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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-95 聖堂の地下2

◆前回のあらすじ


ベルが地上の魔族を一掃し、アイリの下へ

リーナはゴーシュに導かれやってきた聖堂の地下で変わり果てた同志と対峙することに

 ゴーシュの一言で、それまでただ無心に立っていただけの魔族となった同志たちが一斉にリーナに向かって押し寄せる。

 武器は持っていない丸腰の人間だ。だがその怨嗟を剥き出しにした邪悪な敵意はひしひしとリーナへ圧をかける。

 

 ほんの数日前のリーナであれば腰を抜かして相手のされるがままになっていただろう。

 だが今のリーナは違う。


 「“閃光(フラッシュ)”!」

 

 押し寄せる同志だった者たちに向かって、強烈な閃光を浴びせる。


 「あぁあああああああああああああああああああ!!!」

 

 光を浴びせられた者はそれが人間の身体から発せられるとは思えないようなおぞましい断末魔を上げて苦しみ始める。

 しかし効果は覿面ではあるが、心を完全に邪悪な魔力に飲まれた子供たちを解き放つには、リーナの魔法ではまだ弱い。


 (もっと強く 鋭く 的確に……!)


 森で絶え間なく押し寄せる魔物を相手取った時を思い出し、リーナは第二波の魔力を練る。


 「“光斬(ホーリー・スラッシュ)”!!」


 三日月状に成型した光の斬撃で迫り来る子どもたちを一斉に薙ぐ。


 光の斬撃が押し寄せる子どもたちを通過すると、前線のいくらかは糸が切れたようにその場に倒れていく。だが数十数百と後ろに控える全てには到底届かない。


 「……見事な魔法だ だが」


 と、いつの間にかリーナの背後に迫っていたゴーシュがリーナの眼前に手をかざす。

 

 「出る杭は打たれるものだ…… “発火炎(フレアレイズ)”」


 ゴォオオオオ


 ゴーシュの放った火炎はリーナを丸ごと覆い容赦なく焼き始めた、が


 「“光斬(ホーリー・スラッシュ)”!!!」


 「!!?」

 

 そんな燃え盛るリーナが再度放った光の斬撃を完全に意表を突かれながらもゴーシュはかわす。が、直撃こそしなかったもののその一撃はゴーシュの左腕をかすめた。


 「……貴様」


 ゴーシュはリーナを包む火炎がその中にいるリーナに一切届いていないのにようやく気付いた。 

 だが狼狽えたのは一瞬、次の瞬間には背に下げていた大剣を抜きリーナめがけて一閃するが

 

 バキン

 

 リーナを守る障壁はそれを通さず、剣の刃は容易く砕け散った。

 リーナはアイリの加護が自身を守ってくれることを信じてはいた。それでも自分が信じていた……信じたかった教官から唐突に向けられた殺意に体を強張らせる。

 

 「……リーナ、貴様その魔法は何だ」

 

 「教官……何故ですか」

 

 殺意を向けられてなお、リーナは教官にその真意を問う。


 「今私が貴様に問うている 何だそれは」

 

 「教官!!」

 

 リーナはあくまでゴーシュの問いには答えない。疑念と僅かな疑念の狭間にあって、それでも彼女は必死に勇気を振り絞って自分なりの正義を通そうとしていた。

 幼くか弱い少女ではあるが、聖女として信念を持って修練を積んできたリーナはせめて心くらいは強く持つことで戦線に身を置く自身を鼓舞しようとしていた。

 一方ゴーシュはリーナとの会話はもはや平行線になると踏んだのだろう。問いかけることもせずリーナに向けて重ねて攻撃魔法の魔法陣を展開した。

 

 「“黒炎弾(イビルフレア)”」

 

 ただの炎属性の魔法ではない。魔物の持つ邪悪な魔力を纏った巨大な火炎弾がリーナめがけて放たれる。リーナの身長のゆうに倍はある濃密に押し込められた黒い火炎弾はその場を動かないリーナとそれに迫る魔族と化した子どもたちへ迫ると

 

 ボゴォン

 

 リーナに直撃した途端、後ろの子どもたちすら巻き込んで容赦なく炸裂した。


 ゴーシュにしてみれば、本来このような格下相手に使う物ではないレベルの魔法を使ったのだから今度こそ息の根を止めただろうと得意げな顔をするが

 

 「……!? どういうことだ!」

 

 焼け焦げて無残な姿になった子どもたちの中に一人、加護によって無傷のままそこに立っているリーナを見つけて驚愕した。


 効かないと分かってはいても、信頼していた教官から強力な攻撃魔法を放たれたこと。そして子どもたちにも容赦なく炸裂させておきながら平気で佇んでいるその非情さはリーナの心を深く傷付けた。

 また、火炎弾が迫る恐怖は相当堪え、気丈に立ってはいるがその両脚は今にも立っていられなくなりそうなほどガクガクと震えている。


 (……全く、教官が聞いて呆れる)


 今のリーナであればあの程度の魔法は避けられたはずだ。だがそうせず、火炎弾が直撃するまでそこを動かなかった。きっとその刹那まで心のどこかで教官を信じようとしていたのだろう。

 ……そして同時にリーナは私のことも信じてくれた。

 あんなに心が真っ直ぐな少女を容赦なく手にかけようとしたゴーシュには怒りが湧くが、それはさておきこの惨状だ。

 アルボスティアを牧場などと言ってこんなにも尊い子どもたちの命を生贄に……これが本当に人族の考えることだろうか?この街に仕込んであった術式にしても、アルボスティアにいる人族が本来扱えるような代物ではない。そして意志を保ったまま魔人化している者が相当数確認されている。何者かの入れ知恵があったと見て間違いないだろう。

 

 ……ともかく、あんな雑な炸裂魔法で人一人跡形もなく吹き飛ばしたとでも思ったのだろうか。ウルハが最初に使っていた火球同様、魔力の練りが甘い上に下手クソだ。

 物知らぬ少女と見くびっていたリーナが自身の初弾を凌いでみせた驚きで練りが乱れたとしても、教官を名乗っておいてこの程度とは高が知れる。……今や教官と名乗れるほど出来た人族にも見えないが。

 まぁそもそも、その場に二人だけでなく隠匿結界を纏った他の面々がいることにすら気付いていないようだからお話にもならないが。

 

 「……さ、これでハッキリわかったよね この場で誰が間違ってるか」

 

 隠匿結界を解き現れた私とウルハを見て、ゴーシュの表情はさらに驚愕に染まる。

 

 「教官 ……いえ、ゴーシュ 見損ないました あなたはもう私たちの教官じゃない!」

 

 ウルハは自身の分身が容赦なく殴り倒されたことへの怒りもあるだろうが、ゴーシュを見る目はまるで汚い虫でも見ているかのような目つきだ。

 

 「ウルハ、一発やっちゃえば?」

 

 と、未だ燃え盛る炎を障壁越しに纏っているリーナが告げると

 

 「やっちゃう ……もう 腹立った!! “雷槍撃(サンダー・ジャベリン)”!!!」


 ウルハは混乱して動けずにいるゴーシュに向けて渾身の雷撃魔法を放った。


次回分は明日更新予定です。

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