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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-77 アルボスティア 冒険者養成所3

◆前回のあらすじ


アイリたちは無事冒険者証を取得できた様子

養成所の寮。修道院に戻った一行はそれぞれ……

 聖職者見習い リーナは修道院の聖堂で祈りを捧げている。


 (我ら臣民の主 偉大なるアストラの神 創世の大神(オリジン)よ 無事ここまでお導きいただいた慈悲に感謝を申し上げます)


 過酷と謳われ、当初は死をも覚悟した冒険者養成所の卒業試練から無事帰還したことを主に報告する。

 

 (リーナは無事帰ることができました この命、主より授かった力を苦難に喘ぐ人々のために使えるよう、一層心を清めて参ります)


 だが無事帰還できたとはいえ、リーナの心中は晴れやかではなかった。


 (主よ……命とは、一体何なのでしょうか?)

 

 それが悪だと教わるがままに手にかけようとしてきた者にも命が通っている。知性を持ち、社会を築く。それが人族相手に牙を剥くでもなく森に密かに暮らしている。

 そんな無害な命すらも奪うのが正義なのか、リーナはゴブリンとの邂逅以来ずっと考えていた。


 (私たちがここで学んできたことは、本当にあなた様の意思なのでしょうか 正しいことなのでしょうか)


 そして生き物の命を奪うという黒色――魔物には見かけても手を出すなと教わってきた。

 命を奪っておきながら、それ自体は命を持たない理不尽な存在……それを捨て置いて命を持つ無害な者を手にかける。それ正義なのか。だとすれば、誰が誰に向けた正義なのか。

 魔物は倒すことができないと教わってきた。それを言われるがまま信じてきた。でもアイリ様との旅でその固定観念は覆った。

 私たちは魔物に相対する術を持っている。アイリ様が教えてくれたから……いえ、アイリ様でなくとも、適切にそうと教える者が居れば私たち以外でも広くそれを習得できるのではないでしょうか。それをそうだと教わっていないだけで、実は私たちのような未熟な子どもでも真に必要とされる力を身につけることができる……


 何を信じればいいのか、どこを向いて進めばいいのか……


 (私は、私の目で見て感じたことを、自分で考えて生きて行きたいです……)


 例えそれが教えに背くことだとしても……


 リーナの息遣いだけが聖堂に静かに響いた。


………


 『カイル、エド』


 ふと、自室に戻ったカイルとエドの脳内にウルハの声が響いた。

 

 「? 何だこれ」

 

 『ごめんごめん、ちょっと試してみようと思って、遠隔通信魔法 本に載ってたんだ』


 “本”とはアイリがウルハに渡した魔法指南書のことだろう。


 「使って大丈夫なのか? それ」


 遠隔通話と聞くと一見便利そうな響きだが、養成所近辺では誰かに傍受されないだろうか。

 

 『えっと……これは何か大丈夫なんだけど……何て説明すればいいかな』


 『それは個々でリンクした魔力に思念を流す魔法だから誰かに盗み聞きされる心配はないよ』


 ふと、先ほど別れたアイリの声も聞こえた。

 

 『ウルハが私の魔力を回線に使ったから、ここでは私たちと皆にしか聞こえないんだ』

 

 『あはは……そういうことで』


 便利なもんだなぁ。


 『ほら、私今一人でちょっと……心細くてさ』


 「何だよ それなら先に言えよ」


 「……別に中庭とかで一緒に居てもいいぞ」


 「や、でもこの本ちょっと読み込んでおきたいし、部屋に籠もってることにする」

 

 どっちだよ。


 『こっちは無事冒険者証取れたよ 私もベルもCランクで』


 「「「C!??」」」


 これには思わず大声を上げてしまった。

 

 『実力的にはAランクとか言われたけど、依頼こなさないといけないらしいからね まぁ今はこれくらいでいいかなって』


 「……まぁ、二人なら今更何も驚くことはないな」


 「ないけど……釈然としないよなぁ……」

 

 『皆は報告無事済んだ?』


 『まぁ一応……特に疑われもしなかったです』

 

 教官は険しい顔で報告書を読んでいたが、まぁ教官の顔が険しいのはいつものことだ。偽物ではあるがホブゴブリンの腕を受け取ったとき、それを疑うような素振りも見せなかったし、戦果の方は疑われてないと思いたい。


 『何か変わったことがあったら言ってね』

 

 『あの……実は……』

次回分は明日更新予定です。

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