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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-8 人族のルール3

◆前回のあらすじ


ゴブリン蘇生してあげよう

 「“遡及蘇生(リヴァイヴ)”」

 

 横たえられた亡骸を中心に金色に輝く魔方陣が展開すると、森に散りつつあった魔素が光を纏いながら亡骸へと収束していく。その最後に拳大の固有魔素―――この子の“魂”がゆっくりと体に吸い込まれていく。

 同時に光を帯びた亡骸は修復を始め、次第に生気を感じさせる鮮やかな体色へと回復していく。

 その様子をゴブリンも人族一行も、固唾(かたず)を呑みながら見守る。

 

 「そんな……蘇生魔法……!?」

 

 人族一行の聖女風の装束に身を包んだ少女が驚愕の声を漏らす。

 蘇生は人族でいう“聖職者(クレリック)”の生業(なりわい)の一つだ。彼女もその風貌通り聖職者ならば蘇生魔法について思うところがあるのだろう。先ほどまでとは違った表情で蘇生の事象改変をまじまじと観察している。

 

 しかし、蘇生が間に合ってよかった。

 肉体を持つ者に用いる通常蘇生のアプローチは“死”という事象を巻き戻す“遡及(そきゅう)”と、何らかの要因で分離された状態にある肉体と魂とを再び結びつける“回帰”の二種類がある。今回のように肉体損傷により死に至ったケースで用いるのは遡及により肉体の損傷も丸ごと補修してしまう前者だ。

 どちらにしても使用者の魔法適性や魔力によって成功率が異なるが、それ以前に蘇生には一定の“時間制限”がある。

 

 この世界に漂う魔素は星の南から北へ向かって緩やかに移動している。

 星の南極部にある放射(ラジエイト)星極から放出された魔素は、星の表面を巡った後北極部にある収束(アブソーブ)星極へと収束し星の核に還る。固有魔素である魂も同様の道を辿る。

 死によって肉体と解離した魂は魔素の流れに乗って地殻から収束星極へと向かう。つまり死から一定時間経過すると魂を捉えるのが難しくなる。蘇生は遺骸や遺物といった“台”とその固有魔素である“魂”が合わさることで初めて成されるので、魂を見失ってしまった後での蘇生は絶望的となるのだ。

 一般的には早ければ早いほど楽なのだが、そもそも魂を補足するのにも一定の感知スキルが必要とされるので蘇生魔法は比較的ハードルの高い魔法と言える。

 

 私はいわゆる聖職者としての修行は積んでいないが、蘇生には躍起(やっき)になっていた時期があるので得意魔法の一つだ。

 

 時間にして一〇数秒ほど、焼け焦げていたゴブリンの身体は無傷の状態へと遡及し、やがて光が収まったと同時に目を覚ました。


 「オ……オォオオ!」

 

 光に包まれた仲間の遺骸に不安と期待の入り混じった顔をしていたゴブリンが声にならない叫びを上げ、涙を流す。

 

 「これで信じてくれる? 私たちのこと」

 

 「ア……アリガトウ! アリガトウ……!」

 

 目覚めたメスのゴブリンは自分に泣き(すが)る仲間の姿に一瞬戸惑った様子だが、人族一行と私たちを見た瞬間表情を強張らせる。

 それはそうだ。先ほどまで自分たちを襲っていた狩人に、さらに見た目では人族と相違ない私たち二人が加わっているのだから。

 襲われた記憶まで消してしまえればよかったのだが、リヴァイヴはあくまで死という事象の遡及なのでその瞬間までしか遡ることはできない。彼女が襲われ逃げながら傷を負い、今にも命を奪われようとした恐怖はそう簡単には拭えまい。


 「コノフタリ、ミカタ……イキカエラセテクレタ オマエ イキカエッタ」

 

 生きていた方のゴブリンが(なだ)めるが、そうすぐに自分が一度死んで生き返った現実を受け入れられはしないだろう。

 

 「“鎮撫(カーム)”」

 

 見かねたベルが心を落ち着けるための精神感応魔法を行使する。

 

 「私たちは君たちの敵じゃない 襲ったりしない 信じて欲しい」

 

 メスのゴブリンは蘇生直後の特有の記憶の混濁に加え人族と相対した怯えでパニックになっていたようだが、精神が乱れていたからこそベルの魔法は覿面(てきめん)に効果を発揮した。心拍も安定し、気持ちも落ち着いたように見える。

 

 「あの……!」

 

 ひと段落したかと思ったが、次に切迫した声を上げたのは人族一行の聖女風の少女だった。

 

 「今のは蘇生魔法ですよね!? そんな“伝説級”の魔法、何で使えるんですか!? あなた方二人は一体何者なんですか!?」

 

 矢継ぎ早に質問を被せてくる。

 

 「何でって……何で? ベル分かる?」

 

 「何でも何も、蘇生魔法を知っているからですね」

 

 ベルの答えは至極(しごく)あっさりとしたものだが、それでも「何で」という問いに対して的確な回答ではある。私たちが蘇生魔法を使えるのは現にそれを“知っている”からに他ならない。

 魔法は展開・作用・効能を理解した上で魔力操作が可能であれば誰しも行使することができる。そこに魔力操作の技量や属性の適性、生まれ持った性質などによって得手不得手の差はあるが、後者を除けば一定の鍛錬を積めばある程度の上達が見込める。

 私やベルは蘇生魔法の理屈を知っているから扱える。ただそれだけだが

 

 「………?」


 少女にはいまいちピンと来なかったようだ。



―――――


[魔法]


リヴァイヴ(遡及蘇生)


属性:光-聖


2系統ある通常蘇生魔法の一つ。

展開は遡及による“死”の事象改変。肉体由来の死者蘇生に効果的。

使用者の魔法適性や魔力の量によって蘇生の成功率が変わる。


消費MP:500~ / 回

発動難度:A+

属性補正:50%

指向属性:遡及

次回分は明日更新予定です。

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