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花魁道中

作者: magudara

重く閉じていた緞帳が皆の動きで少し早まった鼓動に合わせたようにゆらりと揺れ、

そして私は眼を閉じて少し汗ばんだ額から降ろした手で小さく十字を切る。

自分勝手な、今日も誰一人として欠ける事の無い様にと言う願いの為に。

安全性とエンターテイメント性のギリギリの見極めは

いつまで経っても危うい綱渡りで。

それでも頭の中に浮かんだあの光景を皆に魅せたいと選んできたものは正解だったのか考えない日はない。

けれど立ち止まっている時間も無い。

私に出来るのは祈る事、ベストを尽くす事、責任を取る事。

呪文の様に繰り返し口の中で呟く。

他人の人生を預かる事になるなんて。夢見てた頃より夢の代償ははるかに重かった。

前にも後ろにも動けなくなる時がある程に。

ざわざわとした熱気と自分の名を呼ぶ声達。私を奮い立たせる事もあれば引き摺り下ろされかける事もある。

この声がいつかなくなった時でも私は此処に立ち続けるのだろうか?

そう思いながら私を私たらしめる一因の無機質なレーザーライトや機材だらけの天井を睨み付けた。

はじめはプロデューサーや会社の意向もあり最新式の設備や流行の音楽は望む望まざるに関わらず導入を余儀なくされていたが、自分である程度取捨選択が出来る様になっても無機質なオトやモノを入れるのは、自分の本音が透けて見えそうで怖いからかもしれない。

今更考えても無駄だ。

また思考のループに嵌まりそうになって、いつも通りにギリギリまでガシャガシャ目まぐるしく動いているそれらを見つめた後、ふぅ、と息を吐いてサイドのスタッフに合図を送る。

〜♪〜♪〜

イントロダクションと共に更に押し寄せてくる私を呼ぶ声はもはや祈りや叫びの様で、私の名なのに神に救いを求める様でいつからかどこか記号的に聞こえている。

その圧倒的な熱量の為に厚くて重い幕が客席から少し押される様に揺れながらせり上がっていく。

私は神じゃない。あなた達と同じ救いを求める仔羊であり、捧げられたテーブルの上で滑稽に振る舞う事しか出来ない。なんて、言ったって信じて貰えないんだろう。

幕が上がると同時に、足の下からも這い上がってきたぬるりとした緊張感をどうにかしようと何気無く視線を巡らせると、ステージには出演者達が扮装した提灯持ちを始め太鼓持ち、傘持ち達が今にも見えない誰かに清水の舞台を飛び降りさせられる様な顔をして居て、ふ、と口の端が緩みいくばくか肝が座り直した気がしたような後、

自分の纏った金糸銀糸が惜し気もなく散りばめられた、頼んだよりも遥かに上等で装飾が多く、逃れられない『重石』に目を落とす。

これでどれだけの年季がまた延びるのかなぞ知らないが、

少なくともまだ私は今日も、この足に憑いた重い枷のような高下駄で外八文字を魅せながら、あの眩むような光で何も先が見えない道を歩き続ける程には必要とされ、近いか遠いか分からないその時という未来に怯え続けていくんだろう。


だがしかし、全てはどうせ必然で在るならば、好きにした所でそれもまた必然なんでしょう?

ならばいっそ。

某アーティスト様の生き方に感銘を受け二次創作ではありますが初めて文章というものを書かせて頂きました。

拙い話を読んで下さりありがとうございました。

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