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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
20/116

1-12 ゴブリン

◆前回のあらすじ


人族だろうとゴブリンだろうと、命は命ってこと。

 「あ~~クソッ! 何だこの馬鹿力!」


 ゴブリンに投げ倒されたカイルがもう何度目かも分からない恨み節を叫ぶ。

 

 騒動から一時間ほどが経った。

 

 ベルが人族一行の意気をバッサリ切り捨ててから少しの間何とも気まずい空気が流れたが、一期一会の機会にギスギスしていても何の実りもない。人族の武装は凍結したし、ゴブリンの方はそもそも武装すらしていないし、せっかくの異種族の出会いを有意なものにしたいじゃないか。

 そんなわけでなんやかんやあり、人族一行の男二人組がゴブリンの子どもたちにホイホイと投げられるのを作りたての小屋の縁側から眺めている。

 ベルの進言により、男二人組――剣士のカイルと戦士のエドはゴブリンの子どもたちと“(たわむ)れる”ことになった。しかし娯楽のない森の中でできることは限られている。そこで提案したのが“相撲”だ。

 相撲とは遥か昔、旅の道中訪れた東洋域の島国“和国(ワノクニ)”で流行っていた独特の格闘技の一種だ。打撃は張り手以外一切禁止。ただ全身全霊の体当たりと、相手を転ばす腕力と体幹のテクニックだけが物を言うシンプルな闘技だ。格闘技というよりは最早肉弾戦に近いかもしれない。

 もっとも今(こう)じているこれはそんな真剣なものではなく単なるお遊びなのだが、当初の予想を裏切らずカイルとエドが一方的に転ばされる展開となっている。

 

 「どうですか、子どもにホイホイ投げられる気分は」

 

 ベルはそんな二人をからかう。

 

 「腹立つなぁ!」

 

 思うように立ち回れず愚痴をこぼすカイルだが、エドは何とか張り合おうと粘っている。戦士風なだけあって、相撲のシンプルでありながら理に適った力の使い方を実戦で学ぼうとしている様子だ。

 冒険者なのだから当然戦闘の素人ではない。二人は恐らく一〇代前半であろう年相応に幼くはあるが、それでもゴブリンの子どもにすら敵わない。単純に地力(じりき)でそれだけ差があるのだ。

 年端(としは)もいかないゴブリンの子どもでも成熟した人族と張り合える程度の力はある。ホブゴブリンにもなれば単純な力比べでは人族でも選りすぐりの屈強な戦士が束にならなければ敵わないし、ゴブリンの上位種族である大鬼族や体躯の小さい鬼人族ですら人族とは比べようもない力を持つ。そんな種族が居ながら人族が侵略されず生活できているのは、個としてより強力な種族である彼らがそれをしないからに他ならない。

 

 「分かったでしょう ゴブリンはあなたたちを(ほふ)ろうと思えばいつでも屠れる あなたたちが襲ったゴブリンも反撃に出ればあなたたちはただでは済まなかったでしょう でもそうしなかった」

 

 現に力比べをしたことでそれを痛感したのだろう。二人は返す言葉もなくただ息を整えながらベルの言に耳を傾ける。……いや、何も言わないのは疲れているからかもしれないが。

 

 「ゴブリンは好戦的な種族ではありません 人族にとっては異形のように思うかもしれませんが、彼らにも心がある」

 

 ベルの言うことは正しい。だが人族一行も彼らが育った環境で刷り込まれた彼らなりの常識があり、すぐに受け入れろと言われても難しいかもしれない。それでもこうして触れ合ったことで考えるきっかけぐらいにはならないだろうか。

 カイルも先ほどからブツブツと憎まれ口こそ叩いてはいるが、何か思うところがあったのだろう。ゴブリンに対して突っぱねるような態度は取っていない。

 溝は深そうだが、少しずつでも異種族の確執が取り除かれていけばいい。


 そんな様子を微笑ましく見ていると、先ほど造った小屋に(ほどこ)した“微調整”を確認し終わったホブゴブリンがやってくる。

 ゴブリンは基本的には森でひっそりと暮らす種族のため、対外的にも種族内でもいわゆる人族的な羞恥(しゅうち)の概念を持たず、オスメスで生活スペースを区別する必要ない。結局小屋の間取りは雑居、就寝、調理や加工、ついでに備蓄庫に絞った至ってシンプルなものとなった。あとは暖炉等の内装や茣蓙(ござ)代わりにその辺の草を魔法で加工した絨毯(じゅうたん)などを(しつら)えて、晴れて新たな寝床の完成だ。

 ついでに小屋の大黒柱には状態維持や環境適応など私特製の魔法を付与して、第二次アイリ建築記念すべき一棟目は小柄ではあるが立派な住処となった。一〇〇〇年のブランクこそあったが、まぁ上々の出来だろう。


 「本当に何から何まで恵んで頂いて、ありがとうございます」

 

 コロニーの長であるホブゴブリンも先ほどまでの警戒は既に解き、深々と頭を下げる。

 

 「いいよいいよ、ほんの自己満足だから 一定期間小屋を空けたら土に(かえ)る魔法も仕込んでおいたから、要らなくなったら気軽に棄ててね」

 

 「滅相もない 我らコロニーの大切な根城にします」

 

 一連の微調整や魔法付与を(はた)から見ていた人族一行の少女二人――魔導師のウルハと聖女のリーナは、熱心に魔法の様式を観察していた。

 

 「こんな大魔法ポンポン使えるなんてすごいな~…… 私も鍛錬して、大魔導師になりたい」

 

 ウルハは感嘆している様子だが、私はまだ彼女らの前でいわゆる“大魔法”は使用していない。言うとまたみだりに凹ませそうなので言わないでおこう。



―――――


[種族]


小鬼族ゴブリン

 

森に棲息する亜人種。

小柄だが力は強い。好戦的ではなく穏やかな性格。

知能はそこまで高くはない。


基本的に最低でも数十人単位のコロニーを築いて生活する。

コロニーの人数に応じ、群の中から統率する個体が現れる。

ホブゴブリン … ゴブリンより大柄でより力が強く賢い


稀にゴブリンの中から上位種族に進化する者が現れる。

ゴブリン → 大鬼族オーガ

ゴブリン → ホブゴブリン → 鬼人


次回分は明日更新予定です。

次回は新話『アイリ・トライソル』です。

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