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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-18 異形の侵攻

◆前回のあらすじ


人族とエルフが戦争始めたら、何か変なん湧いて出たって

 異形のナリを視覚で見た人々はとにかく気味が悪いだの気色が悪いだのそのおぞましいらしい見た目にものの見事に()てられていたようだが、視覚の弱い私は魔力感知によって奴らの姿を捉えていたので何のことはない。繰り返しになるが、私にとっては当初から奴らは風船のようなものだった。

 

 私としても、そのときは特段の正義感に駆られていたわけではない。ただ単に、廃れ喧騒鳴り止まぬ殺伐としたスラムがようやく活気ある豊かな街になったというのに、それを脅かしにやってきた何かよく分からない黒い魔力の塊を散らしてやれと思っただけだ。

 生まれ持った魔法適性と両親から受け継いだもの……その両者を併せ以ってすれば、奴らの魔力を散らすことなど赤子の手を捻るも同然の容易なことだ。


 だがそれは子の想定を超えて思いがけない成果を生んだ。

 一度そうして魔力を散らした異形は再び形を成さなかったのだ。

 

 そのとき行使したのは基礎発散系統の初級魔法“発散(エミッション)”だ。

 エミッションは元々は蒸気や臭気などを払い空気を清浄するための誰もが扱えるような日常的な魔法だ。効能も作用力も大したことはないが、考え方を変えればエミッションで発散する対象も魔素で構築された物質やそれらが摩擦で生じる現象、つまりは魔力だ。相手は黒い魔力の風船のようなものなのだから、同じ要領で発散してしまえばいい。

 そしてそんな私の目論見は見事に的を射た。何らかの要因により成した異形の殻を破る威力で黒い魔力を発散する。すると散った黒い魔力は陽の光に当てられ再び殻を形成したり空を覆う闇に合流する間もなく中和され生の魔力に戻っていき、そのまま復活することはなかった。

 それまで世界中で誰一人成し得ず策を見出すことすらできなかった、命を持たない単純な魔力の権化である異形を殺す術を見出したことになる。

 大したことをしたつもりもなかったが、それは邪悪なる異形の侵攻によっていずれは滅ぼされかねないと思われていた世界の情勢を覆しうる出来事だった。

 

 アウローラを襲撃する異形はしばらく絶えることはなかったが、仕組みさえ分かってしまえば何ら脅威ではない。私は奴らの殺し方を街の仲間たちに実戦を交えて教え込んだ。仲間たちが順調に襲い来る異形を屠る傍ら、私はエミッションをはじめ、より奴らの魔力を効率的に散らす術を見出すべくアレコレと模索していた。


 アウローラは元々あらゆる種族のはぐれ者やならず者たちが流れ着いたゴロツキの街だった。

 奪い奪われは日常茶飯事。決まった住処はない。畑や畜産に勤しむ者は、自分の食い扶持が奪われないように自らが強くある必要に迫られる。傷付こうと病もうと助けてくれる者はいない。そんな殺伐とした名もないスラム。

 そんなスラムにある叡智が持ち込まれた。何故人々は殺伐と暮らしているのか。何故人々は奪い奪われ生きなければいけないのか。何故人々は餓えなければいけないのか。そんな苦境にこそ魔法は用いられるべきではないか。私は奮って魔法を使い、人々が豊かに暮らすべく手を取り合える街づくりを試みた。

 当然それを小童の日和った戯言と反感を抱く者は大勢居た。このスラムでは勝者こそが正義という不文律があったので、私は反論する者全てと張り合っては打ちのめし、力ずくでも私の目指す街づくりを進めた。ベルと親しくなったのも、そんな私の志向が気に食わないと突っかかってきたのを何度となく打ちのめした日々がきっかけだ。

 私がスラムに腰かけて数年する頃には、猛者の集うスラムにあっても私に歯向かう者は誰一人としていなくなった。それは私が誰よりも強く誰もかもを打ちのめしたからではなく、私の考えに賛同する者が多くなってきたという側面が大きい。次第に形を成し始めた私の思い描く街が、私の語る理想により現実味を持たせたのだろう。

 そうして一〇年もする頃にはスラムには定住可能な住居が立ち並び、道は均され井戸も引かれ、畑も畜舎もより利便性を追求する形に刷新され、小さくも一つの活気ある街となった。人々はそれぞれ役割を持ち助け合い支えあい生活することで、奪い合うことも傷付け合うこともなくなった。

 はぐれ者同士、それも種族の違う者の集い。そんなスラムが、人々が互いに思いやり生活できる街になった。当時異種族の共生は一般的ではなかったため、新たな可能性を見出した街として、人々の総意で“夜明け”という意味を持つ“アウローラ”と名づけられた。

 そうして苦楽を共にしながら築いた街だ。私だけでなく人々皆が街に愛着を持ち、一丸となって守るべく戦った。

 我の強い曲者が多い一方で彼らは腕の立つ者、機転の利く者が多く、対魔物の戦術を洗練するのは何ら苦ではなかった。そんな腕利きの者たちが次第に連携を覚え、異形相手に臆することなく立ち向かえるようになった。

 真に皆が手を取り合い、街を守るべく力を合わせた。


 次第に襲い来る異形の数を奴らを屠れる民の数が上回っていき、数ヶ月続いたアウローラの防衛戦線は破られることなく、異形の侵攻を見事凌ぎきった。

次回分は明日更新予定です。

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