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一緒にお出かけ

「おーい、行くぞ」

「ちょっと待って、まだどの服にするか決まってないの」

 茜も女の子だなあ……俺なんか数秒でいつものTシャツにジーンズと決めたのに。

待つこと数分ーーーーーーーーー

「お待たせ! じゃあ行こっか!」

 茜は水色のワンピースを着て二階から降りてきた。

 ああ、似合うなあ、デートって言っても兄妹なのにすごく気合が入っているようだ。

 ちゃんとメイクまでバッチリしているが、褒めると調子に乗りそうだなあ……

「メイクバッチリにしたところで言うのもなんだが、メイクしないほうが可愛いぞ。メイクしなくても平気で外出できるのは10代の特権らしいぞ」

「……お兄ちゃんは嫌いだった?」

「いや、可愛いと思う」

「じゃあいいよ、世界中の人が嫌いなメイクでもお兄ちゃんが好きだって言ってくれれば私はそうするよ」

 頰が赤くなっているがこれもメイクのせいだろうか。

「お前は可愛くないって言う人より可愛いって言う人の方が絶対多いから安心しろ」

「えへへ///」

 ただでさえ頰が赤かったのに、そう言われると顔全体が真っ赤になっている。

「お兄ちゃん!?!? 近いよ」

 俺は妹に顔を近づけて。

 コン

 額をくっつけた。

「お、お、お兄ちゃん何をしてるんだでしゅか」

 めっちゃ噛んでる。

「いや、顔が赤かったからまだ熱があるのかと思って」

「大丈夫です!! あんまり思わせぶりな行為は慎んでください!!」

 熱はないようだし大丈夫か。今日のこと楽しみにしてたようで昨日も遅くまで隣の部屋で物音がしてたようだし寝不足かな。

「じゃあ出発な」

「はい、デートに出発です!」

 もう否定するのも面倒になってきたし、兄妹デートというものが俺の知らない業界にはあるという風に思っておこう。

 玄関を開け表に出る。日差しは強く皮膚を刺すように暑い。

「あ、あの、お兄ちゃん……その」

 なんだろう?モジモジしているが、よくみると手が震えてる。

「ああ、外が怖いのか」

「なんでお兄ちゃん基準で判断するんですか! 私はお兄ちゃんみたいに夜行性じゃありません! それより手! 手ですよ! デートなら手を繋ぐものでしょう!」

「わかったよ」

 手を差し出すとすぐに茜が手をかぶせる。握る手の力は強く、それは絶対に離さないという固い意志の表れのようだった。

「バスまであと30分もあるのか……」

「いいじゃないですか」

 茜は俺が下調べしなかったことを責めるでもなく楽しそうにしている。だが謝らないといけないだろう。

「ごめん、調べとくんだったな」

「いいのいいの、お兄ちゃんが進んで私とお出かけしてくれるのが嬉しいんだから! 内容なんて実際のところ重視してないし、だいたい彼女のいないお兄ちゃんがエスコートなんてできると思ってないもん」

 ぐさりと刺さる言葉を言う。

 実際に彼女がいたことなどないので正論ではあるが。

「悪かったよ、今度はちゃんとエスコートするから勘弁してくれ」

「お兄ちゃん、こう言うのは付け焼き刃じゃダメなんだよ? 私でもっともっと練習しないとね!」

 とても嬉しそうに言う。妹でデートの練習か……兄としてどうなのだろうか……

「あんまり面倒をかけるわけには……」

「私にならどんな面倒をかけても大丈夫! むしろどんどん依存してよ! ちゃんと受け入れるからさ」

 ヤバイ、うちの妹、すごい頼れる……ただ……

「頼むから変な男に引っかかるなよ」

「もうお兄ちゃんっていう超がつくほどの変な男に引っかかってるから無理」

 俺は変な男のくくりに入ってしまうのか……

 その時遠くにバスが見えた、この妹の精神攻撃から逃げるため、バスが止まるなりすぐに乗り込んだ。

まだデートは始まってすらいないのだった。

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