第3王女の依頼
セリーヌ・トライ・パスト彼女はパスト王国の第3王女だと自己紹介をした。
どうやら、彼女が今回の依頼人らしい。
先に彼女の容姿を紹介しよう。
身長は俺より少し小さめで多分180㎝程あると思う。
肩幅も張っていて、金の甲冑を着込んでいる為、正確には分からないが腕や足の太さは多分かなり太めのまさに筋骨隆々と言った言葉が似合う女性だ。
顔も骨格がゴツゴツ出ていて多分体脂肪率一桁だろ〜な〜と言うのが見て取れる、正直この世界の美的感覚は俺には理解出来ないが、彼女は美女の部類に入るらしい。
ケビン以外の騎士が頬を赤らめ熱い視線を浴びせている事からわかった。
セリーヌ王女はそういう視線は浴び慣れているのだろうどこ吹く風と言う感じで席に座っている。
「それでは、セリーヌ王女殿下今日は何用ですか?」
俺は平静を装いつつセリーヌ王女に尋ねる。
「いきなりだね、君は…初めて会う相手に」
ふぅ、と溜息を吐いて椅子の背もたれに寄りかかってセリーヌ王女は俺を見る。
「初めて?以前会いましたよね?図書館で?」
俺が問い掛けるとセリーヌ王女は小首を傾げ顎に手を置き少し考えると、あっ!とした顔になり話し始めた。
「それは、私の姉多分図書館に居たんなら第2王女のカトリーヌ姉さんだと思うわ」
衝撃の事実だった……まさか、そんな…こんな人物が2人も居るだと!あまりの衝撃に頭が真っ白になる中更なる追い打ちが加わった。
「私と第2王女のカトリーヌ姉さんの他に第1王女のマリアンヌ姉さんが居るんだけどいつも父上と行動してるから会う事はあまり無いが」
俺はゴクリと喉を鳴らし背中に流れる冷や汗を感じながら平静を装いつつ問い掛けた。
「マリアンヌ王女は御二人と良く似てらっしゃいますか?」
すると、セリーヌ王女は驚いた顔をして俺を見る。
「会った事があるのかい?そうだよ、私達3人は三つ子なんだ」
俺は天を仰いだ。神よ…この様な試練は余りにも酷い…俺はとりあえず気を取り直し今回の依頼内容について問い掛けた。
「なるほど…説明ありがとうございました、それでは改めまして今回の用件を伺いたいのですが?」
セリーヌ王女は背もたれから体を起こし俺をスッ!と見つめて語りかけて来た。
「実は…今回君を呼んだのは、君に依頼を出したいからなのよ」
「依頼とは?」
セリーヌ王女はすぅ〜と息を吸いゆっくりと語りだす。
「実は…王族は王位継承権を得る為に狩りである獲物を狩らなければいけないんだけど…その獲物が……竜なのよ」
「……竜か」
確かに力を見せる為に倒す相手としては最適だろう。
だが、正直この世界での竜は他の世界の例に漏れず最強の存在で、暴れれば国1つ無くなるレベルだ。
「あぁ、でも本物の竜、俗に言う属性竜とかじゃなくてワイバーンとかの亜竜だよ」
「なんだ、亜竜か…なら何とかなるな」
正直、俺一人ならどんな敵が来ても怖く無いが守りながらだと万が一の時がある、しかも今回は王族を守りながらだ。
「で?俺以外には何人程護衛は居るんですか?」
「今回は君とオーガ隊の予定だけど良いわよね?」
セリーヌ王女は少し不安気な表情で聞いて来た。
「あぁ、問題無いですよ。それで向かう場所は?」
ホッと安堵の息を吐いたセリーヌ王女は見た目の割に繊細そうだ。
「場所は、オスカー領魔物の領域よ」
「オスカー領って事は、ケビンの実家か」
「はっ!自分の実家であります!」
俺とセリーヌ王女が話しているとケビンが答えた。
「ケビン!オスカー領迄はどの位かかる?」
「はっ!馬車で2日程であります!」
「ふむ、では何日の予定なのですか?」
俺はケビンから道程の距離を聞くとセリーヌ王女に今回の依頼の予定を聞いた。
「予定では、7日よ。多少誤差もあるかもだけど」
「7日ですか…では出発は何日後ですか?」
「出発は、2日後の午前中よそれまでに準備してね」
セリーヌ王女の言い方だと、こちらが断ると言う選択肢は無いようだ。
「報酬はどうなりますか?」
断れないならせめて報酬だけは貰わないと割に合わない。
「報酬は…私でも良いわよ♪」
セリーヌ王女はそんな事を宣いながらウインクをしてくる。
「は…ははは、御冗談を…」
俺は我慢出来ずカタカタと身体を小刻みに動かしながら額に汗をタラリと流す。
「まぁ、今回は王宮から成功報酬として白金貨10枚が出るから安心して♪」
どうやら冗談だった様で、気付かれない様に安堵の息を吐いてセリーヌ王女に向き直る。
「わかりました、その依頼お受けします!では、2日後この王宮に来ればいいですか?」
「えぇ、それで結構よ。」
セリーヌ王女の返事を聞き俺は立ち上がり一礼する。
「それでは2日後参ります。では失礼いたします」
「えぇ、2日後待ってるわ♪」
最後にセリーヌ王女はウインクを一度する。
俺は不自然にならない程度に急ぎ部屋を出て王宮を後にする。
ーユウが部屋を出た後の王宮の一室ー
「あれがユウ・シンドーか…なかなか面白い男ね♪」
セリーヌ王女が唇を舌でペロリと舐めながら言う。
「良かったのですか?あの事は言わなくて」
控えていたケビンがセリーヌ王女に問い掛ける。
「良いのよ、何も知ら無い人を堕とす方が楽しいじゃない?それに、あの少し怯えた表情は、そそるわ!」
ケビンは自分の教官の女の趣味は理解している、王女が真逆の存在である事も、故に王女の罠にかかりそうになっているのを知り心の中で合掌して。
「あまり、無茶されませぬ様お願いします」
「も〜わかってるわよ!戦ったら勝てないんだし慎重に行くわ」
この一言しか言えない自分を恥じながら、打開策を考えるしか無かった。
だが、教官ならこの状況も何とかする事ができると言う期待もしていた。




