1-64 ティラノの森 掃討戦4
更新がのんびりで申し訳ありません。今後も主人公に倣いマイペースに頑張ります。
◆前回のあらすじ
ベルと私の分身で一人一人に指導をつけることに
「じゃ、私はリーナの指導ね」
「お願いします……!」
ベルがカイルを、私の分身がそれぞれエドとウルハに指導についた。と言っても三人はそれぞれが既に調整の域に至っているので、問題は光の攻撃手段を模索中のリーナだ。
リーナ以外の三人に分身による指導が加わり前線での魔物の対処がより効率的になったので、この隙にリーナが新たな魔法を見出す訓練をしよう。
「光の形、分かるようになってきた?」
「まだ範囲を絞るくらいですが……」
だがこの短時間で光の指向性を自身で操れるようになったのは大した進歩だ。
「そしたら後は普通の魔法と一緒 指向性詠句を加える 光は発散するから、途中で消えちゃわないように押し込めるように」
リーナに分かりやすいように、空に魔法陣を描く。
魔法陣に描かれた様式は“光の魔力”を“圧縮”し、“発生した熱エネルギーを自然魔力で補填し増幅”させ“弾丸状、直線軌道の形状・指向性を添加”するものだ。
「“光弾”」
魔力が注がれると魔法陣上に拳大ほどの光の弾丸が形成され、それが迫る魔物に向かって直線の軌道をとって飛んでいく。
「とりあえず、あの魔法陣そのまま使って光を形成する感覚掴んでみて」
「はい!」
不必要に綺麗に様式を組み立てた魔法陣だが、そのまま用いればそこに適量の魔力を流し込めば意思とは関係なくその通りに魔法が発動する。あとは魔法陣の意向に引っ張られる感覚で学びながら用いる魔力の量と作用の大きさを自分好みにアレンジしていく。リーナは空に残した魔法陣の残渣に自身の魔力を流し込み、同じように光弾の魔法を発動していった。
「段々光量を少なく小さく押し込めていくようにね」
「……わかりました!」
………
それからさらに三十分ほど
通常一行程度の人族の少年少女では何十分にも渡り戦闘を続ける体力など到底ないだろうが、一行は学んで間もない身体魔力の操作や攻撃に用いる魔力の省エネ化に巧みに磨きをかけ、ひっきりなしに押し寄せる魔物の大群を見事に対処してみせた。……まぁ実際にはベルと私の分身が一行より気持ち多いくらい屠ったのだが、頑張る皆へのボーナスみたいなものだ。
一行は皆実戦を経てめきめきとその技を磨き、新たな気付きを得たようだ。特にリーナはまだ拙くはあるが、散弾での光弾魔法まで習得することができた。
「これで雑魚の掃討は完了かな」
森のあちらこちらに犇いていた魔物はものの見事にこちらにおびき寄せられ、こちらの思うようにばさばさと屠られた。
相変わらず奴らが森に留まっている理由は分からず終いだったが、根こそぎ滅ぼしてしまえば問題はないだろう。
「疲れた~……」
一行はその場に座り込んで息を整えているが
「さ、今日は頑張ったので、そろそろ野営の準備に入りましょうか」
ベルも一行の頑張りを評価してか――自分が動いてスッキリしたからかもしれないが――珍しく休息を提案する。
「野営の拠点に求められる要素は何だと思いますか?」
冒険者にとっては必須も必須なことだ。まぁ実践経験はないかもしれないが、座学で教わるくらいはしているだろう。ベルの問いに一行は順に答えていく。
「安全な場所かどうか」
まぁ、大前提としてそうであればいい。
本来は人里などで宿が取れれば一番いいのかもしれないが、冒険に不測の事態は付き物だ。甘いことは言っていられない。
「急な危険に対処できるかどうか」
やむを得ず危険が迫り得るロケーションではそこも大事だ。
「……でしょうか?」
まぁ肝心要のところは押さえられては居るが
「それじゃ一番大事なところが抜けてるよ」
「一番大事なこと……」
一行は難しい顔をして何やら考え込んでしまうが、ややこしいことではない。単純明白で野営において本来最も優先されるべきことだ。
「ぐっすり気持ちよく寝られる寝床だよ」
「……」
余程緊張感に欠けた答えに聞こえたのか、一行綺麗に揃ってその場でズッコケてしまった。
次回分は明日更新予定です。




