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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-37 冒険者6

 「大丈夫かリーナ!?」

 

 自分も大怪我を負っていながらカイルは跪くリーナに駆け寄る。

 

 「聖職者として学んでいるなら当然知っているでしょうが、身に余る聖属性魔法を行使すれば“聖痕”を負い……生きている間中消えぬ苦痛と癒えぬ傷痕に苦しむことになります そうならないためにも、あなたはもう少し魔法の行使について学んでください」

 

 「ありがとうございます……」

 

 ベルの教鞭に心当たりがあるのか、リーナ固唾を呑んで頭を下げる。

 

 「“癒治(ヒール)”」

 

 身を寄せ合う四人を包むように治癒魔法を行使する。

 カイルとエドの傷がみるみるうちに治っていき、ベルの癒治によって魔力を補填したリーナにさらなる魔力を流し込む。


 「“範囲癒治(エリアヒール)”ですか!?」

 

 「? ただの“癒治(ヒール)”だよ」

 

 「“癒治(ヒール)”って単一対象魔法だと思ってました……」

 

 ウルハが感嘆の声を漏らす。

 確かに癒治は治癒魔法系統でも初歩の初歩の魔法なので単一対象魔法と思われがちだ。実際単一対象のちょっとした傷を治すのに用いることが多いが、初級の魔法だけあって燃費が良いので、練度を高めておけば消耗以上の恩恵を受けられる。

 

 「……教えなきゃいけないことが多いなぁ」

 

 「先が思いやられますね」

 

 ともあれ、少し痛い目を見てもらった全員の怪我も無事治癒できたので、ここらで一息つこう。


………

 

 「冒険っていうのは、いつどんな危険が迫ってくるか分からない いつ死ぬかわからない そういう危険なものだよ」

 

 言うと一行は各々苦い顔で俯く。

 

 「危険を回避できるように、対処できるように、磨くべき力がいっぱいある それがままならない状態で冒険に出るのは命を粗末にしているのと同じだと思う ……だから、皆が今の実力で狩りに出されて、しかもそれが養成所の卒業試験なんて言うのがどうも腑に落ちないよ」

 

 一行は最初の狼三匹は上手く対処できたが、次いでの四匹との戦闘では思い切り痛手を食らってしまった。野犬ならともかく本物の狼は群れとかち合った場合は当然七匹では済まない数の対処に当たることになる。今のままでは狼に限らず、小型の獣種の群れを相手取るのは危険だ。

 

 「各々が各々を守りあわなきゃいけないし、当然個々でも自分の身を守らなきゃいけない」

 

 パーティーとはそうあるべく他人同士が手を取り合うものだ。

 

 「あなたたち、それぞれ自己治癒の術も持っていないんじゃないですか?」

 

 ベルが問うと一行は頷く。

 

 「自己治癒も何も、治癒魔法は聖職者以外使えないだろ」

 

 カイルはベルの言に反論するが

 

 「治癒魔法ではなく自己治癒です ……その違いも分からないなんて、あなたたち本当にものを知りませんね」

 

 ベルは盛大にため息をつく。

 カイルはむっと眉間に皺を寄せるが、自分の井の中の蛙ぶりをここ数日で自覚し始めているのか、それ以上つっかかることはない。

 

 「誰がそのような眉唾なことを教えたのか知りませんが、そもそも治癒魔法が聖職者にしか使えないというのも見当違いです 私もアイリも聖職者ではありませんが、一通りの治癒魔法は修めています」

 

 「確かに、蘇生魔法とかも普通に使ってたな……」

 

 この数日で自分たちの常識を覆しうる事象を見続けてきたからか、一行はもはやベルの言に懐疑的ではない。

 

 「それに治癒魔法以外にも自分の身体を治癒、修復、或いは他者や環境から魔力を吸収して復調する術はいくらでもあります 各々が自分に合った術を磨き、他人に負担をかけず可能な限り自分自身で調子を保つ 基本中の基本です」

 

 「自分の身を守ることが、パーティーを守ることにもなるからね」

 

 パーティー、特に各々が役割を分担し戦闘に当たることでリスクを分散する形態では、どこかしらの役割が欠落することで一気にパーティー全体が瓦解するきっかけになり得る。個々とパーティーはそれぞれが一心同体なのだ。

 

 「自己治癒はどうすれば習得できるんだ?」

 

 エドが我先にと立ち上がる。

 

 「あなたたちの身体を成しているのは魔素です そしてその魔素でできた肉体を、魔素同士の摩擦や接触、そして心の揺らぎによって生じた魔力が巡り生命活動を維持しています ……それは魔力感知を習得したので分かりますね?」

 

 一行はそれぞれ頷く。

 

 「そして身体の魔力操作によって、自身の内に巡る魔力を掌握した 自己治癒ではその魔力を消費する方針を変えるだけです」

 

 ベルは自身の袖を捲ると露出した腕を魔力を纏わせた自らの爪でなぞる。するとなぞった痕から腕が裂け、皮一枚ほどを残してプラプラと垂れ下がった。

 

 「傷や病気というのは、正常に連結している魔素がこのように何らかの要因によって歪められ、或いは分断されたような状態です 知っての通り魔素単体が壊れることはありませんから、これは魔素自体が損傷したのではなく、繋がりが阻害されている状態です」

 

 「…………」

 

 ベルがせっかく詳細に説明しているが、分かりやすく見せるためとは言えなかなかにグロテスクな実演のせいで一行はその異様な光景の方に見入ってしまっていた。

次回分は明日更新予定です。

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