1-61 ティラノの森 掃討戦1
◆前回のあらすじ
一行は各々魔物の倒し方を身につけたので、掃討戦に移行
「じゃあ今からこの森にいる魔物をこっちにおびき寄せるから、皆奮って駆逐するように」
「この森にいる魔物って……どれくらいいるんだ?」
エドが問いかける。
「まぁ数百は下らないだろうね」
聞くとそれまで意気揚々としていた一行が固まる。
「本来なら敵がどれくらい、どの位置からどう来るか、自分たちで索敵できるのがいいんだけどね 一度際限なく押し寄せる魔物と実戦してみて、力の使い方とかペースとかを学んでみればいいと思う」
「そんな何百も相手にしてたら保つかどうか……」
一番ウキウキしていたウルハが一転弱音を吐く。
「まぁ力が底をつきそうだったり魔物に触られそうになったらこっちも助け舟は出すから かと言ってもちろん、それに甘えないようにね」
実戦演習でサポートがあるからこそのロケーションではあるが、演習であっても緊張感が無ければ土壇場で使える力は身につかない。一行にとっては当然容易な掃討ではないが、その苦難の中で一皮二皮剥けてほしいものだ。
と、それ以上気が廃る前にさっさと魔力を森中に薄く発散していき、触れた魔物が順にこちらに向かって移動し始める。
「さ、各々感知展開して、配置について」
言い終わらないうちに一行は構えをとる。切り替えの早さは特に磨かれたかもなぁ……
カイルは剣に魔力を込め、エドは手足に土の鎧を纏う。
ウルハは杖に魔力を集中させ、リーナはそんな各々と迫り来る魔物を広く捉えようとしている。
さぁ実戦だ。
最初の数匹が周囲から不規則に迫り来る。
「“雷光矢”!」
まず折衝にウルハが魔法を放つ。直線の軌道を飛ぶ鋭い雷光の矢は、手前の魔物を貫くとそのまま森の奥へと飛んで行き、直線上に居た他の魔物も続々貫くと最後はむき出した岩石に当たって弾けた。
さすが、特性まで理解して実戦で上手く使えている。彼女は養成所では優秀な方だったとのことだが、最初の印象で侮っていただけで確かに飲み込みが早く素質を感じる。
次いでカイル、エドそれぞれの目前に迫った魔物を二人は難なく屠った。
そしてもう一方から迫ってきていた魔物たちに
「“閃光”!」
リーナが強力な発光魔法を発動する。
本来の目的にそぐわないようなあらぬ方向を照らす魔法だが、迫っていた魔物だけでなく光の照射が届いた魔物たちはその身体を霧散させていった。
「そうそう、あとはそれをウルハと同じように小さく絞って無駄なく的確に……“散熱線弾”」
リーナの閃光に釣られ続々と押し寄せていた魔物目掛け指先ほどに凝縮された熱線の弾が数十発飛んでいくと、それぞれ的確に魔物を射抜いて屠っていった。
「こんな感じね」
「頑張ります……!」
………
掃討を開始してから十数分
既に一行が屠った魔物の数は百にも登ろうかというところだが、それでもまだ森の魔物の総数から見れば半分にも満たない数だ。
一方で一行はというと……
「ハァ……ハァ……」
「はっ……魔力がっ……うまく練れない……!」
慣れない環境で感知を展開しながらの終わりの見えない掃討戦の中で既にバテ始めていた。
まだ自身の命を削るほどに消耗しているわけではないが、到底森の魔物全てと相対するのに十分な魔力残量ではない。
「……ここまでかな “秘匿結界”」
魔物は自然でない魔力の揺らぎ、つまり命が発する魔力に引き寄せられこちらにやってくる。であれば、奴らが感知する魔力を遮断してしまえばいい。本来アレらは結界の魔力にも反応するが、私の秘匿結界はあのような雑魚に気取られず奴らから身を隠すことができる。
私を中心に一行を囲むように結界を展開し、一行の魔力を結界の内側で遮断する。
これで魔物が近寄ってこようとこちらを気取ることはないし、結界に触れても中まで入ってくるようなことはなく、気付きもしない内に明後日の方向へと認知を歪める。
「第一ピリオドはもうちょっと保つと思ったんだけど、まだまだだね~」
そんな忠告を一行は肩で息をしながら聞いている。
魔物を倒しようもないと思っていた彼らが百にも及ぶ魔物を土壇場で生き延びながら倒し続けたという点は評価に値するが、まぁこんなロケーションに追いやった張本人が言うのも何だが、このまま助けなく続けていれば一行は遅かれ早かれ魔物に襲われるか自身の魔力を食い潰してかで死んでいただろう。
必死になりすぎてこの訓練で学んで欲しかった本質まで手が回らなかったようなので、まぁどちらにしてもこの辺りで一旦潮時だろう。
次回分は週明け月曜日0時頃更新予定です。




