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酒と風邪薬を一緒に飲んではいけない

中編くらいの長さで終わります。

みなさまの暇つぶしになれば幸いです。

 


 さんざんゲームや漫画でみてきた、ある日突然『異世界転生』しちゃうっていう物語。


 それ系の話、昔から大好きで、ラノベでも好んで読んでいた。ファンタジーあふれる別世界に生まれ変わって、魔法が使えたり、モンスターを倒したりしてみたいな~……って中坊くらいの頃は本気で思ったりしていた。

 なんならちょっとイタイ絵の漫画を書いちゃったりしてた。謎の必殺技名とかを作っちゃったりして、かっこいい技のきめポーズとか真剣に考証していたあの頃が懐かしい。うん、黒歴史。



 その異世界に、本当に俺が行くことになるなんて、厨二を一時期こじらせた俺自身だって、想像もしていなかったよ。


 ほんと、そういうのは妄想するだけにしたかった。実際、自分の身に起きるのは、別に嬉しくないもんなんだな……。




 ***



 俺はどうやら風邪をこじらせて死んだらしい。



 狭いボロアパートのコタツで事切れている俺を天井から見下ろして、ああ~俺死んだのか~とどこか他人事のように思った。





 金曜の夜に、仕事帰りに喉がイテえなと気が付いて、近くのドラッグストアで風邪薬を買って帰った。ついでにコンビニによって、スト○ングゼロとつまみをいくつか買って、風邪薬を酒で流し込んだ。(あ、よい子は真似しちゃだめだよ!)


 見るでもないテレビのバラエティーを流しながら、焼き鳥ともつ煮をつまんでいると、だんだん体がだるくなってきて、薬とアルコールを一緒に飲んだのがやばかったかなって思って、とりあえず横になった。


 まあ一晩寝りゃ治るか、などと軽く考えていたら、一気に具合が悪くなって、息をするのもしんどくなってきた。ガンガン熱が上がっているのが自分でも分かる。


 やべえこれインフルとかじゃねえの?明日どっか病院やってたっけ?つうか財布に現金あったかな。

 寝返りをうつだけで頭がガンガンする。



 ちらっと時計を見ると、夜中の二時。明日病院行くにしても、絶対歩いてなんて無理だ……。

 喉がカラカラだけど……アカン、テーブルにはストゼロしかない。台所に行きたいが、起き上がることもできない。


 手元にあるスマホを見て誰かにヘルプを……と連絡先を開きかけて、迷った挙句やっぱり画面を閉じた。


 家族も兄弟もいない、ましてや恋人もいない俺に、こんな非常識な時間に『具合が悪いから助けて』と無茶を言える相手が思いつかなかった。



 同僚……友人……だめだ、さすがにこんな夜中に電話して来てくれなんて言えない。どうしようもなくなったら、明日の朝、誰かつかまりそうな人に電話してみよう。明日、休みで来てくれそうなやつ……。同期のアイツは最近子どもが生まれたし、風邪移すわけにいかないしダメだな……友人なら……ああでもアイツ土日は仕事だ。仕事休んできてくれとは言いにくいしなあ……。あとは…………。





 そう思って目を瞑ったところまでは覚えている。


 その後、気付けば俺自身を天井から見下ろしていたのだから、これはおそらく死んだのだろう。そしてこの俺は、幽霊かなにかといったところか。


 まさか自分の死に顔を眺めることになるとはなあ。



 こんな死に方かー……まだ二四歳で持病もない成人男性だし、まさか風邪とかでこんなにあっさり死ぬとは思わなかった。仕事が忙しく、ここ最近食事もまともにとれていなかったからな……色々悪い要因が重なったんだろうか

 。


 悔しくはあるけど、俺が死んで悲しむ家族も恋人もいないし、仕事も別に責任ある立場でもない。心残りが少ないのが救いか。


 あ、でもこの部屋が事故物件になるから大家さんには大打撃だ!どうしよう、いや、どうしようもないけど。わずかばかりの貯金があるから、それでなんとかしてくれるかな。



 それにしても俺はこのあとどうしたらいいかなー天使様のお迎えとかあんのかな?ここで待ってりゃいいのか?



 そう思ってぼんやり待っていたら、急に誰かに手を引かれて、白い光の中に引っ張り込まれた。







『○○君、死にたてのところ悪いけど、神様のお手伝いに行ってくれないかい?人手不足でねえ、困っているんだよ』


 光の向こうから俺の名を呼ぶ声が聞こえる。白く小さな手が俺の手をつかんでいて、声はそちらから聞こえてくる。


『もちろん手伝いが終わったあかつきには、神様からのスペシャルご褒美があるよ。神様にご褒美もらえるなんてフツーはあり得ないから、とんでもなくラッキーなことだよ~』


 神様の代理人かなにかなのかな?そういうのってもっと厳かで雰囲気ある話し方するもんじゃねえの?ずいぶん軽いな。


「神様っすか?まじすか?俺別に宗教にも入ってないし、信心深い人間でもなかったっスよ?そんなんでいいんすか?」


『うん、いいのいいの。君がいいの。じゃあお手伝い引き受けてくれる?』


「まあ、死んじまったからやることあるわけじゃないし、別にいいスけど……」


『わあ、じゃあ今すぐいってもらうねー。よかったよーちょうど君みたいなお人好しで、なおかつ人生諦めた系の人間が見つからなくて困っていたんだ。追って役目の詳細はお知らせするから、よろしくねー』


「んん?お人よし?諦めた系?ちょ、待ってやっぱ嫌な予感が……」


『変更は無理―じゃあ、いってらっしゃい~』




 おい、なんか騙された雰囲気がプンプンしてるけど?!やっぱ考え直す!詐欺の匂いがするから!


 ……と言う前に、光の中から押し出された。あ、落ちる。








 落ちるような、吸い込まれるような感覚がして、目が覚めて気が付いたら俺は赤子だった。




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