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33 新たなる戦い

 第二部始まりました!


 

           


 サイが落ち込むなんて初めてだったからわたしもまごついたけど、なんとかなだめて朝ご飯を食べさせ、学校に送り出した。


まあ、15歳に戻ってちょっと嬉しい、なんてとても彼に言えないわ。

 あんな美の女神とあと半日過ごしたらわたしLの世界に足を踏み入れてしまいそうだったし。


 同性でも見蕩れるほどってのはあるけど、女サイファーを見るたびにわたしは激しく動揺してたのだ。

 中身はサイファーくんなんだからって妥協しかけたし……

 (ホントざわつくわぁ~)

 女性の体のラインに目を惹かれるなんて滅多になかったのに……それに小さめの、まっすぐな鼻筋、薄めの幅広い官能的なくちびる、切れ長の眼……波打つ豊かな赤毛。

 なめらかな素肌の温もり、いい匂い。

 化粧してないのにあのレベルって神様はつくづく不公平だ。完璧なおっぱいだけで世の男たちはイチコロだろう。デスペランさんが惚れ込むのも無理ない。


 (とりあえず出勤せねば)

 手早く支度して家を出た。

 今日も曇天でいつ雨が降り出してもおかしくない。

 (いちおう元に戻ったとは言え、女物の着替えも用意しなきゃかな~……でも「彼女」にスウェットは似合わないよね……)

 そんなのは比較的些末な問題だ。

 もう一度キスしたらサイはまた女に戻るかもしれない。それは彼も認めた。

 だけど「実験」は後回しということになった。わたしとゴニョゴニョすると魔導律を補給する代わりに呪いが解ける、ということをもっと考えなくてはならない、と彼は言った。

 それにこのことはデスペランさんにもだれにも秘密にしたいと。

 電車の中でどんよりした外の景色を眺めながら、わたしはまた溜息を漏らした。

 ひと月あまり続いた平安が、終わった気がした。


 

 危惧とは裏腹に今日もなんなく仕事を終えて、わたしは丸広に寄って大きいサイズの女物を漁った。でも身長180強は未知の領域で、婦人服売り場にそんなサイズはあんまり売ってなかった。

 (やっぱりスウェットから始めて、サイに選んでもらうしかないみたい……大きいサイズの店って女物もあったっけ?)

 合うかどうか分からなかったけど下着も揃え、帰途についた。

 どのみちサイがまた女性に戻らなければ、本格的なサイズ合わせは無理っぽい……靴は28㎝くらいかなとか、悩みは尽きまじ。

 


 サイも帰宅していた。

 今日はわたしがお夕食作る番。ちょうど良かった、サイはまだ沈んだ表情で、窓際に座って遠くを眺めている。


 昨日はサイの世界に行こうと誘われたけれど、そのシナリオはチャラなのかな……そう思うとわたしも気が沈んだ。

 どこか異世界の田舎でふたりだけの生活、というのを本気で考えたのに、けっきょく儚いゆめ物語でしかないのよね。マンガみたいな妄想。


 「よし!鍋だ!」

 わたしが突然宣言したので、サイが「は?」と聞き返した。

 「今夜は鍋よ!寒いからちょうどいい」

 

 一人暮らしを始めたころ友達からプレゼントされた土鍋を台所の収納から取り出した。

 冷蔵庫を覗いてみたところ、ネギとちくわと鶏肉はあるけれど……

 「ちょっとお豆腐買ってくるね!」

 わたしは買い物袋を片手に出掛けた。

 

 

 (サイは濃い味のほうがいいわよね)

 わたしは鍋スープを物色しながら思った。キムチ鍋に決めた。となると、豚バラ肉と白菜は必須ね。締めはおうどんかおじやか……サイはうどんは食べたことないよな……


 月末近いのでクレカで精算しようとしたら、受け付けなかった。

 困惑のすえあきらめて現金で精算したけど、どうも釈然としない。

 わたしはクレジット限度いっぱいまで使うようなお買い物中毒ではない。サイの女物を買ったときは使えたカードがなぜ無効になってるのか。

 あとでカード会社のお客様相談センターに確認してみなくては。  


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