無知と未知
...。
森の中。昔秘密基地にしていた、車の中。
隣には幼馴染の未来と啓介
そして僕、太賢。
練炭自殺。
なにか現実味のない言葉だ。
それを実行している今でさえ、現実味がない。
僕は、車の中にギュウギュウに詰まった
みんなの体を見て、大きく成長したな。
と感動したと共に、これ以上もう成長することはないんだなと悲しくなる。
僕は、死にたくはないけれど
この2人がそれを望むなら僕も死ぬ。
2人がいなくなったらきっと僕は死にたくなるから、僕も死ぬ。
……。
なんなのこれ。こんなの知らない。
想像していたのと違う。
苦しい。のに体が動かない。
助けて。死にたくない。死にたいない。
助けて、啓介、太賢。
………。
そういえば、今思い出したなぁ。
ドラマの中の情報だったから、いまいち信じないままでいたけど、練炭自殺って意識はあるのに体が動かなくて苦しいって。
あぁ、ごめん。また僕のせいだ。
もっと他にいい死に方を探していれば。
また僕のせいで2人に迷惑がかかる。
ごめん。未来。太賢。
……………
リンゴーーーーン
リンゴーーーーン
リンゴーーーーン
…
ハッッッ
三人同時だった。
さっきまで動かなかった体が一斉に動いた。
みんなの顔は死ぬことの恐怖に満ちていた。
生きている。安堵した。
しかし何かおかしい。
僕らが目を覚ました音。鈍く、今にも崩れ落ちそうな鐘の音。
この森の周りに教会なんてなかった。
いやそれ以前の問題だ。
僕たちは、早朝に練炭自殺を図った。
そして今は夜のようだ。
時間軸がおかしい。
いやもはやそんなことはどうでもいい。
暗い。暗すぎる。
しかも不気味な暗さだ。
建物や木の線だけが、白く象ってわかる。
いや、なぜ目前に建物があるんだ?
ここは森の中のはず。
……!!!!!!!!
次の瞬間僕は後方へ転がり込んだ。
いや、吹っ飛ばされた。
なにか、今までに経験したことのないような衝撃が腹部を走った。
幼少の頃、インフルエンザで嘔吐した以来に僕は吐いた。
ギュゥゥっと圧迫された感じで、いつまでも苦しいようだった。
このまま気絶でもできればよかったんだろう。
この時顔を上げた瞬間から
僕の『世界』は変わった。
…。