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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-34 冒険者3

 「ベル様の装束は何か特殊な加護や付与が成されているのですか? 普通のメイド装束のように見えるのですが……」

 

 リーナが不意にベルに問いかける。


 「付与はありますがこれは常駐型ではないので、魔力を通わせていない今はただのメイド服ですよ」


 「じゃあベル様は硬いんですか?」

 

 次いでウルハも問いかける。

 斬りかかった鉄の剣の方が粉々に砕ける場面を見てしまえば何か思うところはあるだろう。だが、ただ硬いだけであれば鉄の剣で斬りかかったとてああも粉々に砕けることはない。

 

 「触ってみますか?」

 

 ベルはその極端に露出の少ない装束の袖を捲くり、白くか細い腕を晒す。

 

 「……普通の腕だ」

 

 通常精霊種は精霊自身の意思で触れようとするか、魔力感知に富んだ者でなければその肉体に触れることは叶わない。だがベルは上級精霊(フェアリー・コマンド)でありながら肉体の組成は人族の性質をそのまま受け継いでいるので、普通の状態であれば触れた感じは人族のそれと何ら変わりない。

 

 「あなたたちも魔力操作が堪能になればああいうこともできるようになりますよ」

 

 「どれくらい頑張ればできるようになるんですかね~……」

 

 「五〇年くらいでしょう」

 

 「……」

 

 期待の籠もった眼差しをしていただけに、ウルハは大きく肩を落とした。

 

 ………

 

 「皆、狩りは今回が初めてだったの?」

 

 「いえ、一応演習で何度か獣種を」

 

 「といっても小型種なんですけど……」

 

 まぁそうだろう。ゴブリンを追い詰めようとしていた一行の動向はとても狩りに慣れたパーティーのそれではなかった。パーティーでの狩りは連携、地形、対象の習性など様々な要素で追い込みをかける。逆に人族などが森で森を住処とする者を狩るのは感知や連携、経験に富んだ者でなければ至難と言える。

 一方、一行のゴブリン狩りはただゴブリンの軌跡を追うだけ、各々が各々に遠慮しながら攻撃をしかけるだけというお粗末なものだった。

 

 「まぁ狩りは経験に優る学びはないからね 道中ただ歩くのもなんだし、練習しようか」

 

 「練習ですか?」

 

 「そう ……まぁ異種族をみだりに狩るのは推奨しないけど、狩ることを学ぶのは大事だよ」

 

 狩りを知るということは、狩人の視点を知るということだ。それを知っていることで、万が一自分を狩ろうとする者が現れたときに逃げ延び自分の身を守る術となる。

 

 「“霊獣(アニマ・エル・)召還(エンボディメント)”」

 

 地面に三つの魔法陣が展開し、その中心から土が盛り上がると狼の姿を形成する。

 

 「さ、狩ってね」

 

 「急ですね!?」

 

 土が形作る三匹の狼は四人を円形に囲み一定の距離から間合いを窺っている。

 霊獣召還は何らかの媒介に魔力を通わし獣種の人形を作り出す擬似召還(ルアー)の一種だ。術者の素質により完成度や霊獣の性質は変わるが、今具現化した狼はどれも組成が土で行動指向を私が掌握しているというだけで一般的な小型の野狼と性質から習性から何ら相違ない。

 

 一行は一番中心にリーナ、その一歩前にウルハ、そして二人を庇う位置にカイルとエドが立ち、狼を警戒している。

 一応四人パーティー前衛後衛の一般的な陣形は取れてはいるか……


 「“火球(ファイアボール)”!」

 

 ウルハが火球を放つ。

 出会い頭のアドバイスを気にしてか最初に見たものより造形は小さくなっているが、それでもまだ練りは弱く形の大きさが目立つ。

 だがこの場合、斥候としては悪くない使い方だ。見掛け倒しの魔法で狼たちの目くらましと間合いの攪乱を狙える。が、視界を遮られるのはこちらも同じなので、肝心なのは次の出方だ。

 

 火球を放たれた狼の一匹は前方に大きく駆け回避に走る。間合いを攪乱された瞬時の戸惑いで慌てた対角の二匹の内一匹が四人に迫るが、後ろ側を警戒していたエドが巧く間合いに入り、大振りの回し蹴りで狼の頚部を捉えた。

 さすがにエドは冷静だ。あの一瞬の展開で急所に、しかもいいタイミングで蹴りを入れた。威力は目を見張るほどではないが、あのサイズの狼があの打撃を食らえば戦闘不能にはできるだろう。

 エドが蹴り飛ばした狼は鈍い呻き声を上げながら飛ばされ、そのまま横たわった。しかし狼の造形を残したままなので、どうやら致命的なダメージとはならなかったようだ。

 

 「リーナ!」

 

 「“閃光(フラッシュ)”!」

 

 カイルはリーナを呼ぶと、火球を避けている内に仲間を倒され一瞬動きが止まった狼の方に姿勢を低く傾けながら駆け、その後ろからリーナが発光の魔法で狼の方を照らして視界を眩ます。カイルはさらにリーナのアシストと同時に動線を曲げ、狼の後方から首元を狙って斬りかかる。

 悪くない筋だ。だが逸ったのだろう。駆ける足音が露骨な上、動線の歪曲を経たカイルの一撃は狼の一瞬の硬直を捉える速さではなかった。辛うじて持ち直した狼はカイルの剣を紙一重で避け、カイルの上体目掛けて飛び掛かる。

 

 「っんなろ…!!」

 

 が、今度はカイルがすんでのところで上体を逸らし狼の咬撃を避ける。

 狼の方も決着を急いだのか大胆な攻撃に出たため、避けられたその一瞬で大きな隙が生じた。そこにカイルが再度剣を振るい、カイルの剣は狼の脇腹を捉える。

 

 「ギャウン!!」

 

 狼は力なく平伏すが、こちらもやはり致命傷ではなかったのか狼はまだ造形を保っている。

 

 カイルが二匹目を倒す傍ら、ウルハは氷の散弾魔法で三匹目の狼の動きを攪乱し、その隙に距離を詰めたエドの攻勢、次いで加勢に入ったカイルの追撃によって今度は狼の造形を残すことなく最後の一匹を仕留めてみせた。

 

次回分は明日更新予定です。

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