1-4 森の掃除4
◆前回のあらすじ
何かこの魔物、挙動おかしない?
「いくつかお知らせすべきことがあります」
ベルは木の根の凹凸で足場が悪いのをものともせず軽快に飛び跳ねながら、木々の間を縫うように飛ぶ私のほんの少し後ろを距離を維持しつつ器用に着いてくる。
「残念ながら悪い知らせしかないのですが……」
悪い知らせかぁ……
「まぁ聞かせてよ」
「まず……“三軸剣”がパクられました」
「えっ」
“トライアクシス”……一〇〇〇年前に私が愛用していた剣で、ミスリル、オリハルコン、ヒヒイロカネという希少な三大魔鉱石でそれぞれ作られた三振りの剣を無理やり一振りに打ち直した特製のものだ。
単体でも並の鉱石の比じゃない頑丈さを誇る魔鉱石を三種存分に用いたので、単純な剣としての強度は他に類を見ない。
だがトライアクシスの強みはその剣の強度ではない。
高純度の魔力に中てられて魔鉱石となった鉱石で打たれた剣は魔力との親和性が高い。つまり武器に魔力を巡らせ魔法を媒介する魔法武器として使用することこそがその真髄であり、トライアクシスはそれを同時に三属性で行える優れものだ。
「アイリの墓石に安置していたのですが、どうやら何者かが墓石を破壊して持ち去ったようで……」
「え、私墓荒らされたの……? まぁいいやそれは あんなの盗んで、使いこなせる人がいるのかなぁ」
魔法武器は一見便利そうではあるが、恒常性はあるが融通の効かない魔法付与武器と違い、その実膨大かつ精密で流動的な魔力操作を要する上級者向けの武器だ。
熟練の魔剣士であるベルでさえミスリルソードを使いこなせるようになるまでにはそれなりの時間と鍛錬を要した。
さらに言えば、魔法武器の限界はせいぜい一属性エンチャントまでとされる。
三属性の魔法、あるいはそれらを複合して使用する複合属性魔法を魔法武器で使用するのは、不可能ではないがその難易度から実戦で用いるのは現実的ではない。少なくともそれが可能な魔導師は一〇〇〇年前の段階で私以外に見たことがない。
つまり私以外の何者がアレを使おうとしたところで、せいぜい『とにかく硬い単一属性魔法剣』くらいにしかならない。
「幸い荒らされたのは墓石だけで、中の結界までは破られていませんでしたが……迂闊でした 申し訳ありません」
なるほど、さっき装束“しか”出てこなかったのも納得だ。
「まぁどうせ今世では不要だと思ってたから……」
思ってはいたが、この魔物の大群を見た後ではそれも悠長な考えかと思えてしまう。
「二つ目は……言わずもがなですが、魔物についてです」
「だよねぇ」
一〇〇〇年前に余すことなく殲滅したはずの魔物がこれだけ蔓延っているというのは異常だ。
「ご覧の通り、空は混沌に覆われていません また私が調べた限りでは、この一〇〇〇年の間にアレ以来世界規模の大戦があったという記録はありません」
「なのにまたこんなに湧いたわけ?」
魔物が出現する要因はすでに判明している。これだけ魔物が存在するということは、その原因となる人々の心の荒みがあるということだろう。
戦争が起こっていないとすれば、一体何が原因なのか……
「つまり世界は、今そんなに平穏ってわけでもないのかぁ……」
あれだけ頑張ったのに、私が馳せた夢は叶わなかったのだろうか。
「それが……うーん 説明が難しくてですね……いかんせん話すことが多すぎて」
ベルは眉間に深く皺を寄せると
「まぁその辺は追々話をするとして、今は“魔物のこと”でちょっと気になることがありまして……」
何やら不穏な含みを持たせて話し始めた。
―――――
[アイテム]
三軸剣
等級規格外武器-魔法剣
固有名称:トライアクシス
所有者:アイリ・トライソル(LOST)
ミスリル、オリハルコン、ヒヒイロカネでそれぞれ打たれた三種の剣を
魔素再構築で一振りの剣として再生成したもの。
単純な剣としての切れ味や硬度、耐久性は一級品。
剣の魔法領域に3つのスロットがあり、それぞれに異なる属性の魔力を込めることで
最大三種の属性魔法およびその複合属性魔法を自由に奮える魔法剣として使用できる。
3スロット全てをいずれか一属性に絞って使用することで威力を増強することも可能。
剣の魔力回路の構築にはアイリの固有魔力が用いられている。
標準機能
・三属性付与
・単一属性増幅付与
・魔法補正
・魔素清浄循環(毒・異物・呪詛無効)(ミスリル由来)
・不壊(オリハルコン由来)
・魔素修復循環(自動治癒、自動補修)(ヒヒイロカネ由来)
次回分は明日更新予定です。




