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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
24/116

1-16 人妖交雑

◆前回のあらすじ


実は昔こんなことがあって~……

 さて、人族一行には先ほど来語ってきた魔物について私の知るところを話すのだが、物語の冒頭で非常に不本意に歪曲されたこの世界の歴史をお見せしてしまったので、訂正がてらこの世界で一〇〇〇年前何が起こったのか、私が見てきたものを話していこう。


……


 ――大昔、世界には様々な種族がそれぞれの領分を保ちながら深くは関わり合わず、種族間で争うこともなく平和に過ごす時代があった。人型種、亜人種、獣種、精霊、竜種、他にも大勢……互いが互いの領分に不可侵とすることで世界の均衡は保たれていた。


 そんな中、禁忌とされていた異種交雑……ある人族の男と妖人族(エルフ)の女が結ばれ、やがて長女と長男の二人の子を成した。後に『人妖交雑』と呼ばれる世界の一大事である。

 夫婦は二人の子を健やかに育て愛しんだが、あるとき男はエルフの叡智である魔法を付与した宝珠を奪い、妻であるエルフを殺害して人里に逃げ帰った。

 

 そこからは地獄だ。

 それまで弱者であった人族たちは瞬く間に魔法を我が物にしていき、力を得た人間はやがて他種族への侵攻を始めた。

 魔法に長けたエルフたちもその標的の一つだった。エルフは近代的な魔法体系を築いた種ではあるが、その多くは生活を豊かにするための基礎魔法だ。何者とも争わず、そのため危機感を持つこともなく暮らしていたエルフは戦闘における魔法行使、つまり“攻撃魔法”の行使に慣れていなかった。魔法の扱いに長けているといえど、侵略のために攻撃魔法の体系を編み出し積極的に行使する人族との争いは、両者おびただしい量の血を流す悲惨なものとなっていった。

 また、人族はエルフ以外の種も積極的に滅ぼしにかかった。エルフ同様争うための力を養っていなかった他種族の多くは個々の地力で人族に優ってはいるものの、圧倒的な数による蹂躙で徐々に住処を奪われていった。

 

 エルフは人族との争いに疲弊していく中、並行して人妖交雑によって生まれたハーフエルフ姉弟の討伐にも力を注いでいた。争いの元凶となった交雑によって生まれた忌み子姉弟に対し、やるせなく膨らんだ怒りをぶつけたかったのだろう。討伐にはエルフの中からも多大な戦力が投入された。

 だが人族との争いの最中貴重な兵力を割いてまで姉弟の討伐を急いだ最も大きな理由は別にある。ハーフエルフ姉弟の持って生まれた力の強大さだ。

 片や魔法に長け、他の種の追随を許さない秀でた魔力操作能を発揮するエルフ。片やそれまで魔力操作の概念を持たなかったが、一等豊かな感受性によって潜在的には強力な感知能を持ち、さらに種として発達した共感能により個としては弱者でありながら先進的な文明を築いた人族。その間に成された子はエルフ・人族の両者を凌駕する魔力操作と魔力感知の才を持つ、まさしく雑種強勢が色濃く現れたハイブリッドだった。姉弟はそれぞれの種としての限界を超越し、あらゆる魔素あらゆる魔力により親しく、熟すれば竜種にも匹敵しうる強力な個体になり得ると思われた。

 まだ若いといえど半分は忌まわしき人族の血の通う二人が、いつ自分たちに牙を向くようになるか分からない。そうなる前に、二人の力が成熟する前に姉弟を葬ってしまおうとエルフは考えたのだ。

 

 一方姉弟は、自分たちがそうして狙われる由縁を知る由もない。

 誰にも頼れず、飢えながら、怯えながら、命を狙われながら何とか逃げ延び、やがて“ある森”でひと時の平穏を得た。

 およそ常識など学ぶ機会もなく育った二人が、実の姉弟であろうとも、互いに手を取り合い危機を乗り越える中で姉弟の関係を超えて互いを深く愛し合うようになったのは自然のことだったのかもしれない。やがてハーフエルフの姉弟も二人の間に子を成した。

 そうして生まれた子どもはハーフエルフ第二累代(F2)……生まれながらにして強力なハーフエルフである両親をさらに凌ぐ莫大な力を持っていた。だが同時に雑種同士、加えて近親交配によって生まれたことが災いしてか、子は性別を持たず、また生まれつき視力と聴力がほとんど機能していなかった。

 

 そんな体でも魔力だけは純粋なエルフとは比べるまでもない素養を秘めた子だ。やがてその子の存在もエルフの討伐隊の知るところとなり、両親であるハーフエルフ姉弟ともども命を狙われることとなった。

 姉弟は自分たちが逃げ延びる中で学んだことと磨いた技術、そして魔法を時間の許す限り子に教え込んだ。

 視力と聴力が弱かったことがより拍車をかけたのだろうか、或いはその二つは最初から必要ですらなかったのか……その子は優れた魔力操作と魔力感知のみでなく、操作能と感知能を紡ぐ魔力識別能においても比類ない才能を開花させ、視聴覚の欠如をものともすることなく力により磨きをかけていった。

 

 いつ襲い来るとも分からない敵に怯える中にあっても、三人は束の間の幸せを謳歌していた。両親は子を守るためあらゆる手段で身を隠そうとしたが、二人が止め処ない攻勢に遭っても相手の命を一つとして奪わなかったことが仇となり、エルフの討伐隊は日に日に数を増やし力を増していった。見つかるのは時間の問題だった。

 

 そしてついに三人はエルフの討伐隊に追い詰められた。

 両親であるハーフエルフ姉弟は自らを盾とし子を逃がした。

 

 「アイリ、逃げて! 必ず……生きて!!」

 

 それが子の聞いた、母の最期の言葉だった。

次回分は明日更新予定です。

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