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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-90 アルボスティア 奪還戦5

◆前回のあらすじ


役場では魔物が現れたと騒ぎになり、アルボスティアの冒険者とベルが邂逅

そしてゴーシュは聖堂でリーナに尋問を始め……

 「……」

 

 リーナはゴーシュの問いに一向に答える気配はない。


 「どうした? 早く答えろ」


 「教官 何を企んでいるんですか?」

 

 それどころか、今問うているゴーシュに問い返してきた。

 

 どういうことだ?洗脳が全ての修道女にかかっていることは試練の前に確認済みだ。まさかその洗脳まで解かれているというのか?何年もかけて丹念に仕込んできた洗脳が……


 ゴーシュの予想通り、リーナはその心に仕込まれていた思考制限の洗脳を既にアイリの“聖癒治”によってとっくに解かれている。今リーナは神に従い嘘を吐かないという誓約よりも、目の前にいるこの男への疑念で頭がいっぱいだった。


 「教官 ここの地下には何があるんですか」

 

 そんなリーナの核心を突いた問いにゴーシュは面食らった。

 

 「……お前、分かるのか? この下に何があるのか」

 

 凄みながら睨みつけるゴーシュに全く怯むことなく、リーナはゴーシュの眼を真っ直ぐ見据える。

 

 バキィ!!!


 と、次の瞬間リーナの目前で光が瞬いた。

 ――ゴーシュがリーナの喉元に掴みかかろうと穿った手が、アイリの加護によって弾かれたことによる炸裂だ。

 

 宿主であるリーナの光に親しい魔力と融和した魔力障壁はゴーシュの腕を弾き、片やゴーシュの腕は焼け爛れたようにボロボロになっている。

 

 「貴様……」


 ゴーシュはリーナを侮っていた自身の認識をすぐに改めた。

 今目の前にいるこのガキは、見た目こそガキだが明確に潰すべき敵だ。


 だが困ったものだ。こうなってくると目の前のこの少女ははたしてどこまでやるのか……

 

 今使うことになるとは思っていなかったが、ちょうどいい機会だ。今のこいつにはもってこいの駒だろう。


 「望みどおり教えてやろう……この地下に何が居るのかな “爆炎(フレア・バースト)”!」


 そう言うとゴーシュは聖堂の正面にある神像を炸裂魔法で破壊してしまった。


………


 ――北方地区アルボスティア役場近辺


 役場から出てきたアルボスティアでも腕利きの冒険者たちを相手に渡り合うベルの姿をエドは傍から眺めていた。

 否、渡り合うなんて表現は生易しい。必死で食らいつく四人をベル一人で易々といなし続けている。しかもふんだんに魔法を使用する相手に対し、ベルは剣一本でそれを相手取っている。


 本来はエドもベルの側について戦うべき場面ではあると理解しているが、エドにとっては目の前で繰り広げられている何もかもが異様な光景すぎて動けずに居た。

 今ベルと戦っている四人はアルボスティアではトップクラスの実力を誇るCランク冒険者たちで、養成所の生徒であるエドもその名声は聞き及んでいた。だがその内魔導師を除いた三人は戦闘において魔法を行使するという話は聞いたことがない。というのに、全員が各々の武器を振るいながら魔法を巧みに操っている。

 そしてもう一つエドを戦慄させたのは、その四人の纏う邪悪な気配だ。ティラノの森で山ほど対峙した魔物たちと同じものが四人の身体に巣食っているような感覚。養成所でも教官の数人に感じたそれは、今は見間違いようも無い。

 

 (まさか、アルボスティアにこんなにも魔人が……!?)


 エドの心にははっきりと恐怖が滲み出ていた。

 姿かたちこそ人族そのものではあるが、今目の前にいる人族の形をした四人は自分たちの故郷を滅ぼしたのと同じ存在なのか。ただの風船のような魔物と違い、それが意志を持って動く相手に自分は太刀打ちできるのか?


 だがそうして立ち竦んでいるうちに戦局は動いた。


 「……面白くないですね」


 ベルが唐突に構えを解いたのだ。


 「……貴様、舐めているのか?」

 

 冒険者側のうち一人、槍を使う戦士が先より増して殺気を滲ませる。


 「舐められたくないなら、もっと本気でかかってきてくれませんか」


 そう無防備な佇まいで淡々と告げたベルに、四人は歯軋りしながら得物を持つ手を力ませる。 


 「私はアイリが望むので同様に平和を望んでいます が、それと私の本分とは別の話ですので 本当ならこんなじゃれ合いや一方的な蹂躙ではなく、命を削りあうような戦闘をしたいものなのですが……それとも危機感が足りないんでしょうか?」


 「何だときさ……!」


 と、言いかけた槍の戦士の首が飛んだ。


 「なっ……!」


 さらに落ちた戦士の首と胴体は一瞬で氷付けになり、血を流す間もなく固まってしまった。


 「()()で来てくださって結構ですよ?」


 そう事も無げに言うベルに残った三人の表情が変わった。

 あちらもあちらでベルを相手に様子を見ながら折衝する気で居たのだろう。だが仲間の一人がああも容易く殺された今、そんな探るような戦い方をしている暇ではない、と


 「……後悔しても知らんぞ、女」

 

 残った三人はそれぞれ禍々しい邪悪な魔力を膨れ上がらせるようにして発散し、それぞれの身体に纏わせていく。

 それまでははっきりと人族の姿をしていた三人はドス黒く腐ったような体色、頭頂部にそれぞれ不規則に生えた角、そして奈落のように漆黒な瞳を持つおぞましい姿に変貌した。

 

 もはや目の前にいるこれは、見紛うことなくハッキリと“魔人”と呼ぶのが相応しい何かだった。

次回分は明日更新予定です。

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