはロフトを見上げた。ベッドはひとつしかない。敷き布団はひと組あった。替えの毛布もある。

 

 もう彼と夜を過ごす算段してるのかわたし?


 あ、もちろんアレは無しよ。当たり前でしょ野獣じゃあるまいし。

 ベッドを提供して、わたしは畳で寝るしかないか……。


 でもでも、わたしはニート。男の子ひとり養うなんて無理でしょ?


 ざっと計算してみる。毎月20万かかるとして……1年でジ・エンド。

 いますぐ就活しないと生活維持は絶対ムリ!


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