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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
25/116

1-17 異形の出現

◆前回のあらすじ


生まれたときから命狙われてたのよね~

 両親の下を発った子は広大な森を身一つで訳も分からず逃げ走った。

 雨が降ろうと、木の根に足を取られようと、食料が無く餓えようと、泥水を啜ろうと、言われたままに逃げるほかなかった。

 相手はエルフだ。下手に魔法を行使して居場所を掴まれるとまずい。痕跡を残さぬよう極力最低限の魔法しか使わないようにするのも両親の教えの一つだ。

 魔力が人並みはずれて高いとはいえまだ年端もいかない幼子だ。力を完全には制御できないうちは子としても積極的に魔法を使う気にもなれなかった。

 加えて体調も万全とは程遠い中視聴覚の不足を補うため魔力感知に集中していたので、それを保ちつつ精密な魔力操作をするのはリスクが大きい。気を抜けば途端に視えない聴こえない誰かが自分の命を狩ろうとしてくるかもしれない。母が生きろと言ったので、死ぬわけにはいかない。

 神経を研ぎ澄まし、自分を狩ろうとする何者かの気配を探る。

 

 考えるのは後だ。とにもかくにも追っ手から逃げ延びる。

 

 両親がその身を盾に逃がしてくれた命を、授かった名を自分は守っている。そう言い聞かせながら、子は逃げた。

 

 子はその後道すがら出会った老父に“しばらく”匿われた後、老父の導きによって辿り着いたスラムで一〇年ほど過ごすこととなる。

 生まれ育った森では自分が逃げた直後に地形が変わるほどの戦闘があったと知るのはそれよりさらに後の話だ。

 

 子が老父との生活、その後のスラムでの喧騒に揉まれながらの目まぐるしい生活を送っていた頃、人族から他種族への侵攻に端を発する紛争はさらに泥沼化していた。

 

 大規模な戦力が投じられたエルフの討伐隊によるハーフエルフ親子の討伐は失敗に終わったと()われている。“云われている”というのは、討伐隊とハーフエルフとの戦闘の結末を知る者が誰一人として居なかったからだ。討伐対象であったハーフエルフ親子の足取りは不明。討伐に向かったエルフの戦士たちは誰一人として帰らず。ただその戦闘があったと思しき場所では元の地形が跡形もなく変わるほどの甚大な戦闘痕が残っていただけだったからだ。

 結果として討伐の成果を上げられなかったばかりか、エルフは一族の中でも強力な戦士たちを大勢失うこととなり、それを皮切りにエルフ一族は人族との抗争で急激に劣勢へと転落していくこととなる。

 

 片や人族はエルフが劣勢に転じたのをいいことに、エルフへの攻勢を強めた。

 エルフの叡智を奪い、若い女は(さら)い捕虜とし、さらなる力をつけ他種族への侵攻を強めた。

 元より数の多かった人族もそれ以外の種族も問わず、戦争の中では多くの者が命を落としていった。住処を丸ごと潰された者、親兄弟の命を奪われた者、生き残ったところで生活を送れる環境になく、飢え、病み患い、疲れ果て死んでいく者、まさしく地獄のような時代だった。

 そんな時代に生ける人々の不安、恐怖、怒り、憎悪……あらゆる黒い感情は暗く闇の色を帯びた魔力の奔流となり空を覆っていき、誰が見ても分かるほどに空は黒く濁る暗黒の時代へと変貌していった。

 人族の攻勢は数十年ほど優位にあった。人族は攻撃魔法体系のさらなる研鑽(けんさん)を図り、さらなる領土と勢力の拡大を企てていた。

 

 だがそんな人族の目論見は“ある異形”の出現によって脆くも崩れ去る。

 どこからともなく現れた、漆黒の体躯にどこか欠如していたり不自然に変形していたりと不気味ななりをした異形。現れるや否や、何の前ぶれもなく人々へと襲い掛かった。そして異形に触れた者たちは次々に命を奪われていった。

 人族は戦慄した。自分たちの持てるあらゆる武力が通用しない。一方で異形は人族の命を軽々刈り取っていく。他種族への侵攻で勢力を拡大しつつあった人族は一気に窮地に追いやられた。

 人族は当初それらの異形は魔法に堪能なエルフが窮地に追いやられた中で発動した何らかの秘術により発生したものではないかと考えたが、異形は人族だけでなくエルフ、そして他のあらゆる種族へも、そこに命がある限り無差別で襲い掛かった。

 異形の出現以降、それらはあらゆる種の命を奪うのに比例し数を増やしていった。

 世界では大きく人族対他種族の構図にあった各地での紛争は、次第に異形対全種族の世界規模の大戦へと発展していった。

 あらゆる物理攻撃も魔法研鑽(けんさん)初期の攻撃魔法も通じず、異形の侵攻を前に人々はなす術もなくただ逃げ、閉じこもり、いずれ奪われるそのときを待つだけだった。

 

 そんな世界の窮状は、ある子が住み着いてからほんの十年と経たずに異種族が共生する活気ある街へと急発展を遂げたスラム アウローラへも波及した。

 近隣の小里から異形の襲撃より逃げ延びた者たちも匿っていたため、いずれ襲い来るかもしれない異形の存在を知っていたアウローラの民は“防衛”のための備えを築いていた。だがそんな民の想定すらも裏切るとんでもない出来事が起きた。

 

 有史の上では初めて、後に“魔物”と呼ばれる異形を屠る者が現れたのだ。

 その者の名はアイリ・トライソル――背に輝く三つの星の加護を持つハーフエルフの子だった。



―――――


参考


トライ(3つの) ソル(太陽)


次回分は明日更新予定です。

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