1-76 アルボスティア 冒険者自由組合2
◆前回のあらすじ
一行はそれぞれ養成所の寮と修道院に引き上げた様子
アイリたちは冒険者としての登録を受けることに
「新規登録でお待ちのお二方、こちらへどうぞ!」
先ほどの受付嬢に案内され、私とベルは別室へと案内された。
応接室風のそこには向かい合った席に受付嬢ともう一人、審査官らしき風貌の男がかけている。
こちらも書類にしっかりと目を通してくれたのだろう。向こうは二人ともしっかりと催眠魔法の術中にかかっている。
「アイリ様とベル様ですね まずはそれぞれのステータスを拝見させていただきます」
一行が耳にした途端顔を青ざめさせた“アイリ・トライソル”という名にも、どの程度の範囲かまでは知らないが人族の国で指名手配を受けたというベルの容貌を一切気に留める様子もなく、受付嬢はそれぞれ私とベルに掌大の水晶のような魔石を寄越す。ウルハが持っていた極小の魔石で作られた量産品のタグとは違い、冒険者登録用というだけあってしっかりとしたものだ。
だがこのサイズの魔石に組み込まれた術式に応じて魔力を流し込めば、私の方もベルの方も割れてしまうだろう。ここでは事前の申し合わせ通り、私とベルがそれぞれこの魔石に組み込まれた感知映写様式を読み取り、魔石を通して発動した風に見せかけて私たちが任意で書いた情報が表示されるように魔法を展開した。
余りに突拍子もないステータスでは不自然だろうから、あくまで人族という体で無理のない数値に書き換えようという話だったのだが
表示を見たギルドの二人は一瞬固まってしまった。催眠魔法で縛りをかけていなければ驚き声を上げていただろう動揺を感じ取る。縛りのせいで感情が発散できず思考がショートしたのだろう。
「えー……お二人の実力であれば本来ならAランクに相当するのですが……規定により初回登録は基本Dランクまででして……」
「冒険者のランクによって待遇に違いが?」
さすがベル。肝要な事務手続きはベルに丸投げしておけばいつも全ていいように収めてくれる。ここは任せておこう。
「まず、受けられる依頼のランクですね 上に行けば行くほど幅は広がりますが、一定以上のランクの方は自身の意思と関わらず招集を受けて出動する任務もあります」
「招集は強制で?」
「招集されるような事態は大事ですのでそうそうは起こりませんが基本的には強制で……あとはタイミングでしょうかね~」
受付嬢がテキパキと答える。
「あと、ランクによっては提携商店や施設での優待 立ち入り禁止区域への立ち入り あと、厳密にはランクとは別ですが、一定の功績を残した者には国から勲章が贈られたり……」
「なるほどね~」
ランクが高ければ便利ではあるが、面倒事も孕んでいるようだ。
「昇級には昇級試験と規定の依頼をこなすといった要件がありますので、実力があるからとすぐに上がれるわけではありません」
「養成所を出たときは何ランクから?」
「Gランクからですね」
「……」
目測を見誤ったかもしれない。
「では、Dランクから」
「はい、では登録に当たって筆記と実戦の試験を受けていただきます」
………
「では、こちらが冒険者証になります これから頑張ってくださいね」
「ありがとう」
受付でピカピカの冒険者証を受け取った。ランクは“C”と記載されている。
筆記試験の方は余裕だった。……というより、決まった試験問題のようだったので、蟲を遣わせて答案を覗き見てそのまま書いた。満点だろう。まぁ必要な知識や教養はともかく、それを気取られずやってのけたという点では評価されてもいいだろう。
実戦試験の方は……悲惨だった。
実戦試験場の床面に据え置かれた術式を数人がかりで起動し何とか召喚した小型獣種と、曰く養成所でも教えているという教官職との模擬戦だったが、Dランクでは苦戦するという実戦を赤子の手を捻るようにパスしてしまった私たちの下に我ぞ我ぞと集った試験官たちを悉く退けてみせたためか、規定ではDランクからと言っていた癖に早速力を貸してほしいと異例のCランクでの新規登録が認められた。
受付嬢が言っていた招集任務はCランクからだという。気をつけるつもりだったがやりすぎてしまったようだ……というか、試験の相手が余りに弱かった。まぁ高ランクほど色々なことに融通が利くらしいので、ここはひとまず甘んじて受けるとしよう。
次回分は明日更新予定です。




