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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-24 魔力感知1

 口でこそ言わないものの揃いも揃って名残惜しそうな表情のゴブリンたちに別れを言い、ゴブリンのコロニーを後にした。

 

 「本当に見えなくなっちゃったね、ゴブリンのコロニー」

 

 ウルハがボソッと呟く。

 ちょうど結界を出たところで人族一行はゴブリンのコロニーを見失ってしまった。結界魔法の効果を間近で体験したことがなかったのだろう。一行は皆一様に驚いて見せた。

 

 私たちは当初この人族一行とゴブリンとの(いさか)いを見つけていなければ立ち寄る予定だった小さな人里に向かおうと思っていたが、せっかくこの時代の人族の知り合いができたのだから、それに付いて回った方が情報収集はいくらか楽だろう。一行も一旦森の麓の里には立ち寄る予定だったそうなので、結局一行に同行する形で、道中申し訳程度ではあるが一行の叩き上げをすることになった。

 

 「あの……力の使い方を教えてくれるというのは……」

 

 リーナが問いかける。

 この子は一見か弱そうなナリだが、意外に肝が据わっている。そして恐らくこの一行の中で一番色々なことに思案を巡らせているのだろう。私やベルの言うことを一番真摯に聞き入ってくれる。

 

 「とりあえず魔物くらいは倒せるようになってくれないとね」

 

 もちろん、彼らが言う“マモノ”ではなく“黒色”のことだ。

 

 「倒せるのかな~…… でも倒すところを“見ちゃった”からなぁ~……」

 

 ウルハは早速弱音を吐く。

 

 「逆に何で倒せそうもないと思うわけ?」

 

 「……倒しようがないから、遭ったらとにかく逃げろと教わってきた」

 

 「物理攻撃も攻撃魔法も通用しない、人の手では倒せないモノだってな」

 

 問いには代わりにエドが、次いでカイルが答える。

 

 「唯一倒せるのは上位の聖職者が使う光の魔法のみってことらしいが……そもそも光の魔法で攻撃魔法なんてないからどうやって倒せるかなんて見当もつかない」

 

 「え、光の攻撃魔法あるじゃない」

 

 「「「えっ!?」」」

 

 意外にも“リーナ以外”の三人が声を揃えて驚く。

 やはり今の人族の冒険者は、間違ったことを教えられている。……そして教えるべきことを隠されているようだ。

 それも含めて色々と教えなければいけないことは多そうだが……

 

 「まぁでも、何をおいてもまずは魔力感知をどうにかしないとね」

 

 「魔力感知ですか?」

 

 魔力感知は戦闘、索敵の他、鑑定や調薬、錬金術、そして魔法と、あらゆる分野において重宝される能力だ。特に冒険者であれば索敵能力は必須も必須なので、鍛えておいて損はない。

 

 「では、あなたたちはこれを飲んでください」

 

 言うとベルは異空間収納から薬瓶を四本取り出した。

 

 「これは何ですか?」

 

 ウルハとリーナは先ほど私たちが行使する魔法を楽しんで観ていた様子だった。今度も取り出された薬瓶を次は何のビックリアイテムかと興味津々に見入っている。

 だが残念ながら“アレ”はそんなにいいものではない。

 

 「一時的に失明する薬です」

 

 淡々と言い放ったベルの言葉に人族一行は絶句する。


 「何でそんなもの飲まされなきゃいけないんだよ!」

 

 カイルは思わず声を上げる。

 まぁその反応は当然といえば当然だ。彼らとしても私たちを全面的には信頼していないだろう。そこにきて一時的にとはいえ失明するという得体の知れない薬を渡されて、おいそれと飲めるはずがない。

 

 「感知能を鍛えるのに手っ取り早いからですよ」

 

 言うとベルは異空間収納からもう一本同じ色の薬瓶を取り出し、中の薬液を一気に飲み込んだ。

 

 「ほら、毒じゃないので何ともありません 目は視えませんけど」

 

 ベルも精霊体ではあるが肉体の組成は人族と同じなので、あれを飲むと同じように失明する。だが視えないと言う割に、ベルの所作は目が視えているときとまるで差がない。

 

 「あなたたち揃いも揃って結界から出た途端ゴブリンのコロニーを見失うわ、魔物が迫っても囲まれるまで気付かないわ、そんな(ろく)に感知能も使えない状態で冒険者が務まるとでも思っているんですか? 甘ちゃんも大概にしてください」

 

 ベルの言葉はキツいが、言っていることは全面的に正しい。四人もそれを分かっているのか、渋い顔をしている。

 

 「もし目が視えなくなってるうちに魔物が襲ってきたらどうするんだ」

 

 カイルだけは相変わらず勇ましく口ごたえしている。


 「この森の魔物はさっき倒したので全部駆逐済みです」

 

 「この森がどれだけ広いと思ってんだ! そんなの分かるはずないだろ!」

 

 「自分の身の程が分かっているじゃないですか 私たちは分かるから言ってるんです」

 

 ベルは容赦なくそれを一蹴する。


 「目に視えたものだけを捉えて色々考えすぎるから本当に視えるべきものが視えなくなるんです 黙って飲んで、不自由を味わいなさい」

 

 不自由を味わうというのは趣旨から外れるような気もするが……ベルの個人的な趣味じゃないだろうか?

 ともあれ、ベルの容赦ない畳み掛けに圧されて四人とも渋々ではあるが薬を飲む。

 

 「えっ!? うわっ! 本当に視えなくなった……!」

 

 「……目は視えないのに体は別に何ともない」

 

 皆口々に感想を述べながらまるで生まれたての小鹿のようにふるふると弱弱しく辺りを手探りしている。

 目が視える人が視えなくなったときの所作は相変わらず見ていて面白い。そんなにも動揺するものだろうか。

 目のある生き物はそれだけ視覚に頼っているんだろうなぁ……

 

 ともあれ、せっかくの訓練だ。失明薬も無限にはない。もちろん時間も有限なので、惜しみつつ励もう。

 

 「今からあなたたちには目が視えないままでこの森を抜けてもらいます」

 

 言うと、まぁ予想通りではあるが一行からは驚嘆の声が上がる。

 

 「そんなの無理ですよ~~……」

 

 「目が視えないのにどうやって歩けって言うんだよ!」

 

 「視えるようになってください それが無理だと思っているうちはできませんよ」

 

 「……」

 

 何だかベルはカイルに対してだけ当たりが気持ち強いような気もするが……まぁいいか。

次回分は明日更新予定です。

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