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2-4 竜狩り

 レヴィの話をまとめるとこうだ。


 強大な戦力を持つ何者かがここ二〇〇年ほどの間に度々竜種を狩りに現れるようになった。特に巨大な身体を持つ海竜(リヴァイアサン)は海中棲息種であるとはいえその特異な存在感から竜狩りにとっては格好の的だ。

 幸いにして事が起こり始めて間もなくしてレヴィが直々に対処に当たるようになっていたため、現に仕留められた海竜はほんの数尾ではある。とはいえ海竜の喪失は数尾であっても大海における被害は甚大な上、それでも敵の侵攻を受け続ける中で海竜が背に築く都市は軒並み壊滅し、そこに住まう種族も大勢命を奪われていった。当然海の秩序は荒れに荒れていった。

 

 と思いきや、つい最近になってそんな海竜を狙う輩はすっかりナリを潜めたらしい。

 レヴィは敵を仕留め損ねたと言っていた。とはいえ度々交戦する中で相手もレヴィの――大海を陣取る水の竜王の強さを痛いほど知っているだろう。それでも懲りずに攻め入ってきた連中が急に大人しくなったとすれば……


 『君が永く寝ていてくれたおかげでこちらもそれなりに駒を揃えられたから、まぁいいとしよう』


 ゴーシュの今際に乗り移った何者かの言葉が思い出される。

 

 そもそも竜種を狩る理由とは何か。

 竜種は主に竜王の莫大な魔力の奔流に中(あ)てられて生まれる、魔力によって身体を成す上位種族の中でも竜王種を除けば頂点に君臨する強力な種族だ。その魔力量は他の生物の比ではなく、またそんな強力な魔力によって形作られた身体は強靭だ。

 そんな竜種を外(・)側(・)か(・)ら(・)屠るにはその強靭な身体を破壊した上で魂である固有魔素とそれに連なる魔素形状からなる核を破壊しなければならない。

 だがよりにもよってそれが困難な海竜を付け狙って殺そうとするだろうか?よほどの戦闘狂であればそれも考えられるが、敵の目的がもし海竜をただ殺すことではないとしたら……


 魔物の邪悪な魔力に侵されかけていた沼竜(バジリスク) サウリオスの姿を思い出す。

 沼竜は魔物の邪悪な魔力と馴染みやすい闇属性の魔力を持つため身体を侵されやすい一方で、魔物かあるいは邪悪な魔力を持つ何者かによって致命的なダメージを与えられる恐れは他の竜種に比べて少ない。

 サウリオスとの邂逅で私が抱いた印象は“闇の魔力を持つから沼竜が魔物に狙われた”のだろうというものだったが、もし“沼竜”だからあの状態で拮抗していたのだとすれば……


 「屠られた海竜がその後どうなったか、レヴィは分かる?」

 

 レヴィは首を横に振った。


 「やられちゃった子たちはみんなデカい奴に呑まれちゃったから……」

 

 「呑まれた!!?」

 

 これには私もベルも声を揃えて驚いた。

 巨体とは言っていたが、ただでさえ膨大な質量を持つ海竜を呑むようなものとは思いもよらなかった。

 ……いや、だがそのような何かが現状恐らく海の中だけで暴威を振るっているのであればまだマシな状況とも取れる。もし海竜を呑むような恐ろしい生物が陸に揚がってしまえば当然他のあらゆる種族はひとたまりも無い。現にそうなっているのであればそのような怪物の噂を地上で聞き及ばないとは考えにくい。


 しかし相手は海の秩序を構成する海竜を狙って狩るような輩だ。いずれにしても捨て置ける相手ではない。

 恐らく敵の陣地となっている大洋の墓標ではその怪物も相手取ることになるだろう。まだ本調子ではない今の私でもその気になれば海竜に有効な攻撃を与えられるが、相手の底が知れない以上できる限り状態を万全に近づけた上で挑みたい。


 しかしその怪物も海竜を呑み込んでどうしようというのか。

 海竜もその膨大な身体を水の魔力で構成しているため、それを取(・)り(・)込(・)め(・)る(・)の(・)で(・)あ(・)れ(・)ば(・)その質量分膨大な食料となり得る。だがただ食事を摂りたいのであれば海竜を屠る手間を負ってまで捕食するのは効率的な手法とは思えない。

 食べたのか、或いは後(・)を(・)追(・)え(・)な(・)い(・)よ(・)う(・)な(・)形(・)で(・)捕(・)ら(・)え(・)た(・)のか。

 できるなら後者ではあってほしくない。だが現状見たあらゆる要因が恐らく後者であろう推測を後押しする。

 

 「……もしかすると敵は、竜種を殻として収集したいのかもしれませんね」

 

 「私もそうかなって思った」


 ベルの推論にレヴィは唇を強く噛み締めながらも頷いた。

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