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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-5 森の掃除5

◆前回のあらすじ


私墓荒らされてたらしい……

 「もしかすると私たちは“魔物”というものを勘違いしていたのかもしれません」

 

 「勘違い?」

 

 魔物そのものの構造についても、魔物が受肉し知性を得て力を増すメカニズムについても、魔力感知で徹底的に観察した。対峙したからこそ当時の魔将共の思想もある程度は分かっているつもりだ。ずっと一緒に旅をしていたベルはそうして得た情報を共有している。その認識に誤りがあるというのか。

 

 「この森の魔物は不自然です 傍に命がありながらそれに見向きもせずただ森に潜むだけ……いえ、この森だけではありません 私が見た範囲では世界中の森や遺跡など、命のあるところには向かわずただ大軍で潜んでいるだけ……そういった拠点をいくつか確認しています」

 

 ベルはどうやら私が感じていたのと同じ違和感を抱き、しかもそのような例が今回だけではないというのを確認しているようだ。

 相対した上で、やはり野良の魔物に知性があるとは到底思えない。というのにその行動指針に統率が取れているように思える。

 ベルの報告は字面だけ取ればより悲観すべき状況ではないと言える。だが一〇〇〇年のブランクを経て私はその状況に何か裏があるように思えてならない。


 「現存する魔物は、何らか理由があって敢えて街や里を襲撃していないような気がします」

 

 「その理由に心当たりは?」

 

 一〇〇〇年前にあれだけ対峙したからこそ、現状の不自然さはやはりどうにも腑に落ちないものがある。

 だが同時に、あれだけあらゆる種族を積極的に滅ぼしにかかっていた魔物がただ待機している現状に理由があるとして、それに皆目検討もつかない。

 森のすぐ傍には人里もある。森には獣種も多数生息している。魔物が狩るその対象が絶滅するほど逼迫(ひっぱく)しているわけでもない。

 

 「すみません、見当も…… ただ目覚めた後旅をする中で知ったのですが、人族以外の種族にとって今現在、魔物はさほど脅威ではないような印象を受けました」

 

 「へぇ」

 

 ということはベルが確認したものに限らず実際に魔物が街を襲撃するような事態が起きておらず、多くの種族にとって魔物は脅威ではないという共通認識が現に持たれているのかもしれない。

 

 「一方で人族にとって魔物は依然脅威であることには変わりないようで」

 

 「人里を襲っていないのに?」

 

 近くに大軍で潜んでいながら、それこそいつ押し寄せるともわからない時限爆弾のようなものでもあるのかもしれないが、現実に人里を襲わないような魔物が脅威なのだろうか。


 「そこでもう一つ悪い知らせなのですが……もう三〇年ほど前になるのですが、私人族の王都で指名手配されてしまいまして」

 

 指名手配……

 ベルが何をしでかしたのか気になるが、それが今ほど来の話と何か関係があるのだろうか?

 

 「罪状は殺人です もちろん私は人を無為に殺したりはしません 私が斬ったのは間違いなく“魔人”でした」

 

 “魔人”というのは、とくに人族や亜人種など人型近い種に受肉した魔物を指す。

 

 「王都で魔人を斬って殺人で指名手配……?」

 

 「そいつだけではありません 今人族の社会には魔人が相当数紛れ込んでいます」

 

 「ちょっと待って……魔物を脅威と思ってる人族の社会に魔人が紛れ込んでる? それも相当数?」

 

 確かに受肉した魔物、特に人族など特定の人型種に受肉した魔人は少なくとも見た目の上では従来の殻と区別するのが困難だ。だが魔力感知に長けた者であればそのドス黒い魔力を嫌でも感知するので、間違いようがない。

 ベルについても、身内贔屓抜きに彼女の感知能は優れている。それに彼女が私に殺人を誤魔化すような嘘を吐くとも思えない。なので今ベルが言ったことは少なくとも彼女が見た真実なのだろう。


 だが状況があまりにも突拍子もなさすぎて理解が追いつかない。

 

 「……そもそも、世界に“偶発的に”発生した魔物が“たまたま”受肉の術を知り得たのでしょうか?」

 

 魔物は元来知性も理性も持たない。奴らは魂を持たない単純な魔力の具現なので、その疑問は当然といえば当然だ。

 触れるだけで生き物の命を奪いうる奴らが何を以って受肉の(すべ)を知るのか、何故受肉するのか。確かに当時よりその謎は(ささや)かれていた。


 「何者か、魔物たちの手を引く者が別にいるのではないかと思うんです」

 

 ベルの表情はいつになく険しい。


 「もしかすると一〇〇〇年前もそうだったのかもしれません 世界の破滅を目論む何者かが邪悪の侵攻を……そして今も、何らかの方法で世界を破滅に導くべく暗躍している 人族社会を内から蝕むこともその一環なのかもしれません」

 

 だがそうだとすると不可解なこともある。人族社会を内から蝕もうとする者が人族にとってのみ魔物を脅威とする理由は何なのか。仮に人族社会に紛れ込んだ魔人が人族に対しそのような刷り込みを行っているのだとすれば、脅威である魔物を人族は積極的に駆逐するのではないのだろうか。わざわざ敵対する構図を作るメリットが分からない。

 また魔物の側にそのような先導者が居るとして、一体誰が手を引いているのか。そしてその誰かを一〇〇〇年前の私たちは見落としていたというのか。

 

 「どちらにしても、もう少し情報を収集しないとね」

 

 「はい」

 

 と、森の出口に近付いてきたところでこの森にいる魔物もあと数匹を残すのみとなったが

 

 「何か小競り合いしてるね?」

 

 「のようですね」

 

 探知魔法に森の出口に近いところで何者か……反応が矮小でわかりづらいが、人族が攻撃魔法を行使している様子が見て取れた。

 だがその標的となっているのはどうやら魔物ではない。

 

 「あっ」

 

 そして追われていた方の二人の内片方がどうやら命尽きたようだ。

 

 「……穏やかじゃないですね」

 

 「魔物はもうあとちょっとだし、先にそっち観に行こうか」


 森の奥部から人里に向けての最短距離とは外れるが、魔法反応があった方へと方向転換する。

 戦闘の理由には関知していないし興味もないが無為な殺生であれば止めるべきだ。それを抜きにしても、魔物が闊歩する森をあのような矮小な魔力の者が迂闊に散策するのは危険だ。

 

 「見えた」

 

 あと数十メートル先、人族の四人組とゴブリンが一人

 

 「ファイアボール!」

 

 人族の魔道師と思しき少女が魔法を放つ。よほど気合を入れて放ったのだろうか、火球はゴブリンのゆうに五倍ほどの直径もある巨大なものだ。たかだかファイアボールに“力みすぎ”だ。このままでは間違いなくゴブリンに直撃するだろう。

 

 「先行くよベル そっちの亡骸お願い」

 

 「承知しました」

 

 加速魔法を展開し、ゴブリンに向かって飛ぶ火球の軌道を塞ぐ位置に瞬時に降り立つ。

 

 「! おい、誰だお前! そこに居ると……!」

 

 人族の誰かが声を上げるが言い終わらないうちに火球は私に直撃し、爆発した。



―――――


[魔法]


ファイアボール(火球)


属性:火-爆


炎属性の初級魔法


標準攻撃力:5~50

消費MP:2~5 / 弾

発動難度:N

属性補正:10% / 50%

指向属性:炸裂

次回分は明日更新予定です。

次回から新話『人族のルール』始まります。

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