1-56 ティラノの森 掃討訓練2
◆前回のあらすじ
一行に魔物討伐の実戦演習をさせるべく、魔物の倒し方を実演してみた
「まずはリーナから行こうか」
「は はい!」
戸惑いながらもリーナは一歩前に出る。
「あの……私はどうやって魔物を倒せばいいんでしょうか?」
リーナは他の三人と違って攻撃手段を持たない。そんな中で脅威と思い込んでいた魔物に対峙するのは心許なく感じて当然だろう。だが、だからこそベルがあのようなあっさりとした実演をして見せたのだ。
「魔物に“癒治”を使えばいいよ」
「“癒治”!?」
治癒魔法の代名詞と言っても過言ではない“癒治”をこれから倒そうという相手に使おうという辻褄の合わない提案に一行は驚き声を上げるが
「……なるほど」
当のリーナはそんな私の提案に納得しているようだった。
そんなリーナの様子に一行はそれ以上疑問の声を上げることはない。
リーナがその対処法に納得したようなので、先ほどと同じように比較的付近の魔物に魔力で触れ、こちらにおびき寄せる。
数十秒ほど経つと、不気味な体躯をした魔物が不規則な足並みでこちらめがけて駆けてくる。
対してリーナは
「……“癒治”」
駆け寄る魔物に向けて極小に絞った癒治を発動した。
淡く金色の魔力が対称的に漆黒の魔物の体躯を包むと、魔物の身体は風船が弾けるようにあっさりと霧散した。
「……なるほど」
リーナはその結果を噛み締めているようだが
「リーナすごぉい!!」
「すげぇなお前! “黒色”倒したぞ!」
後ろの一行は大盛り上がりだ。
「見ての通り、あの形態の魔物は“光の魔力”をぶつければ極小であってもほぼ例外なく倒せます それが攻撃魔法であろうがなかろうが関係なく」
「……つまりあれは“癒治”ですら逆効果に作用するような邪悪な存在ってことか」
エドは顛末を観てそう分析したようだ。
「そうだね だから“癒治”が正しく作用する他の生き物とはそこでも区別してほしいな」
世界に生ける者たち全てに平等に降り注ぐ光さえ受け付けない。奴らはそのような存在なのだ。
「あの……」
と、ふとリーナが声を上げる。
「“光属性の攻撃魔法”があると仰っていましたよね?」
そういえば彼ら一行は光の魔力を用いた攻撃魔法が存在することすら知らなかったようだ。
まぁ敢えて習得が困難と言われる光の魔法を実戦用に鍛える必要はないが、ひとたび習得すれば強力な武器となり防御となり、何より対魔物での戦闘では大いに役に立つ。
「ベルが自分の腕を焼き払った魔法も光の魔法だよ」
「あれが……」
人族の軟弱な身体であれば容易に跡形もなく消してしまう。使いようによっては危険を伴う代物だが
「私も治癒や補助魔法だけではなく、攻撃魔法を使えるようになりたいです」
リーナの芯の通った思いが言葉に乗って伝わってくる。
「せっかくだからね、この後練習しようか」
「ありがとうございます!」
まだ扱いに慣れていない光の攻撃魔法を下手に使用すれば、また森にいる魔物が際限なく押し寄せて面倒なことになりかねない。一旦、一行各々に魔物を倒す術を気付かせてから実戦の中で教え込むとしよう。
「次、は……」
「はい!」
「俺が」
「俺!」
リーナ以外の三人は我先にと志願する。
「んん……じゃあカイル、エド、ウルハの順で」
「はぁい……」
僅差ではあるが一番最初に声を上げたウルハは後回しされたことで不満そうにしている。
対魔物の戦闘では現状彼女の攻撃が最も派手になり得る。それで魔物に気取られてしまっては近接戦闘二人組の訓練が落ち着いて行えない。先に二人が博打ではなく真っ当に魔物を倒せるようになってもらいたい。
「カイルは魔法特性はお持ちじゃないんですか?」
二番手に決まり肩を慣らしているカイルにベルは問いかける。
「俺は魔法は使えないけど……」
「……まぁそれは置いておいて、あなた自身どの属性と親しいか、自分では分かりませんか?」
「……わからねぇ」
「……」
「……そんな目で見んなよ!」
ベルの渋い顔にカイルは反発する。まぁどちらの言い分も理解できなくもない。
「森に入る前に“交霊儀”でもやっておけば良かったかなぁ……」
次回分は明日更新予定です。
◆告知
昨日よりR-18百合SFバトルアクション小説“Garden ~蟲壺の乙女たち~”の
更新が開始しています。ダークな物語ですがお読み頂ければ幸いです。




