表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
47/116

1-39 自己治癒2

 「まずは切り傷程度の自己治癒から練習していきましょう」

 

 ベルは一行の反応を待たず背に刺した鞘からミスリルソードを抜く。

 

 「せっかくです ただ斬られるのも癪でしょうから、稽古がてら組み手をしましょうか」

 

 「組み手って……ベル様と私たちとですか?」

 

 「もちろん 手加減は得意なので安心してください」

 

 ベル、手加減得意かなぁ……と言っても、一行が相手であればそこに齟齬があっても最早組み手に影響するような次元ではないだろう。

 ベルは一行に向け剣を構える。エドが真っ先に、続いてカイル、ウルハとリーナの順にそれぞれ構えを取る。

 

 「そちらの好きなタイミングで始めて構いませんよ あなたたちのセオリー通りにどうぞ」

 

 言いながらベルは一行を見渡し、その視線をウルハに落ち着ける。一行のようなタイプのパーティーが対人単体との戦闘を行う場合は、奇襲に自信がある場合を除き、まず後衛の魔導師が斥候に出るのが一般的だ。ベルはそれを警戒し、また一行もそのような切欠を想定しているはずだ。

 さて、一行が“対人戦闘”でどのような動きに出るのか見物だ。

 

 「“地鳴(クエイク)”!」

 

 ウルハがベルの足元に半径三メートルほどの魔法陣を展開すると、ベルを中心に周辺の地面が唸るように揺れ始める。

 斥候の手段として地鳴は悪くない。しかしベルは手加減と言った手前素直に揺られているが、発動から展開への流れが少し遅い。あれでは魔法の効果を知っている相手には回避される可能性も多分にある。

 

 「揺らしが甘い! 確実に足止めしたいなら出し惜しまずもっと思い切り揺らしなさい!」

 

 「すみません……!!」

 

 ベルの怒号を受け攻撃を仕掛けているウルハが謝るという変な構図になる。

 次いで揺られているベル目掛けてカイルが駆ける。地鳴の効果が薄れてきたところを見計らい上手く距離を詰め斬りかかるが、ベルはカイルの連撃を容易くいなす。

 

 「筋も踏み込みも甘い! 一撃一撃をもっと確実に狙って斬りに来なさい!」

 

 「……チッ!」

 

 「“電光(ライトニング)”!」


 ウルハがベル目掛けて落雷の魔法を放つとカイルは一旦間合いを取り、入れ替わるようにエドが間合いを詰めウルハの魔法に被せて畳み掛けるようとする。だがベルはカイルをいなした剣をそのまま天に掲げ、避雷針代わりに雷を受けるとそのまま地面に振り抜いて雷すらもいなしてしまった。

 ウルハはベルの技巧に驚愕しているが、エドの方はペースを乱さずベルに迫り、膝上辺りを狙って渾身の蹴りを振るう。しかしベルはエドの蹴りを受けてもぴくりとも動じず、威力を打ち抜けなかったエドの方がバランスを崩してしまった。

 

 「狙いは悪くありませんが相手に通用する技を見定めて適切に使いなさい!」

 

 カイルがエドのサポートに距離を詰めるが、ベルはエドが体勢を整えようとする一瞬の内にエドに、次いで近付いたカイルにも攻勢に出る隙を与えず目にも留まらぬ速さで斬撃を浴びせた。

 

 「ぐっ……!」

 

 「いって!!」

 

 「ちょっとした切り傷じゃないんですか!?」

 

 ウルハは二人が斬られた様子を見て思わず声を上げる。それはそうだ。ベルの剣は一見それぞれエドとカイルの身体をしっかりと通過する間合いで振られたのだから、見てくれでは切り傷をつけた程度の斬撃には見えないだろう。

 だが出会い頭のカイルの首同様二人の身体は切断されていないどころか、二人の服も装備も一切斬れてはいない。

 

 「……!? どうなってんだ!?」

 

 そして斬られた二人も自分たちの状態に混乱している。

 

 今回は治癒魔法を纏わせて斬ったのではない。理屈は単純で、精密な魔力操作によって斬撃の対象を二人の表皮浅くに絞っているのだ。通常の鍛錬では習得できない、魔力操作に熟練した者のみが扱えるスキルだ。修練と開発の時点では想定していなかったが、稽古の場では切り傷しかつけないようにわざわざ表面を撫でるよりも、服を裂くこともなく遠慮せず剣を振るえるといった便利な使い方も出来る。

 

 そんなスキルがあるなどとは露も知らず、一行が驚愕しているうちにベルは後衛二人に間合いを詰め、

 

 スパァン!!!


 「いたたたた……!」

 

 「いっ……!」

 

 またも一瞬で二人を容赦なく斬りつけた。

 

 「……カイルだけですね 遠慮しなかったのは」

 

 ベルは剣の節々に微かに滴る血を清浄魔法で払いながら一行を見回す。

 

 「人族(ニンゲン)の形をしているからと遠慮することはありませんよ」

 

 四人はそれぞれ苦い顔をしながらベルの方を見やる。

 服や装備に傷はないが、四人の身体はそれぞれいたるところに切り傷がある。リーナについては装束が白いので所々血が滲んで赤く痛々しくなっている。

 

 「さぁ、治しましょうか」

 

 ベルはまず一番傷の多いカイルに駆け寄る。

 

 「自己治癒を模して治していくので、自分の身体を巡る魔力に集中してください」

 

 カイルは渋い顔をするが、素直にベルに身を委ね目を閉じる。

 ベルはカイルの肩甲骨辺りに両手を添えその身体に自身の魔力を流し込むと、全身所々についた切り傷を一つ一つ丁寧に塞いでいった。

次回分は明日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ