表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
43/116

1-35 冒険者4

 三匹の土狼を倒した一行は息を付く。

 

 「……え、トドメは刺さないの?」

 

 一匹は土に還り、二匹はまだ狼の造形を保っているとはいえもはや戦闘はままならない状態だ。

 だが獣種は野生に生きる種だけあって精神力はあらゆる種族の中でも頭抜けて強い。最後の最後に一矢報いて敵に致命傷を負わす癖者もいる。そして恨みを長く覚える。その命の炎は最後まで決して甘く見ず、対峙したならば基本的には殺るか殺られるかだ。

 

 「小型の狼といっても、顎が残っていれば人の骨肉くらい軽々噛み砕いてみせるよ 最後の最後まで気を抜かずに次からトドメはきちんと刺すように」

 

 とはいえ一行は見事三匹の狼の攻勢を凌いで見せたので、ひとまず最初の目標は達成だ。

 通わせていた魔力を霧散させると、横たわっていた二匹の狼も土に還った。

 

 「あと、相手ができるだけ苦しまずに逝けるようにね」

 

 「……はい」

 

 しかし、正直もう少し苦戦すると踏んでいたが四人は思いがけずスマートに狼に対処して見せた。森など複雑な環境での狩りは素人そのものだが、平地で狼三匹程度であれば彼らなりのセオリーを組み立てて適切に狩りに当たれるのだろう。

 だが実地の狩りや戦闘は必ずしも教科書通りに進むことはない。不測の事態が往々にして起こり得る状況で命のやり取りをするのだ。冒険者として歩んでいくのであれば個々の強さや連携もそうだが、例え自分の知り得ない相手や環境であってもあらゆる状況に臨機応変に対処できる能力が必要だ。

 

 「狼は臭いや音に敏感です 動きは鋭敏、爪や牙は一撃で人族に致命傷を負わせられる でも攻撃は直線的で動きを注視すればかわすのは容易い 狼が何を見て、何を狙ってどう動くのか、よく観察することです」

 

 ベルの教鞭を一行は聞き入っている。

 

 「あなたたち戦闘に気を取られて放念していたようですが、戦闘においても魔力感知を疎かにしてはいけませんよ 特に獣種を相手取る場合、魔力感知が大いに役立ちます」

 

 獣種の多くは一般的な人族よりも魔力操作による運動補助が堪能だ。人族のように考えすぎる種族と違い、より本能に従順に動く獣種は彼ら自身の命の仕組みについて理屈は分かっていないとしてもそのあり方により無意識で親しい存在なのだ。そのため魔力感知で相手の動向を探ることで戦闘を有利に進めることができる。

 

 「じゃ、魔力感知に集中しながらもう一回やってみようか “霊獣(アニマ・エル・)召還(エンボディメント)”」

 

 次は地面に四つの魔法陣が展開する。

 

 「さっきより増えてませんか!?」

 

 「よく考えたら四対三って不公平だし、フェアにね」

 

 「そんな無茶な……!」

 

 四人は先ほどと同じ陣形を取り、またも狼が円形で囲む構図になる。

 が、今回は先ほどと違い四匹だ。三匹で四人組――前衛と後衛それぞれ二人ずつ――を囲むのとは当然狙い方が変わる。

 

 「ギャウ!!」

 

 内一匹が四人に吠えながら身をいからせると、前衛二人はそちらに意識を向ける。しかし間を置かず吠えた狼の隣のもう一匹が一気に距離を縮める。

 向かい合ったカイルは切先で斥候し間合いを詰めさせない。

 だがカイルが一匹と折衝した瞬間、丁度エドの対角側の狼が後衛の二人めがけて飛び掛った。

 

 エドが加勢に向かうが狼の方が速い。ウルハは瞬時にリーナの前に出るも、急激に詰まった距離に状況判断が追いつかず、魔法を放てずに居る。せめてもの抵抗にとウルハは杖を振るうが、大振りで甘い攻撃を狼は容易くかわし、ウルハの二の腕に咬みついた。

 

 「きゃああああ!!!」

 

 「ウルハ!」

 

 すぐにエドが咬みつく狼の腹を蹴り上げ、狼は呻きながらウルハから口を離す。

 だがその後ろで最初に吠えた狼がエドの背後から、一瞬後ろに気を取られたカイルに残りの二匹がそれぞれ迫る。

 

 「“閃光(フラッシュ)”!」

 

 すぐさまリーナが目くらましの魔法を発動するが、距離がない上に目くらましの対象は丁度エドとカイルの陰になっている。

 

 エドは飛び掛かる狼をうまくいなし、後頭部めがけて両腕を思い切り振り下ろした。とっさのことで威力を上手く一点に集中できてはいなかったが、さすがにあの打撃では脳が揺れただろう。エドに飛び掛った狼はフラフラと足をもたつかせながら距離をとる。

 

 「ウルハ!」

 

 エドの呼びかけに、咬撃を受け血の流れる腕を押さえて居たウルハはすぐに杖を執る。

 

 「“発火炎(フレアレイズ)”」

 

 ウルハに咬みついた狼の足元に魔方陣が展開し、そこから炎が噴出して狼の身を焼いていく。

 

 ウルハとエドがそれぞれ狼に対処する一方、カイルは二匹の狼と対峙していた。

 小型の狼が相手なら斬撃を当てることさえできれば戦闘不能に陥らせることは容易いが、カイルが振るうのは長剣だ。間合いを誤れば一気に劣勢になり得る。

 カイルも狼もそれを分かっている。狼の方も、斬撃を受ければただでは済まないであろうことを感じ、カイルの間合いを封殺するよう二匹で巧みに詰め寄る。

 

 一匹がカイルの構えた表の側から飛び掛り、一瞬遅れてもう一匹が他方からカイルに飛び掛った。

次回分は明日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ