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告白? 断ったに決まってるじゃない

 夕方、珍しく茜が気だるそうに帰って来た。

「お兄ちゃん、ちょっとお兄ちゃんエナジーを補給させて」

「なんだそれ? それより元気がなさそうだがなんかあったのか?」

 茜は基本的に俺に会うとすぐに笑顔に切り替える。何が嬉しいのかは知らないがそれはいい。今日は様子が違うようで、無理やり笑顔っぽい表情をしようとして失敗している。

「うーんとね、告白されたんだ」

「告白!? えーとそれはおつきあいしましょう的なあれか?」

「そう、速お断りしたんだけどね、クラスの友達が『もったいないよ! 考え直そう!』ってしつこくって」

「断ったのか」

「そりゃそうだよ、お兄ちゃんがいるのになんで付き合わなくちゃいけないの? 兄妹二人の時間削ってまで興味のない人と付き合いたくないもん」

 心のどこかでホッとしている自分がいることが少々嫌になった。ここは妹の幸せを願うべきなのだろうが、どうしても断ったと言う事実にホッとした俺自身が許せない。

「あれ? お兄ちゃん、もしかして妬いてる?」

「ばばば馬鹿言うな!!!? ちょっと勿体無いんじゃないかって思っただけだよ」

 すると茜がいつもの笑顔に戻って嬉しそうにする。

「ふーん、お兄ちゃんが妬いてくれるんなら時々報告するのもありだね、うん!」

「勘弁してくれ……」

 茜は嬉しそうに言っている、どうやらからかわれているようだ。

「お兄ちゃんは告白とかされてないよね? されたことないよね?」

「確かに無いよ。もうちょっと聞きかた考えろよ、傷つくだろ」

 妹に面と向かってモテないと言われるとちょっと凹む。いやまあ事実なんだけどさ。

「昔っからモテるもんなあ、茜は」

「一番好きな人は告白してくれないんだよねー」

「世の中そんなもんだぞ」

欲しいものほど手に入らない、昔っからそう言うもんだ。

「わかってないなー、お兄ちゃんは」

 諭すように言ってくる。わかんないってことにしておこう、分かったら色々問題がありそうな気がする。俺のお兄ちゃんの勘がそう言ってる。

「妹が嫌いな兄はいないんだよ、色々グレーにしておいたほうがいい事って多いだろう」

「お兄ちゃんって分かった上で知らないふりする事多いよね、でもいいよ、私はどんなことでもお兄ちゃんなら受け止めてみせるよ」

 お互い事情はわかってるんだろう。茜は重いことを軽く言って軽いことを重くいう事が多い。天邪鬼なんだよな。

「なあ、お前はなんでブラコンなんだ? 友達に同じような子がいるのか?」

「みーんなお兄ちゃんやお父さんは嫌いって言ってるよ、私がお兄ちゃん大好きって言ったら信じられないような顔をするかな」

「お兄ちゃんを好きな理由かー……本能じゃダメ?」

「本能っておま……もうちょい理由考えろよ」

「誰かを愛するのに理由はいらないでしょ?」

「愛するって……そうか! 家族愛だよな! だろ!」

「さあ? どっちだろうね」

 茜はクスクスと笑いながら言う。本心っぽくてドキドキする。

「ふふふ、お兄ちゃんの困ってる姿もそれはそれでアリだね」

完璧に妹の手玉に取られている。逆転の手はないか?

「兄をからかう妹は嫌いだぞ」

「まって!? お兄ちゃん冷静に! 冷静になろう! 私はからかってないよ! 愛情表現だよ!」

 すごい動揺してる。ちょっと嫌いって言っただけじゃないか。そう言えば兄妹げんかでもそう言うこと言った事なかったな、だからだろうか。

「ま、まあ反省する妹は好きだぞ」

「そうだよね! 私のこと大好きなんでしょ! 愛してるんでしょ!」

 1を言うと100くらいに飛躍して返事が返ってくるな……確かに嫌いじゃないぞ、嫌いじゃない。

「愛してるとまでは言ってないぞ」

「家族愛でもいいよー! それとも本当に何にもないの……だったら私の魅力をわかってほしいなあ」

 目がすわってる……めっちゃ怖いんだが。目からハイライト消えてるんですけど。

「か、家族としては愛してるぞ」

「そっかー、お兄ちゃんは私を愛してくれてるんだね! 将来にわたってよろしくしてくれるんだね!」

 将来の約束までさせてくるぞ……兄妹愛ってなんだったっけな? 顔を赤くして言うもんだからこっちまで超恥ずかしい。

「将来は置いといて妹としては好きだから安心しろ」

「うんうん、わかってるよー、私も大好きだからね!」

そう言うと機嫌よく浴室へと歩いていった。

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