妹は超能力者?
「お兄ちゃん! おはよー!!」
爽やかな朝だなあ、爽やか?!
目覚まし時計に目をやると短針が5を指していた。
「いくらなんでも早くないか? あと起こしてって頼んだっけ?」
「お兄ちゃんとイチャイチャするために早めに起こしに来たんです! ギリギリで起こしたら時間無いでしょ! さあ、ラブラブしましょう!」
「待て待て、俺は朝はゆっくり寝たいんだが」
「お兄ちゃん昨日早く寝ちゃったじゃない、この時間でもスッキリしてるでしょ?」
「確かに早め……ん? なんで俺の寝た時間分かるんだ?」
「妹センサーの力です」
「訳の分からない能力をつけるな」
ただでさえぶっ飛んでるのに、超能力までつけないでくれ。
目が覚めてるのは本当だし、たまには早起きするか。
布団をはがして起き上がる、爽やかな朝だなあ。
「ところで」
「なに?!」
「着替えるので出……」
「いや」
「だと思ったよ、流石にはずかしいから着替える間くらいでてってくれ」
「今更なにを恥ずかしがっての? 最近まで一緒にお風呂に入る仲じゃない」
一緒に入ったのは幼稚園までだったはずだが……
「お前の最近は幅が広すぎるぞ」
「今だって一緒に入っていいと思ってるんだからいいでしょ」
それはもっと良くない気がするのだが。
「出てってくれる妹って好きだなあ」
「出てくわ」
即答した。
茜が無事出ていったので着替えることにする。
パジャマを脱ぎながら茜のスパッツが見えなかったことについて思いを回らせそうになって考えないようにする。
まさかマジで裸ワイシャツ……まさかな。
自分のワイシャツを着てズボンを履くと留め具を止めた瞬間に茜が部屋に入って来た。
「慎しみ深い妹がお兄ちゃんは好きなんだよね! ちゃんと待ったよ!」
なんでタイミングがわかるのか? この部屋隠しカメラでもついてんのだろうか?
「よく待てました。ぴったりのタイミングで入って来たのも妹センサーの力か?」
「ううん、お兄ちゃんがズボンをはいた音がしたからいいかなって」
うちの妹はどんだけ耳がいいんだろう? それを考えると怖いので思考を追いやる。
「で、イチャイチャってなにするんだよ? 過激なのは無理だぞ」
「わかってるよー、今は隣でおしゃべりだけで我慢する!」
そういうと茜がベッドに座ってぽんぽんと隣を叩く。そこに座ってということだろう。
明らかに慎みとはほど遠い距離に座れといっているようだ。
というかめっちゃ近い。
「ほらほら、座って座って」
観念して茜の隣に腰をかける。シャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。
正直にいうと茜は魅力的だと思う。兄妹でなければ理性がやばいレベルだ。
「わかったよ、話をするだけだぞ」
「時間がないんだから、早く早く」
今はまだ5時20分だぞ、いつも6時に起きてるから30分以上余裕があると思うのだが……
「お兄ちゃんとの時間は1分でも惜しいからね! ほら、お話ししようよ!」
「思考を読むなよ! わかったってば」
妹センサーこわいよ!
「ところでなにを話すんだ」
「愚問だよお兄ちゃん。話をすることが大事なんだよ! 内容は問題じゃないの、天気の話だってテストの点数の話だってお兄ちゃんとすれば楽しいんだよ!」
うーん、そうなのか? 俺は内容を機にするのだが。
「じゃあ俺以外の好きな人の話でも……」
「さあ! お兄ちゃんのパソコンの隠しフォルダに入ってるjpgの話をする? それとも妹がどれだけ好きかを話す?」
「妹の話で頼む」
なんで知ってんだよ、こわい!
「じゃあ好きなだけどれだけ私を好きか言っていいですよ、さあさあ!」
「お前可愛いよな」
「そうでしょう、そうでしょう。他には?」
「他にはって……たくさんは急には思いつかないよ」
「まあいいでしょう。では残りは私がいかにお兄ちゃんを好きか話してあげます」
この後30分くらい、延々と俺をいかに好きかについて語る茜の話を寝ぼけた頭で聞く羽目になった。