表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
15/116

1-7 人族のルール2

◆前回のあらすじ


何か人族がわけ分からんこと言ってるけどとりあえず魔物来たし倒そ~

 「お前……何者だ!」

 

 怯え竦む少女二人とそれを庇う戦士を後ろに、震える手で何とか剣を構えながら唯一戦意を喪失していない様子の剣士風の少年が私に対峙する。

 が、その切先に立ち(ふさ)がるようにベルが間に立つ。ベルの方は剣は抜かずただ棒立ちのままだ。

 

 「何者……うーん、ただの通りすがりだけど」

 

 実際私は目覚めたてで森を抜けるべく通りすがっただけなのだが

 

 「嘘をつけ! こんな辺境を冒険者以外がブラつくはずがない! 冒険者でこれほどの魔法を使う奴なら俺たちが知らないはずがない! どこから来た!」

 

 どうやらこの少年は人族の癖に聞き分けが悪いようだ。

 

 「やめろ、カイル」

 

 と、怒号を飛ばす剣士風の少年を後ろで構える戦士風の少年が冷静に諫める。

 

 「俺たちがどうこうできる相手じゃない」

 

 後ろの少女二人は相変わらず怯えきっているが、戦士風の方は人族一行の中でも冷静に状況を分析できているようだ。

 私は別にこの子たちをどうこうする気はないのでそこも汲んでもらいたいものだが……

 

 「ゴブリン、今から君たちのコロニーに行くけど」

 

 言うとゴブリンは顔を青ざめさせる。


 「オ……オタスケヲ……!」

 

 「私は君らのコロニーを潰しに行くわけじゃない 魔物や狩人がうろついてるこんな森の浅くに露出してたら危なっかしいでしょ 結界張るだけだから」

 

 どうにもこの森を闊歩(かっぽ)していた魔物たちの動向は腑に落ちない。

 ゴブリンや森の獣種、それに魔物を恐れる人族に手出しをするわけじゃない。一方で魔力を隠さず探知を展開した私たちに気付くや否や、他の命には目もくれず向かってきた。魔力に触れたのがトリガーだとすれば、魔法を使う種族ではないとはいえ人族に比べいくらか潜在魔力の高いゴブリンが何の拍子に標的となるか分からない。

 それに魔物を抜きにしても、こうしてゴブリンを狩りに人族がやってくるのであれば危険であることには変わりない。であれば自己満足ではあるが彼らの身を守るために簡易的な結界を張るくらいのことはしておきたい。


 「おい、どういうつもりだ! ゴブリンのコロニーに結界を張るなんて!」

 

 剣士風の――カイルという名の少年は制止する戦士には見向きもせず、ベルを通り越して私に向けて怒号を飛ばし続ける。

 

 「あんな魔法を使って“マモノ”まで庇うなんて……お前らも……!」

 

 と言いかけた刹那


 パンッ

 

 ベルの剣が目にも留まらぬ速さでカイルの首を一閃した。

 

 「きゃああ!!!」

 

 後ろの少女二人が悲鳴を上げ、戦士は恐らく無駄とは分かっていようがそれでも臨戦態勢を取る。

 

 しかし…

 

 「お……あ? ……え? 俺、今斬られ……」

 

 首を()ねられたはずのカイルは変わらず生きている。

 

 ベルの剣はカイルの首を皮一枚残さない間合いで捉え、間違いなくそこを通過した。

 だがカイルの首には一切の切り傷もなく、首はしっかりと繋がっている。

 

 「斬りましたよ もう“治しました”が」

 

 ベルが一滴の血も(したた)らない剣を(さや)に収めながら一瞥(いちべつ)すると、三度(みたび)一行は硬直する。

 

 「どれだけ(わめ)こうとあなたたちの命は今私たちの掌の上にあります あなたたちも一緒に来なさい 自分が狩ろうとしたゴブリンという種族の()り方を知る義務がある」

 

 「え、この子たちも一緒に……?」

 

 剣を収めたベルだが、その鋭い目つきは一行をしっかりと見据(みす)え威圧する。

 一緒に行くのね……まぁゴブリンに手を出そうとするようなら私たちが止めればいい。


 「もっとも、ここで私たちと別れて……そのロクに立たない足で魔物共から逃げつつ無事森を抜けられる自信があるなら、好きにすればいいですが」

 

 「………」

 

 最早一行に反論の声を上げる者は居ない。

 ベルはそう言うが、さっきの一幕でこの森に闊歩していた魔物は全て殲滅(せんめつ)してしまったので魔物に遭遇するかどうかで言えば今この森は間違いなく安全だ。が、人族一行はやはり索敵要員に難があるのかそれに気付く(よし)もない。

 ベルの凄みは少々やりすぎな気もしなくはないが、まぁ状況がひと段落したので良しとしよう。

 

 「えーっと、ゴブリン 私は君たちの敵じゃない 彼らが君たちに手を出そうとしたら私とベルが止めるから」

 

 「……」

 

 ゴブリンからの返事はない。

 まぁゴブリンからすれば人族同様、人族と同じナリをしていながら魔法は効かないわ桁違いの威力で魔法を放つわ人族の首を刎ねたのに刎ねてないわ(?)得体の知れない何者かの言うことをそうそう鵜呑みにもできまい。

 

 「んん……ベル、“台”出してくれる?」

 

 「はい」

 

 ベルは異空間収納からキューブ状に展開された結界を取り出す。結界の中には稀に琥珀などに虫が姿そのまま固まっているような状態で、(すす)けた人型の亡骸が保定されている。(いさか)いに割って入る前にベルに回収させたものだ。

 それを見た途端、ゴブリンは表情を一変させる。


 「お、ベル凍結魔法(プリザーブ)上手くなったねぇ」

 

 「ウフ……んんっ お褒めにあずかり光栄です」

 

 ベルは一瞬にんまりと(ゆる)んだ表情をすぐに引き締め、結界を解く。

 結界から解放された亡骸は力なく地面に横たえられる。さきほど自らが奪った命の殻を見せ付けられたことに堪えたのか、人族一行は顔をしかめる。

 

 「時間経ってなくてよかった “遡及蘇生(リヴァイヴ)”」

 

 私は煤けたゴブリンの亡骸に向けて蘇生魔法を放った。

 

次回分は明日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ