1-63 ティラノの森 掃討戦3
◆前回のあらすじ
魔物の掃討を中断し、一旦訓練の主旨を再確認してから再開することに
いっぱいいっぱいな中とはいえ百にも及ぶ魔物を屠っただけあり、一行の魔物への対処は既に自信に裏付けられた堂々とした立ち回りができるようになってきている。
ここまで来ればあとは必要最低限の力で的確に相手を屠るための力の使い方を模索する余裕もあるはずだ。
掃討を再開して十分ほど、一行は黙々と各々の守備範囲の魔物を屠っている。
最初に学んだ一行の対魔物の固定手段に拘らず、色々な技や魔法で魔物への効果や相手の動きを探っているようだ。
特に前衛二人に余裕が出てきたこともあり、リーナの方は光の魔法をより攻撃用途に特化すべく色々模索し始めていた。
「“閃光”!」
つい先ほどまでは閃光と言っても無作為に光を照射するだけの簡素なものだったが、今は指向性を自分の意思で変化させ照射範囲を狭めることで、凝縮したより少ない光量で対魔物には覿面な小エネ魔法を実現しつつある。
まだ一般的な攻撃用途に敵う熱量を生み出すほどの圧縮はできていないが、それでも魔物を掃討するのには十分すぎる進歩だ。
一方で
「カイル! 斬ったら次 振るった剣の勢いも活かして次に繋げる!」
と、ベルがカイルと同じ方面に立ち、実演を交えながら説教している。
彼女も今でこそ丁寧口調が板に付いたが、昔は個性豊かなパーティーの中でも初手を奪い合うような血気盛んな斬り込み要員であっただけに、ただ後ろで腕を組んで号を飛ばすのは性分に合わなかったのだろう。
だが彼女は剣闘士としての腕は当然一流だ。魔物を屠るには不必要が過ぎるほど華麗な剣捌きをわざわざ披露し、カイルの手本としてはそれが上手く機能しているようだ。
カイルの方も言われたことに文句を垂れる暇すら惜しいと思っているのか、ベルの動きを観察しつつ即座に実践してはその感触を確かめている。
いい傾向だ……けどせっかくの機会だしカイルにだけ個別に指導をつけるのはもったいないな。
「“霊体分身”」
自分の魔力と森の自然魔力を混ぜ込み、二人分の魔力でできた分身を作る。構造はちょうど魔物と同じようなものだが、その一つ一つには私の精神と知識が宿り、当然魔力さえ足りれば同じように魔法も行使することができる。
「「じゃ、今から私も個別に指導するね」」
分身の二人がエドとウルハ、それぞれの戦線に加担する。
「もぉ~……! アイリ様ホント何でもありじゃないですか!」
言いながら、呆れも多分にあるのだろう。ウルハは戦闘中なのに笑けてしまっている。
エドに加担する分身は主に纏殻を用いた徒手格闘だ。普段はあまりやらないが、その昔戦争のど真ん中に身を置いていた頃の劇的な日々の中であらゆる戦闘手段に精通してしまったため、自慢ではないが徒手(と言っていいのかは分からないが)格闘も人一倍得意な自負はある。
「さぁ頑張るよ~~!」
「……」
エドも口にこそ出さないが、ため息でも尽きたそうな目をこちらに向ける。
ウルハに加担する分身はウルハと並んで魔法による中遠距離支援だ。まぁ魔法については……今更改めて語ることもあるまい。
「“雷牙蛇”」
雷の魔力で意思を持ち動く蛇を形作り、それを前衛二人の守備範囲外に向けて放つ。
雷牙蛇はその牙の先端に雷の刺激を集中させ、目にも留まらぬ速さで魔物に次々と咬みついてはその身体を爆散させていく。
「今のも“擬似召喚”ですか!?」
ウルハは自分の持分を対処しつつこちらの魔法もしっかりと観察している。
「これは“媒介召喚”っていって厳密には擬似召喚とはちょっと違うんだけど……まぁ似たようなものではあるね」
「それ、私にも……“散氷冷弾”!……使えますか!?」
ウルハが放った氷の弾が魔物を次々と捉える。ただの氷弾ではなく、表面に魔力を纏わせた氷弾は魔物に触れたその部分を瞬時に凍らせ、弾の衝撃で大きくその体躯を穿つ。早くも散弾指向の魔法の属性魔力纏殻まで習得できている。優秀なことだ。
「ウルハなら五十年くらい頑張ればできると思うよ!」
「おばあちゃんになっちゃいますよぉ……」
次回分は明日更新予定です。




