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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-11 人族のルール6

◆前回のあらすじ


とりあえずゴブリンのコロニー狩人から守るために結界張りにいこ~

 「媒介はこれでいいね」

 

 魔法が完了し、それまで(こけ)の生えたただの岩だったものが澄んだ深緑色の輝きを発する魔石へと変質した。

 急ごしらえだが、手を付けられていなかったこの森の自然魔力(マナ)をふんだんに盛り込んだ上質な魔石だ。秘匿結界(ハイド・ボーダー)も問題なく組めるだろう。

 

 一方ホブゴブリンは、目の前で行使された魔法に目を見開く。

 人族一行の方はさすがに驚き疲れたのか、もはや何が起ころうとおかしくないとでも思ったのか、力ない呆れ笑いを漏らしながらその光景を見ていた。

 

 「“土留(ファウンデイション)” “建城(アーキテクション)” “樹脂定着(レジナイズ)”」

 

 森の地面は変容しやすく建物が不安定になりやすいので、周辺の岩から杭と基礎を生成し上物を安置できる土台を作る。続いて森に茂っていた木々を切り出し、簡易的ではあるが三〇人のゴブリンが不自由なく生活できそうな小屋を土台の上に構築する。さらに切り出す過程で木々から抽出した樹脂を高密度で固め、小屋の内外を撥水(はっすい)防湿仕様にコーティングする。

 

 「“破砕(クラック)” “分散(ディスパース)”」

 

 次は破砕魔法で先ほど生成した魔石を三分の二ほど砕き、小屋を中心に円形に囲うように半径一〇〇メートルほどの位置に破片を飛ばしていく。

 そして大きめに残した結界の核となる魔石を中心に魔法陣を構築し

 

 「“秘匿結界(ハイド・ボーダー)”」

 

 仕上げの結界魔法を展開した。

 深緑色の魔力が魔石を中心に破片の散った方へとドーム状に膨らんでいく。

 最後にもう一度破砕魔法を使い核の魔石の表面からゴブリンの人数分の破片を削り出せば結界構築は完了だ。

 

 「ゴブリンの皆、結界の外に出るときはこの破片を持ち歩くようにね」

 

 「…………」

 

 「お見事です」

 

 矢継ぎ早に展開された魔法とその一連の効果に、場に居たベル以外の全員が絶句していた。

 

 コロニーの長であるホブゴブリンは魔石の破片を手に取る。

 

 「……さすが上級精霊、見事な結界です」

 

 核となる魔石の破片は核を媒介とした結界と魔力を共有しているため、魔力感知能のある者が破片に触れれば結界の状態と範囲を知覚することができる。また、破片一つで一人分ほどの小規模結界を展開できるので、元の結界の外に居ながら秘匿の恩恵を受けることができる。地図兼鍵兼透明マントのようなものだ。

 

 「しかし、何故我々にここまでしてくれるのですか」

 

 「通りすがったから」

 

 ホブゴブリンも、傍で話を聞いていたコロニーのゴブリンや人族一行さえも、ワケが分からないという顔をする。

 

 「通りすがったから」

 

 まぁ理解されないのだろうなと思いつつ、もう一度ハッキリと告げる。

 現にこうしてたまたま見つけたゴブリンのコロニーに加護をもたらしたことに、通りすがりで目に付いた以外の理由はない。ただの自己満足だ。

 そうあっけらかんと告げた私に、ホブゴブリンは眉間に皺を寄せる。

 

 「あなた方のお考えは崇高すぎて我々には理解が及びません」

 

 「そんな大したものじゃないんだけど……まぁ、あなたたちが少しでも平穏に暮らせたらなって思っただけだよ」

 

 ホブゴブリンは再度跪き(こうべ)を垂れた。

 

 「かたじけない……それで我々はどうすれば良いのでしょうか 後ろの人族の方々は一体……」

 

 「おぉ、そうだった ゴブリンが“魔物”じゃないってことを知ってもらおうと思ってね」

 

 人族一行はムッとしたりバツの悪そうな顔をしたりとそれぞれ表情が忙しい。

 

 「ん~……じゃあせっかく小屋も造ったことだし、ちょっとここで休ませてもらっていいかな?」

 

 続く私の提案に、ホブゴブリンはあからさまに表情を強張らせる。

 

 「お二人はともかく人族は……」

 

 先ほどまで同胞を襲っていて、蘇生したとはいえその一人の命を奪った一行だ。嫌悪感を抱いていても致し方ない。

 それに人族一行の言によれば人族にとってゴブリンは討伐対象である。ゴブリンの側もそれを知っているのであれば人族は明確に敵対種族であると言えるだろう。ホブゴブリンの懸念は(もっと)もだし、そのような反応をされても致し方ない。


 「“武装凍結(ネガシオン・アームズ)”」

 

 不意にベルが人族一行の持っていた武具に結界を展開する。武装凍結は武具の殺傷能力を制限する凍結魔法の一種で、結界を張られた武具は物理攻撃ではダメージを与えることはなく、また攻撃魔法の媒介としての使用もできなくなる。

 つまり人族一行は今この瞬間丸腰になった。

 

 「これで」

 

 「いや、これでと言われましても……」

 

 淡々と告げたベルに、ホブゴブリンの表情はさらに困惑の色が深まる。

 

 「ゴブリンの皆さんは、こちらの四人を好きなようにしていただいて構いません……殺したければ殺しても」

 

 続くベルの言葉に、それまで静観していた人族一行が四者四様に驚きの声を上げる。

 

 「安心してください ちゃんと都度蘇生しますから」

 

 「そういう問題じゃないだろ! 人の命を何だと思ってるんだ!」

 

 カイルは尤もそうな反論をするが


 「では、あなた方はゴブリンの命を何だと思っているんでしょうね」

 

 ベルは例によってそれを一蹴した。

 

 「ご覧の通り、ゴブリンは知性を持ち文明を成すれっきとした一亜人種です それを魔物だ魔物だと無条件に殺戮(さつりく)するようでは、あなた方“人族(ニンゲン)”の方が余程“魔物”と呼ぶのにふさわしいですね」


 人族一行はそれぞれ思うところがあったのか、ベルの一言で押し黙る。

 カイルは納得した様子ではないが、それでもベルの言葉に返す言葉はなかった。

次回分は明日更新予定です。

次回から新話『ゴブリン』が始まります。

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