あやしいプレゼント
今日はついてないな。雨に降られてしまった。服からカバンから全部びしょ濡れだ。
家に着くと茜が迎えてくれた。
「おかえり! 今日は災難だったね」
「全くだよ、スマホばっか見てテレビ見ないから天気予報まで見なくなってたな、今度からは天気予報くらいは見るかな」
「ところでお兄ちゃん、カバン、濡れちゃってるね」
そう言えばこのカバンは茜が大学に入るときにプレゼントしてくれたものだった。
「悪いな、せっかくもらったカバンなのに」
「ううん、それは全然いいんだ。でもお兄ちゃんには私のあげたカバンを使って欲しいから新しいの持ってくるね」
「いや、乾かせば使えるんじゃ……」
「ちょっとね……色々壊れちゃってるし、ちゃんと防水GPS入れとくんだった……」
「ん? GPS?」
「なんでもないよ! はい! 新しいカバン!」
「ああ、ありがとうな」
新しいカバンは今使ってたやつとデザインは全く一緒だった。
「大事に使ってね、上に座ったり、ショックを与えたりしないでね。あと静電気にも気をつけて」
「静電気まで気にするのか!?」
「そりゃマイクもGPSも精密機械だし……」
「一体何がこのカバンに入ってるんだよ!?」
「き、気にしちゃダメ! 細かい男は嫌われるよ!」
そう言えば外出にもこのカバン使えって言ってたけど、このカバン持って外に出るとやたら茜と遭遇するんだが気のせいだろうか?
「そ、そうか……ところでお礼に何かプレゼント、いるか?」
「え!?!? お兄ちゃんがくれるの! 本当にいいの?」
「ああ、世話になりっぱなしっていうのもなんだしな、たまには兄らしいことがしたいんだ」
「じゃ、じゃあ薬指に指輪とか……」
「あんま高いもんは無しな」
「チッ、ゲホゲホ、じゃあお兄ちゃんが毎日使ってるものをちょうだい」
「日用品が欲しいのか? じゃあ今度の休みに買いに行くか」
「違うよ! 今使ってるものが欲しいの!」
毎日使うようなものをあげると俺が困るんだが。
「大丈夫、ちゃんと同じもの買ったげるから」
俺の考えを見透かしたようにいう。
「でもそれじゃプレゼントにならないんじゃ……」
「お兄ちゃんグッズならなんでもプライスレスだよ!」
断言するなあ、時々怖いよ、茜は……
「うーん、毎日使ってるものかあ、何がいいかな?」
「迷うんだったら服とかがいいかな」
「もらってどうする気だよ!? 一番使い道ないだろ?!」
「乙女の秘密ってやつだよ、おにーちゃん!」
そういうものだろうか?
それならあれでいいのだろうか。
「じゃあ高校時代のジャージでもいいのか、部屋着くらいにはなるだろ」
冗談半分でいう。
「ホントに! いいの!? やったやったー」
めっちゃ嬉しそう、部屋着無いんかこいつ?
俺は押入れの奥にしまってあったジャージを取り出す、洗濯してしまってあるから洗濯はいいな。ちょっと防虫剤の匂いがした。
「ほれ、ホントにこんなもんでいいのか?」
「いいに決まってるじゃない! お兄ちゃんの服とかSSR並みのレアだよ! ありがとう!」
「あ、ああ。言っとくがそれ着て外に出るなよ?」
「分かってるよ、そのくらい」
茜は嬉しそうにジャージをもらうと自分の部屋に帰っていった。
「あんなもので良かったのかなあ……」
疑問には思うのだがあの超いい笑顔を見ると何も言えなかった。
まあ悪用できるようなものじゃないしいっか。
その夜、早速茜は俺のジャージをパジャマにしていた。美少女が残念美少女になった気がするんだが本人は非常に上機嫌だ。
「ありがとね! お兄ちゃん! おやすみー」
そう言うと茜は部屋へと帰っていった。