ジョージ防衛戦〜前編〜
ジルが出発してから7日が経った。
俺たちは7日間街の警備に当たっていた。
街に残ったのはE〜Dランクの冒険者でDランクもなったばかりの新人ばかりだ。
年齢も、10代後半の者ばかりで必然的に俺が指揮官になった。
ジル達が帰って来るまで警備だけでは暇だったので、剣を打った。
多分、オークの数は多い、背中に差している《神製鋼のバスターソード》一本だと追い付かない可能性がある、だから、同じ剣を一本、そして、マリアとカレンの手袋に《神製鋼》を埋め込み、格闘戦に対応できる様にした。
「ギルドマスター達が帰って来たぞ!」
斥候に出ていた冒険者が報告してくる。
俺は街の門の前でその報告を聞く。
「何人生き残っている?」
「多分、100人以上は居ると思う」
「半数以上が生き残ったか、で?オーク達は?」
「多分、1000体以上だ…」
「そうか……」
ジルの予想が当たった様だ、約束したし後は俺と嫁さん達でなんとかしよう。
「わかった、ありがとう。それで、ジル達はあとどれ位でここに着く?」
「多分あと1時間後には着くだろう」
「ならジル達の受け入れの準備をしよう!大至急、薬を持って東門に集合だ!急げ!」
今俺が居るのが東門でジョージの街は東と西に門がある。
「わかった!急いで伝える!」
斥候の男は慌てて街の中に走って行った。
それを見送ると丁度嫁さん達が歩いて来た。
「やはり、失敗したんですね…」
「あぁ、予想通りな」
「でもまぁ、失敗したんはしゃ〜ないやん!ウチらが尻拭いしたろうやないか!」
マリアはため息を吐きそうなぐらい呆れている、まぁマリアも前回のオークの集落殲滅戦に参加させられた身だから呆れるのも無理は無い。
対照的にカレンはやっと斧で魔物を殺せるとあって遠足の前の子供みたいに楽しそうだ。
「オークの数は1000体以上!だが、俺たちなら余裕だろ?」
「えぇ、余裕ですね」
「楽勝やな!」
嫁さん達に気負いや緊張はない、自然体だ。
そんな会話をしていると、冒険者達が集まって来た。
「よし!皆んな集まったな!皆んなは救護班だ!全員門の内側より出るなよ!」
「外はどうするんだ?」
近くに立っている冒険者が質問してくる。
「門の外は、俺と俺のパーティが担当するから安心しろ」
「大丈夫なのか?」
「余裕だ!俺たちは気にすんな!それより、薬の方は大丈夫か?」
「あぁ、ギルドの薬片っ端から持って来たから大丈夫だろうよ!」
「……よし!ジル達がもう直ぐ見えてくる!全員道を空けとけよ!」
100人以上の人が一気に入って来るんだ、道を空けとかないと入る事が出来ない。
冒険者達は左右に別れて道を作る。
そのまま少し待つと、まだ、だいぶ先だが土煙を上げて進む集団と、それに追われる様にして逃げて来る集団がいた。
追われているのは、ジル達なんだろう、真っ直ぐこちらに走ってくる。
「マリア!カレン!さぁ!お出迎えだ!」
「「は〜い」」
俺たちは門の外に出る。
それから、少し歩いて門からある程度(門から見えるくらい)の距離に移動した。
そうして、待っているとジル達が辿りついた。
「ユウ!すまん!やはり、失敗した!」
「気にするな!後は任せて行け!」
「すまん!頼んだぜ!あっそうだ、あのオークは人間の男を狙って襲うから気を付けろ!」
「マジか……ぶち殺す!!」
オークが襲うと言うことはそう言う事だ。
俺もケツの穴がを締めて掛からないと、精神的なダメージでヤバいかも知れない。
「ってかオーク✖️男って誰得だよ!」
俺は悪態をつかずにはいられ無かった。
この時、オークの全滅が俺の中で決定した。
ジル達が撤退したのを見送り確認して、俺は背中のバスターソードを抜く。
俺と同じ様にカレンとマリアも各々の武器を抜き、構える。
「さぁて、おいでなすったぜ!」
「ぶもぉ〜!」「ぶひぃ〜」
オークが突進してくる。
「せい!」
「はぁ!」
「うりゃ〜!」
3人が3人とも各々の武器で目の前のオークを叩っ斬る。
「マリア!どっちが多く殺るか競争せえへん?」
「油断はしちゃいけないけど、それも良いかな….良いわ!受けて立つ!」
マリアも戦いの高揚感からかテンションが高い。
オークがどんどん数を増やして、俺たちは周りを囲まれる。
「それじゃあ、おもてなしをはじめるか!」
この世界に来て初めての大規模戦闘が始まった。




