ヘレン登場しかし絡み無し
次の日、出発2日目昨日真っ白に力尽きていたケビンも朝には意識が戻ったが精神的には完全に凹んでいて、ケビンの馬車からは男のすすり泣く声が聞こえる。
ケビンと同じ馬車の騎士達が困った顔で俺の元に集まった。
「教官殿!ケビンを何とかして頂けないでしょうか?」
「ほっといたら復活するんじゃないか?」
正直メンドい、なんで男を慰めなきゃならんのか。
「無理だと思います!」
「何故俺なんだ?お前達じゃダメなのか?」
「教官殿が原因だからです!」
「やっぱり…昨日の事か?でも、お前達にとっては王女からのキスはご褒美だろ?」
俺には拷問だが…。
「いえ、ケビンは別です!ケビンは妹に操を立てているので今回の事がショックだった様です!」
ケビン…そこまで妹に…。
「わかった、じゃあ行ってみるか」
流石に罪悪感が湧いてきた。
「「お願いします教官殿!」」
俺はケビンの乗る馬車に移動し中に乗り込んだ。
「ケビン…大丈夫か?」
俺が聞く事じゃないが…。
「教官殿…教官殿!教官殿〜!!」
ケビンが泣きながら縋り付いてくる。
「教官殿!自分は…自分は!」
男に縋り付かれて喜ぶ趣味は無いのでケビンを剥がして目線を合わせる。
「言ってみろ、ケビン!」
「自分…昨日のキスはファーストキスだったのです!」
あぁ…なんて悲劇…。
俺は同情を禁じ得なかった。
ケビンは遠い目をする。
「妹の為に取っておいたファーストキスを王女殿下に奪われたのです…」
「すまん……俺のせいだな」
罪悪感がハンパない…。
「いえ、今回は自分も油断していましたし、アレはどうしようもありません」
「そうか…」
「ですが!妹に何と言おうか…王女殿下とは言え、ファーストキスを奪われるなど何という失態!」
ケビンは悔しそうに拳を握りしめ歯をくいしばる。
「ケビン…昨日の事は忘れろ!お前は昨日の夜睡魔に襲われて皆より先に寝ていた!それで良いんだ!」
「それで…良いんでしょうか?でも皆は…」
「ついて来い!」
俺は馬車を出て他の騎士達が食事をしている場所に行く。
「全員聞け!皆に聞く!昨日の夜このケビンは何をしていた?」
「「「……?」」」
騎士達が考え込んでいる。
「見張りもせずに馬車で寝ていたと聞いたんだがどうだ?」
俺が尋ねるとケビンと同じ馬車の仲間が。
「「はいっ!その通りです!」」
騎士達全員がケビンを驚いた顔で見る。
「では、罰を与える!この場合は連帯責任としてケビンが乗っていた馬車の者は馬車を降りて走って移動だ!わかったか!」
「「「サーイエスサー!」」」
それから俺たちは朝食を食べて移動を開始した。
移動中、俺たちセリーヌ王女一行は特に盗賊や魔物に襲われる事もなく順調に移動できた。
ケビン達はと言うと、全員笑い合いながら走っているので大丈夫だろう。
その日はそのまま進めるだけ進んで野営となった、相変わらず隠れてついて来ているヤツが居るが監視しているかの様に何もして来ない。
気にならないと言うと嘘になるがあまり気にせずその日は終わった。
セリーヌ王女も移動で疲れたのか、それとも昨日のケビンとのキスで満足したのか大人しく馬車で寝ている様だ。
正直、見知らぬ尾行者よりセリーヌ王女の方が警戒している今の状況は、ほんと…どうしてこうなったっと言いたくなる。
次の日の昼過ぎにオスカー領に到着し、夕方前にはケビンの実家がある、オスカー街に到着した。
その日は1度解散して街で英気を養い明日から魔物の領域に出発する事になった。
俺も適当な宿に泊まって明日に備えようと思っていると、ケビンが妹を紹介したいと言ってきた。
「ケビンの妹?何故俺に?」
「教官殿ならわかってくれると思いまして」
「ん?どういう事だ?」
俺はケビンに促されるままケビンの実家、オスカー領の領主の館に向かった。
ケビンが玄関のドアを開けると、中にはメイドさんが並んでいた。
「「「お帰りなさいませ若様」」」
全員が綺麗に一礼してケビンの荷物などを受け取る、ケビンは一言ありがとうと言い俺とケビンは中に進む。
「流石、貴族の屋敷だな」
俺が屋敷を褒めると。
「いえ、それほどでもありませんよ…田舎の貴族ですから」
ケビンが1つのドアの前で立ち止まる。
「ここです、それでは開けますね」
ケビンがドアを開けるとそこには、金髪縦ロールで目が少しつり目なまさに貴族令嬢といった格好の美人が椅子に座っていた。
「ヘレン!今帰ったよ!」
ケビンが部屋の中に入って椅子に座っている女性に話しかける。
どうやら彼女がケビンの妹のようだ。
「お兄様?お兄様〜♪」
ヘレンはケビンに抱き付く。
「元気にしてたかい?ヘレン」
「はい、お兄様は逞しくなられましたね///」
まぁ、確かにムキムキのマッチョメンだしな。
「逞しい俺は嫌いかい?」
ケビンが尋ねると
「いえ、カッコイイです!でも…ほかの女性にお兄様を取られてしまいそうで」
「はっはっは、ヘレンは心配性だな!俺がヘレン以外に興味が無い事は知っているだろう?」
「お兄様♡それでも不安なのです、ですから…えい♡」
ヘレンはケビンの首に手を回し唇を重ねる。
もう、帰って良いかな?正直他人のイチャイチャを見せられるのって殺意が湧くな。
「お兄様♡私のファーストキスですよ、如何でしたか?」
「あぁ、ありがとう」
ケビンがヘレンを腕で抱き上げながら笑顔で応える。
「〜〜♡」
ヘレンはチュッチュチュッチュとキスの雨を降らせる。
それを生暖かく見守れるほど俺の精神力は高く無いので俺は部屋のドアを閉めて屋敷を後にした。




