1-75 アルボスティア 冒険者養成所2
◆前回のあらすじ
アイリとベルは自由組合に冒険者登録をしに
カイルたち一行は養成所に帰還し……
「……さすが首席パーティーだな よく生きて帰った しかも、ホブゴブリンを仕留めるとは」
一行の帰還報告――といってもほとんどの旅程はでっちあげだが――に目を通したアルボスティア冒険者養成所筆頭教官ゴーシュは、一行が持ち帰ったホブゴブリンの腕(もちろん偽物)や野丘猪の牙を受け取ると疑うこともなくそれを読み流し、一行を賞賛した。
(奇襲……ね 今のコイツらにホブゴブリンを仕留めるような実力がないのは明白だが……)
だが冒険の中で苦難に揉まれる内に一皮二皮向ける輩はいくらでもいる。コイツらは弱いなりにもここでは優秀な方だ。それが実地で花開いたと、そう思いゴーシュは納得することにした。
「あの……教官」
と、パーティーの一員であるウルハが気まずそうに問いかける。
「他の皆は……」
養成所に戻った一行は、その人気の無さに不安を覚えた。
「まだ戻っていない お前たちが一番乗りだ」
「……」
養成所の卒業試練はその難度を各パーティーの成績に拠って設定される。つまりカイルたち一行が今回の卒業試練で最も難関の遠征課題を課せられたことになる。難関とは遠いということに限らないが、今回は最も遠く最も高度な討伐課題を併せ課せられていた。それが一番乗りで帰還し、他の面々は課題の難度に関わらず帰還していない。
だが、卒業試練とは毎回そういうものだ。全ての卒業見込み生のうち、無事帰還するのは毎年半数を若干上回る程度と言われている。
今年は特に彼の魔王が復活すると言い伝えられている年であり、全体的に課された試練が例年より重かったということなので、同志たちはまだ闘っているところなのかもしれない。覚悟はしていたし頭で理解はしているが
「……いずれ戻るさ お前たちは優秀だった 俺も今日は色々と忙しいのでな、まぁ今は寮に戻って休め」
「……はい」
………
「じゃあ、私、修道院の方にも寄って行くね」
「おう」
「しっかり休めよ」
一応は全員が養成所所属という扱いだが、養成所本舎で学んでいた一行と修道院で聖職者として別課程の修行を積んでいたリーナとは一旦ここで別れることになる。
「一人で大丈夫?」
「……うん 大丈夫」
今、私たちの中にはアイリ様がくれたお守りがある。とても高貴で高潔な力が私たちを包んでいる。
出会って間もないお二人だけど、それでも今まで過ごしてきた修道院に戻ってきたことより、今は比べようも無く安心できる。
「皆、しっかり休んでね」
「あぁ」
………
「エド、ウルハ……気付いたか?」
寮への連絡通路を歩きながらカイルが小声で呟く。
「……ゴーシュ教官のこと?」
その神妙な声色に、ウルハも声を潜めながら答える。
カイルは首肯せず、だが振り向いて二人を見据えた目が答えを物語っていた。
「どう思う?」
曖昧な問いではあるが、今の二人にはその意図が伝わっていた。
「普通じゃない……よね」
「……」
ウルハの指摘にエドも頷く。
アイリさんは「養成所では感知を積極的に展開しないように」と言ったが、こちらから触れに行かなくても滲み出るソレは分かる。……人族のものとは思えない邪悪なオーラ。或いは、それを見越して俺たちの変化を教官に気取られないように歯止めに言ったのか。
「もう何が何だか分かんねぇよ……」
カイルは顔を伏せる。
「……何が正しいのか、考えないとな」
普段あまり意見を口にしないエドも珍しく主張する。
「……大丈夫だと思うけど、二人も気をつけてね」
「ウルハもな……あの本、見つかるなよ」
「うん じゃあ」
男女それぞれの寮舎に分かれ、二人と一人は歩き出した。
次回分は明日更新予定です。




