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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
109/116

1-番外1 黒と白

 『アルボスティアはダメだったねぇ』

 

 大陸が囲む世界最大の海“中央大洋”。その真ん中にあるサンクトゥス諸島海域、この星で唯一地盤が沈んでいく星の地表の終着点にある大洋の墓標で少女は寛いでいた。

 

 「アルボスティア如き新興集落、端から期待もしていなかっただろう」

 

 「あそこはハウメアを潰すのに絶好の拠点だと思ったんだがなぁ……それに沼竜(バジリスク)も手に入らず仕舞いか」

 

 と、側近が末端のしくじりについてあーだこーだと言葉を交わしている。


 「どうせ……あの程度の街から生まれるような竜は粗悪品にしかならない……」

 

 「お? つい最近海竜(リヴァイアサン)を狩り損ねた奴が言うじゃねぇか」

 

 「煽るなファブニール 向こうにはミズチが居た どの道俺たち単体ではまだ分が悪い」


 パンッ

 

 が、少女が一度手を叩くとそれまで騒いでいた面々が一斉に黙る。

 

 『いいよ 海でミズチを相手取れば厳しい戦いにもなるさ それにハウメアも……奴を落とすのは骨が折れる そっちはどの道後回しにする予定だった』

 

 少女は立ち上がると、そこに控える腹心たちを一瞥して満足そうに頷く。


 それぞれが今は人型種の姿を取ってはいるが、全員が既に()()に成功し、各個で並の竜種なら容易く屠れるほどの力をつけた珠玉の猛者たちだ。

 

 『これから私たちはこの星を獲る 万全とまではいかなかったけど、十分な戦力も培うことができた あとは……君たちの望み通り、楽しみながら邁進しよう』


 アイリ・トライソル……

 出会ってから千と数百年。別れ際の身を裂くような天上の苦痛は今でも明瞭に思い出せる。


 待ち遠しかった。

 ずっと恋焦がれていた。

 私の対であり半分。


 今度こそその力を手に入れて、存分に振るう。


 少女は遠い地の片割れを思い緩む頬を抑えられない。


 『早く会いたいなぁ……』


………


 「えっくし」


 「珍しいですね」


 気が緩んでいただろうか?そういえばこの生では初めてくしゃみをした気がする。


 「誰かが噂でもしたかなぁ」

 

 「アルボスティアじゃないですか? 派手にやりましたからね」


 アルボスティアを発ったその晩。

 ベルと私のお礼参りも兼ねて一先ずの行き先を極寒の北洋域にあるカヌス島に定め、私達は北方に向かって飛びながら時折魔物の反応を見つけては狩り、今しがた掃討を終えた小さな森で暖を取っていた。

 

 「それはともかく、想像以上に強力な敵が向こうにはいるようですね」

 

 「んん……ちょっと頑張らなきゃなぁ」

 

 「そうですね、平和の……いえ、私たちが平和な世を悠々旅するためにも……」

 

 「別にそんなエゴな感じに言い直さなくていいじゃん」


 言うとベルはくすくすと笑う。

 

 「ベル、ガルムにはもう会ったの?」


 「いえ……実は目覚めてから一度カヌスには行ってみたのですが、そのときは不在にしていたようで」

 

 ガルムとはこの世に八柱存在する竜王の一人で、ベルに加護を授けた竜王だ。

 

 「珍しいよね、ガルムが島に居ないなんて」

 

 ガルムは気候の一端を司る竜王であり、環境へ及ぼす影響の大きさから通常自身の縄張りであるカヌス島から出ることは少ない。異常事態というほどのこととも思えないが、その理由は気になる。

 

 一〇〇〇年前に滅ぼしたはずの魔物が蔓延る現代は異常にも思えたが、一方で竜王ディアンの飄々とした様子からは何ら世界が危機に瀕しているような印象は受けなかった。……いや、それは()()ディアンだからかなぁ。本当のところはどうなんだろう。


 「まぁ、居たら色々話聞いておきたいね」

 

 「そうですね」

 

 気がかりなことは色々ある。だが目下気がかりなのはレヴィが自身の領域としているはずのサンクトゥス諸島海域 大洋の墓標がどうなっているのかだ。

 レヴィ自身を喚ぶのにそこまでの困難は伴わないが、安易に連絡を取っていいものか、そもそも連絡が取れる状況に居るのか分からない。

 ディアンなら角があるので手頃ではあるが、彼女は世話焼きな一方肝心なことをすかすところがあるので、頼る場面は選ばなければならない。

 となれば、どちらにしても今居る地点から最も近くに拠点を持つガルムの下を訪ね、話を聞くのがどちらにしても合理的だろう。


 「“防寒”しっかりしていかないとね」

 

 「そうですね」

 

 澄んだ星空を見上げながら今世での波乱の旅に思いを馳せるのだった。

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