1-78 アルボスティア 冒険者自由組合3
◆前回のあらすじ
一行は各々卒業試験を経て気を揉んでいる。
アイリたちは冒険者証を取得し、ウルハの使用した遠隔通信魔法に便乗すると…
『てか、リーナはまだ戻ってないのか?』
カイルが問いかける。
ウルハは恐らく一行全員に通信を繋いでいようが、今のところリーナからは返事がない。
『返事ないですね ……まだ祈りの最中かなぁ』
リーナに仕込んだ私の魔力は特に不調は感知していない。生命活動に異常もない。通信も聞こえているはずだが、恐らくウルハの言うように祈りの最中か考え事でもしているのだろう。
『あ、すみません ちょっと考え事をしてて……』
『何だ聞いてるんじゃん~』
『ごめんごめん』
「無事だね まぁ、また何かあったら通信つないでね~」
『ありがとうございます~』
………
「遮られちゃったね」
「まぁ、養成所の中に居た魔人のことじゃないですか」
ウルハが何か言いかけたのを、カイルが不自然に遮った。
まぁ彼らからすればそれまで自分たちが信じていたものを違う視点で捉えた結果と、出会って間もない私たちのどちらを信じて動くべきか天秤にかけているのだろう。
「養成所に居た魔人程度であれば今の彼らの脅威にはなり得ません」
「だね 今は皆に悩ませておけばいい ……それより」
せっかく冒険者証を取得できたので、今後は冒険者として立ち振る舞うことができる。
まずは手始めにこの街の自由組合で掲載されている依頼がどのようなものか、冒険者の生業を探ってみることにしよう。
………
「何で遮ったんだ?」
エドはカイルに問いかける。
ウルハ恐らく教官に感じた違和感のことをアイリさんに告げようとした。確かに教官の雰囲気は異様だったが、同じ異様でもあの二人の方がよっぽど尋常じゃない。今のところは俺たちにも人族に対しても敵対的ではないが、あれほどの力があればいつでもどうとでもできると高を括っているのかもしれない。とはいえより知った仲の教官と出会って間もないアイリさん、もはやどちらも手放しで信用できる状況ではない。
どちらも読めないうちはあまりペラペラと情報を交わすのも危うい……気がする。
「……まぁ、考えてることは分かる」
「悪い……まだ自分でもちょっとよく分からない」
カイルは顔を上げこちらを見据える。
「俺は自分の目で見て、自分のすることを決めたい」
今まで教わってきたことも、この数日で学んだことも踏まえて。
「……とりあえず今は休もう」
「そうだな」
二人は装備を解くと、それぞれのベッドに身を投げた。
………
「どういうことか説明しろ」
自由組合のとある一室、防音結界が施されたそこに集ったアルボスティア自由組合の重役たちはこの街に起きた異変について話し合っていた。
街の至るところに仕込んであった精神攪乱魔法がほんの一時間ほどのうちに全て消失した。
設置型の術式が自然に消失するはずが無い。しかし何者かが術式を解体して回るにしても数が多い。だが現実に全ての精神攪乱魔法は跡形も無く消し去られていた。しかもその解体された形跡が一切残っておらず手段も不明だ。
「あのCランク二人組の仕業とは考えられないか」
この街に突如現れた只者ではない二人組。冒険者登録のステータス計測でも実戦試験でも並外れた力を見せた……いや、それも恐らく全力を出してはいなかった。
そんな二人が現れたタイミングと術式を解体されたタイミングが被る。だがいくら実力者とはいえ、二人だけであの短時間にそんな所業をやってのけるのか?
また、精神攪乱魔法が見抜かれた上綺麗さっぱり消し去られている一方で、この街全体に仕込まれた坩堝がそのまま手を付けられていないというのも疑問がある。奴らが精神攪乱魔法の術式だけを消し去ったとすれば、その目的は何だ?
「衛兵に確認したが、そのような二人組が通った記録はないし、誰も覚えていないとのことだ」
「使えぬ奴らめ……!」
一体二人はいつどうやってこの街に忍び込んだのか。冒険者登録を要請した意図は何なのか。
だが特例でCランク登録をしたことで、招集により行動を束縛できる。……素直に応じれば、の話だが。
次回分は週明け月曜0時頃更新予定です。




