試合(蹂躙)です
次の日、試合当日俺は騎士団の訓練場前に来ていた。
「へ〜立派だな」
「そ〜ですね」
「せやね〜」
俺たちが訓練場を眺めていると俺たちが訓練した騎士達が集まってきた。
「全員整列!休め!」
騎士達全員がバッ!ザッ!と言う音を鳴らして軍隊の休めの姿勢をとる。
「貴様ら!今からが本番だ!行くぞ!」
「「「サーイエスサー!」」」
俺たちは訓練場の中に入る。
訓練場の中はコロッセオの様な造りになっていて、大きさは東京ドーム一個分くらいありそうだ。
俺たちは訓練場の真ん中に整列する。
すると、相手の騎士達はニヤニヤしながら絡んでくる。
「ほ〜逃げずによく来たな?そこだけは同じ王国騎士として褒めてやるよ」
「まぁ、すぐにクビだけどな、あ〜っはっはっは!」
「せいぜい無駄な足掻きを見せてくれよ?クハハハハ!」
相手の騎士達がそんな罵声を浴びせる。
だが俺が訓練した騎士達は微動だにしない。
そして審判らしき男が出てきて試合のルールを説明する。
ルールを要約すると、まず、武器は用意されている刃を潰した試合用の剣を用いる、防具も同じで統一されている。
次に勝利条件は、相手陣地の制圧もしくは相手を全員行動不能にする事。
陣地は訓練場の両端にあり、旗が立っているルールはこれだけだ。
俺は自分の陣地に移動して最後の指導をする。
「整列!!これより貴様らは最大の困難に立ち向かう!相手はこちらの3倍以上の数だ!まさに生きるか死ぬかの瀬戸際だ!どうだ!楽しいか!」
「「「サーイエスサー!」」」
「今この時より貴様らは豚を卒業する!貴様らは騎士だ!」
「「「サーイエスサー!」」」
「貴様らに問う!貴様らの特技は何だ!!」
「「「殺し!殺す!殺せ!」」」
「すぅ〜…貴様らはこの国を愛しているか!!全てを賭けられるか!!」
「「「ガンホー!ガンホー!ガンホー!!」」」
騎士達の気合が十分に入ったのを確認して俺は満足気にうなずく。
「よし!戦闘準備!」
全員が速やかに持ち場に着く。
ピー!っと笛の音が鳴り試合が始まった。
「うぉ〜〜!!」
騎士達は雄叫びを上げながら突っ込んでいく。
隊列は槍の穂先の様な一点突破だ一番先頭にはケビンがいる。
「盾隊構え!」
相手の騎士団は盾を出して足止めをするつもりらしい。
だが、ケビンに対してそれは悪手だ。
「ぬぉ〜!うら!!」
ケビンが盾隊に向かってタックルを放つと盾隊の騎士達は紙のように吹き飛ぶ。
ケビンは、今回訓練した騎士達の中で最も実力が上がった騎士だ。
身体つきも同一人物とは思えない程変わり、前は背の小さいデブだったのが今では岩の様な筋肉で覆われたナイスマッスルになっていた。
「何だ?何かいたか?」
と言う捨て台詞を言いながらケビンが本陣まで突っ込む。
「くっ!何なんだあいつら…何をしている!数で押し潰せ!相手は少数!数で押せば何とかなる!」
ケビン達の前に50人ぐらいの隊列を組んだ騎士達が待ち構える。
「邪魔だ〜!死〜ね〜!!」
ケビン達の前に居た騎士達はボーリングのピンの様に弾けとぶ!
ケビンは吹き飛んだ騎士達を一瞥し。
「ちっ!まだ生きてやがる!」
と捨て台詞を吐き本陣に突っ込んだ。
訓練場はまさに地獄絵図、騎士団最強の一番隊がオークにも負けた落ちこぼれの寄せ集めの隊に一方的に蹂躙される、と言う正に見ている者達は我が目を疑う惨状に、会場は静まり返っている。
結果は、一番隊の全滅でこちらの勝ちに終わったのだった。
その後、試合が終わって暫くケビン達が喜びを分かち合っていると、王が会場に現れた。
「皆の者!静粛に」
皆の視線が王に集まる。
王は見た目、背も小さく男と言うより男の娘って感じの見た目だった。
「皆の者!今回の試合、大儀である!」
会場の全員が膝をつき頭を下げる。
「特に今回は落ちこぼれと呼ばれた者達が王国騎士最強の一番隊を破ると言う快挙を成し遂げた!それを祝いこの者達を新しい隊に任命しようと思う」
会場が少しざわつく。
「この者達を遊撃部隊とし!名前はオーガ隊とする!皆の者異論は無いな?」
「「「「はっ!」」」」
こうして、ケビン達は遊撃部隊オーガ隊として騎士団に戻る事になった。
そして、俺は王宮に呼ばれたがマリアとカレン、グラは居ない。
マリアは知り合いに会いたく無いからで、カレンは堅っ苦しい雰囲気が嫌いらしい、グラはドラゴンなので論外だった。
俺は王宮の謁見の間の様なところに通され広間の中央で待つ。
目の前には2段程の段があり、その上に如何にもな王の座る椅子があった。
コツ…コツ…と靴の音が鳴り王が入ってくる。
俺は、膝をつき頭を下げて待つ。
「面を上げよ」
俺は顔を上げて戦慄した…王はまさに男の娘といった風貌で服が男物じゃ無かったら女に間違えそうだった、だが!俺が戦慄したのは王の隣にいる者にだった。
俺が戦慄していると王が。
「そち、そちの名は何というのだ?」
「はっ!ユウ・シンドーでございます」
「ユウ・シンドーか…今回のそちの仕事まこと大義であった、褒めてつかわす!」
「はっ!ありがたき幸せ!」
「うむ!それでの〜その褒美なんだが何が欲しい?何でも申してみよ」
「はっ!それでは、王都に家を一軒頂きとうございます」
「ん?家か?何とも欲が無いの〜、まぁいいわかった!すぐに用意させよう!」
「はっ!ありがたき幸せ!」
「それでのう?ユウ、お主は妻はおるのか?」
「はっ!2人程居ます!」
「そうか…もう1人妻を増やす気にはならんか?」
「いえ!今の所はありません!」
正直悪い予感しかしないので注意深く喋る。
「しかし、お主程の男に妻が2人ではな…どうだ?こやつなど」
王は隣を指差す、俺はつい王の隣に視線を向けてしまった。
指を差された者は見た目は良く言えば某バスケ漫画の名前に赤が付くキャプテンだった、それがお姫様のドレスを纏っている光景はまさに悪夢だ。
「この子はワシの娘でな…中々に美しかろう」
「はっ!」
「しかしの〜釣り合う相手が見つからんのじゃ」
「は…はぁ」
まずい…と俺の中の警報アラームが鳴りっぱなしになり額から汗が流れる。
「どうじゃ?お主なら釣り合いが取れると思うがの?」
「いえ!滅相もございません!私はしがない冒険者で御座いますれば!」
「…そうか?ならば仕方ないの」
俺は内心ホッと胸を撫で下ろす。
「では、本日は以上じゃ」
そう言いながら、王が立ち上がり。
「ユウ・シンドー!今日の事は大儀であった!」
そう一言残して王は部屋を出て行った。
俺は頭を下げ王が退出したのを確認してから俺は王宮を後にした。




