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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-29 魔力操作3

 「本当にさっさとリスリアに着いちゃったなぁ……」

 

 ウルハは自身の想像もし得なかった頑張りに身体よりも気疲れしてしまっているようだ。


 森を出てから半日と経たずに森から最寄の小里 リスリアへと辿り着いたが、既に陽はすっかり落ちて夜もいい時間だ。

 森からリスリアまでは大した距離ではないが、人族の子どもが何の魔力操作も用いずに途中ほとんど休むこともなく歩く距離としてはそこそこのものだ。数時間前に出会ったばかりの彼らであれば、彼らが当初想定していたという野営で一晩跨いでの移動となっただろう。

 だが一行は数時間前とはその質がもはや別人だ。魔力感知、そして身体の魔力を操作することによる運動補助に触れたのもほんの数時間前のことだが、絶えず実践しながら学んだ実の濃い数時間を経て、こうして今日中に、しかも気持ち速めのペースで歩き続けリスリアに辿り着くことができた。

 

 「無茶したと思うのに疲れてないな」

 

 疲れた様子は見せないながらもゲンナリしているウルハと違い、エドはまだピンピンしている。


 「身体より頭の方が疲れたかもしれないね」

 

 身体の魔力操作による運動補助は、特に人族の場合は触りの段階で無駄に頭を使って気疲れしてしまうことがよくある。だが慣れれば無意識下の運動と同様、ほとんど特別に意識することもなく日常的に行使できるようになる。

 彼らも最初こそ難儀していたようだが、数時間に及ぶ“徒歩”という単純作業をひたすらにこなしたおかげで、少なくとも徒歩の動作においては魔力操作を自然に行う感覚が掴めたようだ。

 

 「君たちが知らず知らずに制限をかけて過ごしている潜在能力を自分の意思で解放するのが身体の魔力操作だよ 今体感では余り疲れていないように感じるかもしれないけど、日頃より過剰な運動をしているのは間違いないから今日はしっかり休んでね」

 

 「アイリ様とベル様は本日どうされるんですか?」

 

 「みんなは冒険者向けの寄宿舎だっけ?」

 

 「はい」

 

 聞くとリスリアは冒険者が依頼を請けて立ち寄ることが多いため、冒険者向けの寄宿舎なるものが存在するらしい。彼らは養成所の所属なので正確には正規の登録(冒険者に正規の登録なんてものがあるのも驚きだが)を受けた冒険者ではないが、冒険者養成組織の所属なので便宜を図りそちらに泊まる手続きが取られているようだ。

 あわよくば私とベルも泊めてもらいたいと思っていたがそれこそ私たちはどこの誰とも知れぬゴロツキのようなものなので、聞くところによるとそこそこキッチリと設えられているという冒険者向けの寄宿舎に泊まることはできないだろう。

 せっかく今世では温かく柔らかい布団で惰眠を貪ろうと思っていたのに残念だが、野宿には慣れている。何ならありもので野営用のテントを設えるのも容易い。と思っていたが……


 「着いていきますよ」

 

 ベルは淡々と告げる。

 

 「所詮この時代の人族相手ですから透明化すれば余裕でしょう」

 

 「あぁ、なるほどね」

 

 「透明化……ですか」

 

 ウルハとリーナは苦笑する。

 

 「何だかお二人を見ていると、私たちが読んでた教科書って何だったんだろうって思うね……」

 

 私が一行の前で使用した魔法は一〇〇〇年前には広く一般的に使われていた至って平凡なものだ。しかしそんな平凡な魔法が現代の人族にとってはまるで超文明の失われた叡智のような位置付けにある。

 せっかく先人たちが生活をより便利にすべく築いてきた叡智がこの扱い……先人たちの、そして私たちの努力は一体何だったのか……

 

 「一〇〇〇年前、色々頑張ったのになぁ……体系まとめて指南書だって作ったのに」

 

 「指南書!?」

 

 ウルハが飛び跳ねる。

 

 「アイリ様の指南書……読んでみたかった…… 何て本ですか?」


 「『0からはじめる魔法修練』 のシリーズ」

 

 「えっ」

 

 次いでリーナが声を上げる。

 

 「それ、たしか……禁書中の禁書の」

 

 「「禁書ぉ!?」」

 

 ウルハと揃って素っ頓狂な声を上げてしまった。

 何故あんなに実用的に仕上げた(正確には私が主に監修して、物書きが上手な連れの多大極まる補助のもと何とか書き上げたものだが)指南書が禁書扱いされているのか……

 

 「確か昔発禁処分にされたという禁書の目録にそのような書名があったような……」

 

 「今手元にありますが」

 

 言うとベルは異空間収納を展開し、人の腕ほどの厚さの書を取り出した。

 

 「ほしければ差し上げますよ」

 

 「「いいんですか!?」」

 

 ウルハだけでなくリーナもベルに詰め寄る。

 

 「これ、巻末に複製の魔法様式がおまけでついているので、木が一本あれば三冊まで複製できますから」

 

 言いながら異空間収納から同じ書を何冊も取り出す。

 

 「ちなみに、体術指南や剣術指南の巻もあるのですが」

 

 傍でカイルとエドがピクリと反応する。

 

 「何でベルがそんなに持ってるのさ 必要ないでしょ」

 

 ベルは胸を張り、表情に乏しい顔で精一杯得意げな雰囲気を醸しながら答えた。

 

 「自分用と保存用と布教用です」

 

 

告知間違えてました

次回分は明後日更新予定です。

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