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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-79 アルボスティア 溝鼠駆除依頼

◆前回のあらすじ


一行との通信を終え、アイリたちは自由組合の依頼を見て回ることに。

 「薬草採取……ランクG 野丘猪(フィールド・ボア)討伐……Eランク?」

 

 「何というか……しょうもない依頼しかありませんね」


 アルボスティア冒険者自由組合(ギルド)の依頼掲示板を見に来てみたのだが、そこに掲載されている依頼の数々はどれも日和っていると言っていいほど面白みの無さそうな簡単なものばかりだった。

 

 「まぁ、この街がそれだけ平和な街ってことじゃない?」


 「いいことではありますけどね……見かけ上」


 ベルはその羅列を見て、顔にこそ出ていないがげんなりとした様子が声から滲み出ている。


 「あ、一個だけCランクの依頼があった」


 【依頼書 Cランク】

 アルボスティア下水道全域 溝鼠(ブラウン・ラット)駆除

 報酬 銀貨一枚 / 匹 ※要予防接種


 「溝鼠がCランク? しかも一匹あたり銀貨一枚は他と比べて破格ですね」


 ベルは今度はハッキリと怪訝な顔をして呟いた。

 

 「これ、結構古くから貼ってあるみたいだね ちょっと様子訊ねてみようか」


………


 「え、溝鼠の依頼ですか……」


 依頼について訊ねると、仲介窓口の受付嬢は露骨に嫌そうな顔をした。


 「お二方のお話は聞き及んでいます こちらを請けたいということであれば一応ご案内はしますが……」

 

 何やら斡旋したくなさげな雰囲気が隠しようもなく顔に表れている。


 「この依頼は長く掲載されているようですが、何か問題が?」

 

 ベルが訊ねる。


 「……この依頼は、溝鼠と侮って挑んだ腕利きの冒険者がそのまま帰ってこないということが後を絶たない依頼でして」

 

 まぁ確かに溝鼠は小型で脆く個々はさして人族の脅威になり得る者ではないが、警戒すべきはその数だ。通常鼠族は群れて過ごす上、狩りは集団で行う。隙を突かれひとたび齧られ始めれば人族でもあっという間に齧られ尽くすことはザラにある。また、仮に生還したとしても溝鼠は病質を持っている場合が多く、感染症や毒による臓器不全で亡くなる場合も多い。舐めてかかった冒険者がそのまま鼠たちの餌になった、という話は珍しい話ではないが


 「これは“溝鼠の駆除は手強い”という意味でCランクなんですか?」


 「そうですね 総数も、広大な下水施設のどこにどれだけいるか……そもそも一般人が通常立ち入れない下水施設を練り歩くこと自体危険を伴うワケですから、それも踏まえて、ということで」


 「下水道に溝鼠以外の何かが居るから危険、ということは?」

 

 続くベルの問いかけに、受付嬢は眉を顰める。


 「……いかんせん報告が上がってこないので何とも お二人は、地下に何か他の魔物が居ると考えますか?」


 考えるも何も、私とベルはこの街に足を踏み入れた時点で地下の状況をおおよそではあるが把握している。地下には彼女らが“黒色”と呼ぶ本来の用途での魔物、そしてそれらに取り付かれた魔族が蠢いている様を感知している。腕に覚えのある冒険者が帰らなかったのが本当に溝鼠の仕業なのかという点が疑問ではあるが、生還者がいないという受付嬢の話はどちらにしても腑に落ちる。

 だがこの目の前の受付嬢はこちらに隠し事をしたり嘘を吐いている様子は無い。本当に冒険者が溝鼠にやられたものだと思っているのだろう。であれば、流れ者の私たちが変な情報を吹き込んで怪しまれては後々面倒になるかもしれない。


 「いや、腕利きの冒険者が帰ってこないって聞くとね でも溝鼠なら納得ではあるかなぁ」


 「お二人も相当にお強い方だと聞いていますが、正直オススメしたくはありません」

 

 彼女の言葉は心から初対面の私たちに対する心配が滲み出ていた。

 きっと彼女がこれまで見送った冒険者の中にも帰ってこなかった者がいるのだろう。

 

 「いえ、気になって訊ねただけなので今回はパスします ……あぁそれと、もう一つだけ訊ねても?」

 

 ベルの答えに受付嬢は胸を撫で下ろした。


 「何でしょう?」

 

 「この依頼の依頼主は誰ですか?」

 

 受付嬢は何故そんなことを?と首を傾げながら、手元の依頼書目録に目を通すこともなく答えた。


 「アルボスティア役場ですよ」

次回分は明日更新予定です。

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