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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-3 森の掃除3

◆前回のあらすじ


何で1000年前に滅ぼしたはずの魔物がこんな蔓延ってるんや?ゴキブリか?

 森を移動し始めて一〇分ほど経っただろうか。

 ちょうど一帯の中腹ぐらいに差し掛かったところだが、探知に触れた森の魔物の八割ほどは既に掃討している。

 

 張り切って光弾をバラバラと飛ばしまくったおかげで、遠方から迫っていた魔物の方が思いがけずさっさと片付いてしまった。ついでにまだ本調子とはほど遠いが、魔力感知と魔法行使のリハビリもできた。

 討ち漏らさないよう常時森全体に展開している感知魔法で見渡す限り、先ほどまでのドロドロに淀んだ魔力の(うごめ)きは順調に森本来の澄んだ空気に戻りつつある。

 元々気を張るほどの掃討戦でもないが、今では詠唱も適当に世間話をしながらのぬるい掃討に移行している。


 「ベルの言ってた話すことって、この魔物のこと?」


 「……も、あります」

 

 一方のベルは張り切って振るっていた剣と気持ちが空回りしたことに拗ねているのかすでに剣は収めてしまい、これみよがしにブーたれた顔をしている。

 

 「ん~……なんかなぁ あのとき倒しきったんだと思ってたけど……討ち漏らしたかなぁ?」

 

 「それはありえませんね」

 

 ベルは私の懸念を食い気味に否定する。

 

 「アイリが逝った後、私たちも方々散って余すところなく残党を調査しました 少なくとも“地上”において、討ち漏らしはありえません」

 

 私たちは一〇〇〇年前、今この森で行っている掃討をちょうど世界規模に拡大したようなことをやってのけた。

 だがそれだけを以って魔物の根本的な殲滅が完了したと思っていたわけではない。


 一〇〇〇年前に世界を荒らし尽くそうと画策(かくさく)したのは今こうして蔓延(はびこ)っている理性も知性もない野良の雑魚ではない。

 魔物は通常知性を持たないが、稀に肉体を持つ何者かの(からだ)を奪い受肉することで知性に加え殻の持ち主の記憶や魔力、性質まで我が物にする者が現れる。世界を壊滅寸前にまで追い込んだ魔物の軍勢を率いていたのは、そうしてより強力な個体の殻に受肉し個として最強種族の一角である竜種を(ほふ)るほどの力を持っていた魔将たちだ。

 そしてその強力な魔将たちの頂点にあったのが、人族の勇者に受肉したシグルドという個体だった。

 

 世界が戦乱の世へと傾いていったのは人族による他種族の侵略に(たん)(ほっ)する。

 だが世界が(すさ)みゆく中で偶発的に発生した魔物たちは、人族であろうとそれ以外であろうと種族を問わず人々の命を奪っていき、世界を破滅の一歩手前まで追い込んだ。

 魔物は人族にとってもその他の種族にとっても共通する恐怖の象徴だった。 


 魔物が発生する直接的な原因は世が荒れ人々の心が荒むことだ。

 魔物の多くは知性はないながらもそれを加速させるべく街や里など命の多く存在する拠点を積極的に襲撃する習性があったように思う。後に生まれた受肉によって知性を持つに至った魔物たちもそのように動いていた。

 手っ取り早く世界を平定するのにまず魔物そのものの殲滅(せんめつ)は不可欠だった。そして私たちは魔物を滅ぼし、強力な魔将を討伐し、最後にシグルドを討つことでそれを成し遂げた。


 ではそれで魔物が再び生まれることまで阻止できるかというと、一〇〇〇年前の段階ではその確実な保証まではなかった。

 混沌が空を覆うより前から大規模ではなくても人々の間で少なからず争いはあったはずで、それ以外でも普通に暮らす中で人々が恐怖や怒り、不安を覚えることは当然にあったはずだ。

 しかし、それでも上辺では平和な世界において魔物が発生したという記録は存在しない。つまり魔物が発生するにはあのような戦乱が世界規模で起こるといったトリガーを要するものだと思われた。

 人々は争いの世で痛みを知り、世界に破滅をもたらす魔物の生まれる原因を知った。その上で人族にしろそれ以外の種族にしろ、まだ争おうという者がいるのだろうか。

 人族は欲目をかいたが決して知能の低い種族ではない。むしろその多くは理性的で論理的な考え方のできる賢い種族だ。だからこそ潜在的には強くない個の集団であっても大きな文明を築くに至ったのだ。そうして築いた文明を再び魔物の侵略によって滅ぼしかねないリスクを負ってまで、他種族の侵略などと(おろ)かな真似はしないだろう。

 

 では今こうして森を(うごめ)いていた無数の魔物たちは何だ。

 昔と違い空を混沌が覆っているわけでもない。今ここにいては世界情勢までは分からないが、空だけ見た感じでは昔ほど世界が荒んでいる風には思えない。というのに、少なくともこの森においては昔と比べて遜色(そんしょく)ない規模で魔物が発生している。


 不自然なのは魔物が単に“存在する”ということだけではない。

 森から比較的近くには小規模とは言え人里がある。それをそのままに、さらに言えば森に生息する多くの獣種すらも、これだけの数の魔物がいながらそれらの命には見向きもせずにただ森を闊歩(かっぽ)していた。

 今(ほうむ)ってきた魔物たちは私が一〇〇〇年前に嫌というほど葬ってきたそれと、その風貌から構造から何ら相違ない。

 ただその行動指針だけが明らかに違っていた。




―――――


[エリア]


固有名称:なし


西洋域ディアンの森を囲う山の麓の一角。


森の最奥部から森を抜けるまでの直線距離は、人の徒歩速度では8時間ほど

次回分は週明け月曜日に更新予定です。

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