トロルの上手な倒し方
セリーヌ王女をネルが撃退した次の日、俺たちは魔物の領域の中に踏み込んだ。
魔物の領域の中は富士の樹海の様な雰囲気で木々が鬱蒼としていて普通の人なら確実に道に迷うだろう。
俺たちは道に迷って帰れなくならないように木に目印として赤色の塗料を塗りながら進んだ。
暫く進むと森の中にしては開けた場所に出た。
丁度昼時だったのでそこで昼食を摂っていると大きな足音がこちらに向かって来るのが聞こえた。
バキバキと木々を薙ぎ倒す音がするから多分結構な大きさなんだと思う。
俺たちは急いで昼食の残りを掻き込み全員剣を構える。
姿を現したのは角が一本あり大きな目が1つそして体長が多分10メートル程の二足歩行で歩く魔物だった。
俺は姿を現した瞬間に目に神気を集めて見る。
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種族 トロル
脅威 Aランク
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「トロルか…」
俺がトロルを見上げながら呟くとケビン達はザワザワとザワついていた。
「ト…トロル…流石に無理です!逃げましょう!」
ケビンが俺にそんな事を言って来るが俺はケビン達に気合いを入れる為に大きな声で命令する。
「お前達、退がれ!俺がトロルの倒し方のお手本を見せてやる!」
俺はゆっくり歩きながらトロルの前に向かう。
〜ケビン視点〜
私、ケビンとオーガ隊は教官であるユウさんの言う通り後方に下がった。
「いくら教官殿が強くても流石にトロルは無理じゃないか?」
同じ隊員のリクが俺に問い掛ける。
リクがそう言うのも無理もない、トロルは筋力が強く時には亜竜ですら倒す事があるらしいからだ。
「確かに普通なら無理だが教官殿だぞ?何とかなるんじゃないか?」
私たちや騎士団の人間なら無理だが特訓を受けた時に私たちが全員で掛かっても擦りもしなかった教官殿なら大丈夫な気はする。
「始めるぞ!目を離すな!」
教官殿の号令を聞き私語を止め私たちは一瞬たりとも見逃さないように目を皿にして見る。
教官殿がトロルの目の前に立つとトロルは右の拳で教官殿を殴る。
振り下ろされた拳の風圧で土煙が舞い教官殿を覆い尽くした。
数秒程経つと土煙がはれて教官殿の姿が見えた、教官殿はトロルの拳を左手で軽く受け止めていた。
「この様にトロルの力はとても強い、力比べでは絶対勝てないからしない様に、わかったか!」
「「「サーイエスサー」」」
いや、普通に勝ってますけど…むしろ教官殿は軽く押さえてるけどトロルは青筋立て必死に押してますけど!
「ふん!」
教官殿がトロルの拳を羽虫を払う様に上に払うとトロルはバランスを崩したたらを踏む。
「正しい対処法は、拳が来たら…躱す!」
トロルが体勢を立て直しもう一度拳を振るう、教官殿は踊る様に拳を躱しトロルの足元に踏み込んだ。
「そして足を…払う!」
教官殿がトロルの右足に蹴りを放つ、バキ!ゴキ!ベキ!と破滅的な音が響く。
いやいや、払うどころじゃないんですけど!むしろ骨が折れて飛び出してるんですけど!
「片方だけでダメなら…両方!」
トロルの左足も同じ様に蹴る。
両方の足を折っちゃったよ…なんかトロルが可哀相になってきた。
「そして!倒れた瞬間トドメを…刺す!」
教官殿は剣を抜きトロルの首筋に差し込む。
トロルはビクンビクンと跳ねて力尽きた。
「どうだ!わかったか!」
「「「サーイエスサー」」」
わかりました…教官殿は絶対敵にしてはならない事が。
「!…うん…うん…わかった」
「教官殿!いかがなされましたか?」
私は、教官殿の顔色が急に変わった事に驚き話しかけた。
「戻るぞケビン!急げ!」
教官殿は少し焦った様子で剣を仕舞い私に命令する。
「一体どうされたのですか?理由を教えてください!」
「……王都が攻撃されているらしい」
「何故わかるのですか?」
「コレだよ」
教官殿は首に下げている指輪を持ち言う。
「それは?」
「こいつは魔道具でな、対となる指輪を持っている者と念話が出来るんだよ」
「そんな物が…」
私がまじまじと指輪を見ていると教官殿は服の中に戻し。
「嫁さん達に持たせているから王都の状況がわかったんだ」
「それで…敵はなんなのですか?」
「……竜騎士だ!」
「そ…そんな」
私が知る中で竜騎士がいる国は帝国しか無い、帝国と戦争になるのか…私は目の前が真っ暗になった。




