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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-32 冒険者1

 「おはようございます!」

 

 翌朝、たっぷり一晩眠って元気な一行を出迎えたのは妙に愛想のいい昨日の受付嬢だった。

 昨晩の事務的で淡白なやり取りとは対称的な、とても朗らかで親しみのある雰囲気だ。表情も明らかに違う。

 結局この寄宿舎の職員は今日の時点では彼女一人らしい。彼女は途中仮眠をとったようだが一晩寄宿舎を空けることはなく、その間彼女以外が寄宿舎に出入りすることはなかった。だが一晩空けて待ち受けていた受付嬢は同一人物ではあるがまるで別人のようだった。

 

 「よくお休みになられましたか?」

 

 「あ……はい」

 

 「それはよかったです! アルボスティアまで、道中お気をつけて!」

 

 「……」


………

 

 「何だったんだろう」

 

 「何か感じが違ったよな」

 

 リスリアを発って間もなく、最初の話題はやはり受付嬢の変化についてだ。明らかに出会い頭と態度が違った受付嬢に一行も戸惑った様子だ。

 それはそうだ。特にきっかけもなくいきなり愛想が良くなっていれば気味悪く思っても仕方がない。

 

 「やはりあの暗い魔力の影響でしょうか?」


 リーナが問う。

 

 「まぁあの中にいつも居たら表情が枯れることもあるかもしれないね~」

 

 彼女があの寄宿舎に常駐している職員なら、絶えず黒い魔力に中てられていただろう。危険な濃度ではなかったのでほんの数日程度であれば多少精神的に不安定になるくらいだろうが、どれぐらいの期間かはわからないがあの中に毎日居たのであれば恐らく慢性的な中毒により感情の収拾がつかずに枯れたような雰囲気になっていたのだろう。

 出会い頭の彼女も不気味なほど無愛想でもなかったが、先ほどの晴れやかな彼女を見るとその変わり様には不気味さを感じざるを得ない。

 

 「養成所(アカデミー)にもあれが……」

 

 エドは顔をしかめる。

 冒険者向けという寄宿舎にあのような細工をされていたのであれば、冒険者が関係する施設……現代の冒険者の拠点であるという“自由組合(ギルド)”や冒険者の卵たちの集う“養成所(アカデミー)”にも同様の細工が施されている可能性は十分にある。養成所(アカデミー)の所属という一行が普段どの程度養成所に居るのかは分からないが、同じような細工がなされているのであれば彼らもその影響を受けていた可能性がある。

 

 「養成所(アカデミー)の中と外で、自分で何か違うと感じることはある?」

 

 「……今までは何も疑問に思わなかったけど、思えば養成所(アカデミー)に居た時は何だか余裕がなかったかもしれません」

  

 「焦ってたような……何かに追われるような……」


 エドとウルハが答える。

 

 「君たちは何で冒険者になろうと思ったの?」

 

 まだ幼い四人が冒険者を志し、旅に出てゴブリンを狩ろうとするなど尋常の沙汰ではない。彼らはそれを当然だと思っていた。……今も思っているだろう。彼らは人族のためにと、そうすることに何ら悪意を持たず彼らの正義で武器を取るのだろう。

 養成所の様子は見ていない。実際に細工がされているかどうかもまだ確信まではしようもないが、それを抜きにしてもまだ幼い子どもたちの純真な心をあらぬ方に歪めようとしている。人族以外なら構わないとみだりに命を手にかけるような者に育てようとしている。

 そのような教育が施された子どもたちの心を乱すような細工がなされていればどうなるか。人族以外の種族を恨み、忌み嫌い、正義と憎悪の板ばさみになりながらそれでも良かれと命を狩る。その行き着く先は?人族は人族以外の種族を滅ぼして、その後どうなる?そのとき正義と憎悪に駆られ力を振るっていた冒険者たちはどうなる?次は持て余したその力を“誰に奮う”?

 最悪のケースが想定できてしまう。

 

 「故郷の仇討ちですか」

 

 押し黙る一行にベルが問うが、カイル以外は顔を伏せる。

 

 「仇討ちで何か悪いのか」

 

 言い返したカイルは何か思うところがあるのか視線はベルの方には向かず余所を捉えているが

 

 「仇討ちは立派な戦う理由ですよ」

 

 ベルの一言が意外だったのか、今度はベルを見やる。

 

 「……ですが、仇討ちだけが生きる理由だと、最後に何も残りませんよ」

 

 「お前には故郷を奪われた俺たちの気持ちは分からねぇよ」

 

 「ちょっとカイル……!」

 

 強く拳を握り怒りを滲ませるカイルをウルハが嗜める。

 故郷を奪われて怒る気持ちは当然だろう。だがその怒りをずっと自分の中で温め続ければどうなるのか。 


 「ずっと仇討ちだけを考えて力を磨く者が、最後に何に刃を向けるかあなたはまだ分からないでしょうね」

 

 「お前は分かるっていうのかよ!」

 

 「見てきましたからね、何度も何度も 私たちのかつての仲間の一人もそうでした」

 

 ベルの頑とした口ぶりにカイルは押し黙る。

 

 「あなたがあなたの仲間を守りたいと思うなら、早々(はやばや)と自分の中でケジメをつけた方がいいですよ」

 

 そう答えた刹那、カイルは背に差した剣を振り抜き、先を歩くベルに斬りかかった。

寒暖差に気をつけてと言ったそばから私が風邪ひきました。

大事を取って週末まで更新お休みします。

(元気があれば金土のどちらかで設定資料記事を更新します)

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