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フードコート

「やっぱりスイーツはデートの基本だと思うんだ!」

 そういう妹に連れられて、俺はパフェを出している店に入っている。

 そこまではいいさ、ただ……なんだこのパフェ!

 俺の目の前には『山』があった。生クリームとアイスでできた山だ。地層にはチョコとコーンフレークも見える。

「あの……茜さん? これはなんですか?」

「カップル用のジャンボパフェですよ? これのためにここに来たんだよ?」

 しれっと言う。カップル用と言うよりもファミリー向けと言ったほうがいいような生クリームの山を見ても平気な顔をしている。

「まさか……最後は『お兄ちゃんあとは任せたよ!』とか言うつもりじゃないよな?」

「安心して、甘いものは別腹だよ! あとお兄ちゃんと違って運動してるからちゃんとカロリーは使ってるよ!」

 さりげない俺のディスは置いておいて、俺も食べるほうだがこの量を食べるのはキツイ。

 それはわかってるはずなのになぜ頼んだのか?

「お兄ちゃん!『カップル用』って言うのが大事なんだよ? ちゃんとスプーンも二つついてるし、同じものを一緒に食べられるでしょ。二人分を別々に頼んだら『アーン』や『一口ちょうだい』なんて人前でやってくれないじゃない! だから私はあえてこの食べ切れるかわからないものを頼んだの!」

 わかってて頼んだのか……

「俺は食べ物を粗末にする奴は嫌いだぞ」

「お兄ちゃんも食べるんだから私の食べ残しはお兄ちゃんの食べ残しなんだよ?」

 暴論で返された、連帯責任って怖いね! 将来連帯保証人とかになっちゃダメだな!

 などとよくわからない考えが浮かぶ。愚痴ってるとアイスが溶けそうだし食べるか……

「はい、アーンして」

 茜が当たり前のようにクリームをすくって俺の口に向ける。

「いや、人目がある場所でそれは……」

「嫌なの?」

「泣くふりをしてもやらないからな」

「これがやりたくて頼んだんだよ!? ちゃんとやってよ!? あ、私と間接キスがしたかった? じゃあ一口目は私が食べるね」

 そういって一口食べるともう一度すくってこちらへ向ける。

 あ、これ食べるまで納得しない奴だ。

 RPGで「はい」を選ぶまで同じ質問を繰り返すアレだわ。

「わかったよ、しょうがないな……」

 キリがないし、アイスが溶けるのは待ってくれないのでスプーンを口に入れる。

 うまいなこのパフェ。

「もっとこう粘っこく舐める権利がお兄ちゃんにはあるんですよ!? もっと余韻を味わってよ!?」

「今日はいつもに増して過激だな」

「だってこの辺まで来ると知り合いに会うことなんてほとんどないから……誰にも見られないんだからいいでしょ!」

「さあ、今度はお兄ちゃんが私に食べさせてくれる番ですよ、さあ! さあ!」

 我ながら妹に甘いとは思うのだが一口食べれば納得するだろう。

「ほら、あ、アーン」

 スプーンを出すと即口に入れた、ブラックバスでももうちょい疑うぞと言うレベルの食いつきの良さだった。

「うーん、お兄ちゃんの味がするね!」

「お前俺を食ったのかよ!?」

「ものの例えだよ?」

「知ってるわ!」

 じゃあ普通に食べるか。

ーーーーーーーーーーー

 終わらない。一向にパフェが減ってくれない。いや、半分くらいは食べたのだがその辺できつくなってきた。

 茜はアーンで放心状態になってしまったので俺が食べるしかない。

もぐもぐ、もぐもぐ、ムシャムシャ。

 やっと残り3分の1くらいまで減ったがそろそろ限界……茜ももう少し食べてくれよ……

 待てよ? 茜は初めの一口アーンで食べたが、それっきり恍惚としているんだが……もしかして?

「茜、アーン」

 俺はスプーンに山盛りのクリームをのせ差し出す、が早いかパクリと食べてしまった。咀嚼している様子すらないのだが大丈夫だよね?

「まだいけるか? アーン」

ぱくり

 あ、こいつ俺がアーンすればいくらでも食べるわ。

 と言うわけでパフェの残りは全部アーンで茜に食べさせた。

 気のせいか俺が差し出したスプーンを普通に食べるときより舐めていたような気がするが……気のせいだな!

 俺はあまり考えないことにして店を後にした。

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