出発前日です
次の日、今日は出発前日、俺たちは準備の為にグラの居る森に来ていた。
グラを呼びながら森の奥まで歩いて行く。
今回はマリアも合わせて3人で来ている。
マリアとは、初顔合わせだが、まぁ問題無いだろう。
暫く奥へ奥へと進んでいると、弱々しく「グー」と鳴く声が聞こえた。
俺たちは声がする方へ歩いて行くと、そこには…。
「グラ!どうした!誰にやられた!」
グラが血まみれで倒れていた、俺たちが駆け寄るとグラは弱々しくカレンの方に首を回し見つめ合う。
「うんうん…なるほど〜…どうやらこの子、森の新しいヌシを決めるんに森の全魔物と戦ったらしいで〜。そんで、ボロボロになって疲れたから横になって寝ようとしてたんやて」
「……いや!それ、寝たらダメなやつじゃない?」
「せやかて、ねむ〜てねむ〜て我慢出来ひんかったんやて」
「ったく…しょうがないな!」
俺は【無限収納】からマリアやカレンに使った《エリクサー》を取り出した。
「……う〜ん、口移し…しょうがないか〜」
俺は躊躇いながら《エリクサー》を口に含んで神気を混ぜ合わせる。
そのまま、グラの頭を持ち上げ口を開き俺の口に含んでいる《エリクサー》を流し込む。
グラが飲み込んだのを確認して、手を離すと、グラの身体が光り出した。
一際ピカ!と光るとカレンが。
「うお!」
「キャッ!」
「にゃ〜〜!!目ぎゃ〜〜!!」
俺やマリアはそこまで無かったが、獣人族のカレンには強烈だったらしく、目を押さえて蹲っている。
「だ…大丈夫カレン?」
マリアがカレンの側に寄って介抱している。
『ご…ごめんなさい』
頭の中に優しげな女性の声が申し訳なさそうに響いた。
「ん?なんだ?なんか言ったか?」
俺はマリアとカレンに何か言ったか問い掛けたがマリアは首を横に振りカレンは目を押さえてそれどころではない。
「じゃあ、誰が?……まさか!」
俺はグラの方に振り返る、すると、グラの姿が変化していた。
「あれ?グラだよな?」
『はい、そうですよ』
グラの身体は一回り大きくなり、岩で出来ていた表皮はしっかりとした皮になり、顔も岩だらけのゴツゴツした顔から、ドラゴンらしいシャープで美しい顔になっていた。
「……なんでこうなった?」
『あなたから飲ませていただいた薬のお陰です♪』
そう言いながら起き上がったグラは今まで二足歩行だったのが前脚が太くなり4足歩行になっていた、しかも翼もあり、翼を広げるとかなり大きく感じる。
「立派になったな〜」
俺は見上げながら唖然と呟く。
そして俺は目に神気を集めて確かめる。
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氏名 グラ・シンドー
種族 アースドラゴン
脅威 SSランク
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「……なるほど…」
と言うしか無かった……。正直進化してAランクがSSランクって強くなり過ぎじゃないか?しかも、何気にシンドーって名字まで入っているし。
まぁ、ペットも家族って言うし、気にしない事にしよう。
「念話も出来るようになったんだな」
俺はグラを撫でながら言う。
『はい、他にも小さくなったりも出来ますよ♪』
楽しげなグラの声が響く。
「おお!じゃあやってみてよ!」
『はい!』
シュルシュル〜〜とグラは小さくなっていって、最後には手乗りサイズになっていた。
「おお〜!便利だな〜!でも、ずっとこのサイズになって居られるのか?」
『はい、魔力で小さくなるので変化する時には魔力を使いますが変化してそのままなら特に何も使いません』
「しかし、進化したばっかりなのによく分かるな〜」
『確かに、何故でしょう?何故だかわかるって不思議な感覚ですね♪』
「ウチらもそうやったし、そんなもんちゃう?」
カレンが目をパチパチさせながら復活してきた。
「大丈夫か?カレン」
「まだ、目がチカチカするねんけど…何とかな〜」
「無理するなよ」
「もう大丈夫や!ほへ〜〜、しっかしこのサイズになるとメッチャかわええな〜!」
「本当にね〜」
それから、暫く3人でグラと戯れて今日の本題を切り出す。
「グラ、お前に頼みたい事がある」
『はい、何でしょうか?』
グラは「クー」と鳴きながら俺の肩に乗る。
翼をパタパタさせながら飛んで来る姿は癒される。
「実はな…言いにくいんだが、馬車を引いて貰いたいんだ」
『馬車…ですか?私じゃないと引けない程大きいんですか?』
肩に乗ったグラが小首を傾げる。か、可愛いしかも声とのギャップがすごい。
「あぁ、コレなんだがな」
俺は【無限収納】から、作った馬車を取り出す。
『これは…大きいですね…』
「念話だけどその声でその台詞はマズイ…ゲフンゲフン、ってそうじゃ無くて!無理そうか?」
『やってみないと、分かりませんが…多分大丈夫でしょう』
「じゃあ、元に戻ってくれるか?」
グラは「クー」とひと鳴きするとグングンと大きくなり元の大きさに戻った。
俺は馬車にグラを繋ぐ、繋ぐ部分は昨日カレンと狩ったオーガの皮を使って留め具にはオーガの骨に皮を巻いたものを使っている。
「引いてみてくれ!」
ドキドキしながら、グラと馬車を見る。
グラはゆっくり一歩づつ歩き出した。
ガラガラと音を立て馬車は問題無く動き出した、グラも余裕がありそうだ。
『これぐらいなら大丈夫ですね』
グラから馬車を外し、【無限収納】に収納する。
「とりあえず、馬車の方は何とかなったな!後は、ジルん所行って依頼の最終確認だな!」
「では、戻りましょうか」
「さんせ〜!戻ってゆっくりしよか〜」
『では、お供します』
グラは小さくなって俺の肩に乗る。
それから、俺たち3人と1匹は仲良く街へ戻った。
その後俺たちは、ギルドに向かい受付でジルが居るか確認すると、ギルドマスター室に居ると言われ、ギルドマスター室に移動した。
「ユウか…まぁ、そこに座れよ」
俺たちはジルに促されるまま椅子に腰掛けた。
「で?何の用だ?」
「依頼の最終確認だよ」
「あぁ…あの依頼か、確かここに依頼書を入れといたんだが……あったあった!」
ジルが机の引き出しから依頼書を取り出し、俺に渡す。
内容はこうだった。
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依頼 騎士達の護送
依頼主 王宮
依頼内容
生き残った騎士達を王都まで護送
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依頼 騎士達の鍛錬
依頼主 王宮
依頼内容
騎士達の鍛錬をして貰いたい、この依頼を受ける場合テストとして騎士団の一番隊との模擬戦での引き分け、もしくは勝利、を達成条件とする。
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「どっちも面倒で割に合わない依頼だが本当に良いのか?」
「良いんだよ、面白そうだし…まぁ失敗してもペナルティーはないんだろう?」
「まあな、こんな面倒な依頼にペナルティーなんて付けたら誰もやらんよ」
「なら、王都に旅行ついでに楽しむさ」
「でも、アイツらも気の毒だよな、これで負けたら多分騎士団を解雇だぜ、豚野郎に掘られて騎士団クビとか流石に同情するぜ」
「な〜に負けなきゃ良いのさ、負けなきゃ」
「でもおめ〜一番隊つったら騎士団最強だぜ?アイツらが勝てるとは思えね〜けどな」
「勝負はやってみなきゃ分からんさ」
「まぁ、お前が良いならそれで良いんだけどよ。あぁ、それとギルドランクがBに上がるから帰りに受付で申請してくれ」
「…Bか…」
思ったより低いSランクの敵を倒してその程度か…。
「すまね〜な、この街じゃBまでしか上げられね〜んだよ、王都のギルドならSSまで上げられるからそっちで上げてくれや」
「ま、しょうがないな」
「今回の依頼、もし達成したらAはいくからな……まぁ、頑張れや!」
「おう!頑張るぜ」
俺とジルはニヤリと笑い合う。
多分ジルは達成すると期待している、ならその期待に応えよう。
すると、肩に乗ったグラが「クー」と鳴く。
「そういや、気になってたんだが…そりゃぁアースドラゴンか?」
「お!よく分かったなジル!グラって名前だ、森で懐かれてな」
「は〜本当、お前は予想の斜め上を行くな!普通、アースドラゴンに懐かれる人間が居るか?」
「ここに居るだろうが!良いじゃないか、可愛いし!」
「可愛いけりゃなんでも良いのかよ…」
ジルは呆れた顔で言う。
「ジル…お前に俺の国の格言を教えてやる……「可愛いは正義」だ!」
「そうかよ……阿呆らし!ほら、とっとと帰んな!」
ジルは手をシッシッと振りながら笑っている。
「な…まあいい、いずれわかる日も来るだろう。じゃあな!ジル!」
「ジルさん、お世話になりました」
「ジルのおっちゃん、またな〜」
「クー」
「あぁ、またな!」
俺たちは部屋を出た。
それから、帰りに受付に寄りランクアップ申請を受けて、俺たち3人は、はれてBランクになった。
その後、野菜等の食料品を買い込んだ俺たちは、宿に戻って細やかなランクアップパーティを催した、明日の事もあるので早めにお開きにして、夜、ベットの上でのランクアップパーティは早めにお開きしなかったのはお約束だ。
パーティを早めにお開きにしても最終的に就寝時間が同じだと思うのは俺だけだろうか?




