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忌み子、のんびりパワフル世界救済(1000年ぶり2回目)  作者: 憩葱助
第一章:アルボスティアの少年少女
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1-93 エド VS バモス2

◆前回のあらすじ


バモスとエドの戦闘はエドの優位に進み…?

 バモスは自身の驕りを恥じていた。

 

 この力を得たとき、同志は皆人間の国を守るためにそれを振るうと目を輝かせていた。

 それが蓋を開けてみればどうだ。人外の力を得た同志たちは皆力に溺れ、おかしくなっていった。

 

 人間を守るために振るおうという力で、道を違えた人間を手にかけてきた。そんな同志たちを内心軽蔑していた。

 

 だが今自分がしていること、これからしようとしていることはそれと同じだ。

 忌むべきことだ。やめるべきだ。心でそう思ってはいるが、力を振るおうというこの衝動が抑えられない。

 

 結局俺も力に溺れていた。驕っていた。

 

 だが今この目の前にいる少年。年は自分より一回りも二回りも下だろうが、底知れぬ力と可能性を感じさせるこの少年。今まで見てきた中でも指折りの強者。

 

 この少年を倒したい。

 

 そしてそんな力に振り回される俺を、あわよくばこいつに……


 「“雷鎚拳(トール・ハンマー)”」


 雷撃の威力を一点に集中させ鎚とするそれは、今のバモスが扱える中では最も強力な攻撃手段だ。本来ならばこんな街中で使うべきものではない。だがこの後この街で起きることを考えれば……そしてそれを容認していた俺が今更どの口でそれを自戒できる。

 

 バモスはエドに向かって全速力で駆け


 「ガァアアアアアア!!!!」

 

 バチバチと雷の唸る拳をエドに叩き付ける。

 

 魔人化することで獲得したバモスの超人的な膂力に雷の威力が上乗せされ、その拳は地盤ごとエドを打ち砕き、激しく砂埃が舞った。


………


 「……ふぅ はぁ ……まだまだ弱いな俺は」


 数瞬後、そこに立っていたのはエドだった。

 

 バモスの渾身の一撃は確かにエドを捉えた。……はずだった。


 捉えたとして結局アイリの加護によってその攻撃は弾かれどちらにしてもバモスは自滅していたところではあるが、その攻撃は加護による障壁に届くことすらなかった。

 

 沼竜(バジリスク) サウリオスがエドたちに施した加護とも呼べないほどの力の片鱗、迷属性魔法“沼渡り”によって、エドは直撃する刹那その場から逃れていた。

 迷いと恐怖に立ち向かい前を向いたエドと、土壇場で迷い狙いを定め損ねたバモスの間に生じた歪みに反応し、意図せずして発動した格好になる。そしてこの顛末が戦局に決着をつけることになった。

 エドが醸した沼竜の魔力の片鱗は迷いに嵌まったバモスをその術中に容易に引き摺り込み、バモスは最早自身の渾身の一撃を当て損ねたことにすら気付いていなかった。


 一方のエドは自身に起きた予期せぬ動きに戸惑いこそせど、その沼に沈み込むような感覚に覚えがあったおかげで次の一手が早かった。

 かわせたとはいえバモスの一撃は地盤を大きく抉るとんでもない威力のものだ。アレを街中で連発されてはアルボスティアの街も市民もひとたまりもない。


 決着をつける。ただの当てずっぽうな打撃ではなく、自身の持てる力を可能な限り活用して……

 そう考えた矢先、エドはバモスが打ち砕いた地盤の破片に気が付いた。


 “その場その場の戦闘に必要な鎧を臨機応変に形作ることができる”


 アイリの一言と、森で魔物たちを掃討したときのことを思い出す。

 あのときは土だった。あの場には木も岩もあった。豊潤に素材のあったあの場は今にして思えば恵まれていたのかもしれない。街中にいるからと放念していたのもあるが、この砕けた岩片を見るまで発想が湧かなかった自身の詰めの甘さを恥じる間も今はもったいない。

 

 エドは自身の拳に纏う魔力を砕け散った岩片に通わせ、巨大な岩の拳を形作る。

 通常ならば到底持ち上げられないようなものだが、身体魔力の操作と纏殻による感覚の拡張により、今はその巨大な岩の鎧が自身の身体のごとく扱える。


 「おぉおおおおお!!!!」


 エドの雄叫びと迫る巨大な岩の塊に、バモスはようやく自身の窮地に気付く。

 すぐさま受身の体勢をとるが、拳撃の勢いで迫るそれを万全に受けるには遅すぎた。

 

 ドゴォン!!!


 魔人化していたとはいえ濃厚に魔力を押し込めた岩の纏殻による一撃を一身に受けたバモスは、それ以上立ち上がることは叶わなかった。

 

 エドは巨岩の下敷きになって動かないバモスを一瞥すると、軽快に遠ざかっていったベルの方へと走り出す。

 

 結果的にはバモスを倒すことが出来たが、自分の力だけでは到底敵う相手ではなかった。まだまだ精進が必要だ。

 エドはその勝利に驕らず進む道を迷いなく歩き始めた。


………


 片やベルはというと、逃げた小剣使いを付かず離れずの距離感でのんびりと追いかけていた。


 そして小剣使いの呼びかけに応じ時折ひっかけるように敵の魔人がひょっこりと顔を出すのを怪しまれない程度に斬っては凍らせ、今は何故か五人ほどの魔人をベルの側がゆっくりと追いかけながら折衝するというよく分からない戦闘を繰り広げている。


 (戦闘と言えるものかも疑問ですけどね……)


 内心でため息を吐きながらも、今は相手に尻尾を出させることが最優先だ。


 そんなベルの思惑など知る由もない魔人は、何やら先ほどから一人二人と散っては街の一定の地点を陣取って自身の魔力を高め始めている様子だ。

 徹頭徹尾舐められている。それか井の中の蛙が、自身の滑稽な立ち振る舞いを理解できていない。まさしく「今から大魔法を使いますよ」と敵に言ってしまっているようなものだ。

 まぁ使われたところでこの街に現存する魔人程度が何人集って行使する魔法であろうとどうせ痛くも痒くもない。その昔()()()()()()()()時を思えば蟻が必死にもがくのをのんびり眺めているような気分だ。


 と、そう思いながら追いかけていたが、小剣使いは唐突に足を止めてこちらを向き直った。

 

 「女……お前は強いが、その強さが仇となったな 俺たち個々では敵わないが、お前が如何に強かろうと一人では太刀打ちできまい」


 小物の常套句のような小言をよくもまぁ恥ずかしげもなく吐けるものだとベルは感心しながら欠伸が出そうになる。が、あと数瞬の辛抱だ。


 「恐れ戦け ……“邪贄の坩堝(カース・ディザスター)”」

次回分は明日更新予定です。

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