オーク集落殲滅戦(ジル視点)
俺の名はジル・ライナー、ジョージの街のギルドマスターをしている。
今回俺は、オークの集落殲滅作戦の冒険者側の指揮をとっている。
今回の作戦は、まず、俺たち冒険者がつゆ払いをおこない、雑魚を引き受け、同行する騎士団が親玉を叩くと言う作戦だ。
だが、正直今回の作戦は失敗するだろう。
原因は幾つかあるが最もな不安材料は、騎士団の面子だ。
奴らは貴族のボンボンばかりだ、多分実戦経験は皆無だろう。
王都の奴らはオークなど雑魚だと勘違いしているのだろうが、実際は違う。
オークは体長2メートル以上あり、オーガなんかと比べると弱そうに見えるが、その身体は見た目は肥ったおっさん体系だが脂肪の内側にはかなりの量の筋肉が隠されていて、その身体で突進や殴りつけるなどしようものなら、大人の男でも装備次第では一撃で殺される程強力だ。
しかも、今回来た騎士団は、成金趣味なのか金で出来た装備を纏っている。
ここまでぶっ飛んでいると、いくら貴族でも理解できない。
マトになりに来たのか?と問いかけたくなる位だ。
最悪、騎士団を囮にして逃げる事も考えなければならない。
正直、騎士団より俺は冒険者の方が大事だ、しかもジョージの街にはユウが居る。
ユウは、ジョージの街の守りを任せている、ヤツは、多分この辺り一帯で最強の冒険者だ。
数週間前俺はユウと戦い負けた。
しかも、こちらは全力なのに対しヤツはかなり、手を抜いていた。
何で分かったか?ヤツが嫁さん達を鍛えてる姿を見たからさ。
あれはまさに、人外の世界だった、だからこそ俺は守りを任せたんだ。
馬車に揺られて移動する俺たちだが、雰囲気は最悪。
3日後には、集落に着いて戦闘開始なのに頭が痛い。
原因は騎士団の傲慢な態度と言葉だが、彼奴らそれに気が付いて無い。
俺たち冒険者を盾と呼び、しかも、冒険者の半数は女だが、その女達にちょっかいをかけるから更に最悪だ。
そんなこんなで、3日後、集落に到着した。
「おいおい…マジかよ…」
集落に到着してオークの数を確認すると、どう考えても1000以上、多分2000は居る。
これでは、俺たちが戦っても焼け石に水でつゆ払いにもならない。
俺はすぐに、撤退を進言したが聞き入れてはもらえず、予定通りの作戦でいかなければならなくなった。
「オークの1000や2000我ら栄光ある王国騎士の敵では無い!」
と言い作戦開始を宣言した。
何処からそんな自信が来るのか?と聞きたくなったが、しょうがね〜から冒険者を集める。
冒険者達は悲壮的な表情でかなり怯えてる。
「今から!オーク集落殲滅作戦を開始する!分かってると思うがかなりの劣勢だ!だからヤバくなったらすぐ逃げろ、街には俺の取って置きがある」
後半は騎士団に聞こえない様に声のトーンを落とす。
「オォーー!!」
逃てもいい、と言う命令と街に帰れたら何とかなる、と言う希望があれば人間何とか気合いが入るもんだ。
「さぁ〜て、野郎共!倒した数だけ国から褒賞金が出る!稼ぎ時だぞ!豚野郎を斬って斬って斬りまくり、うまい酒を呑むぞー!」
「うぉぉーー!!」
気合い充分な冒険者達を引き連れて俺は戦場に躍り出た。
「ぶひぃ〜!!」「ブヒィ〜!!」
あっちこっちで、豚の断末魔が聞こえてくる。
俺たちは数の不利をモノともせず優勢に戦った。
だがその優勢も最初の1時間までだった。
やはり、数の不利には抗えないのか俺たちはジリジリ押されていった。
「くっ…やはり無理か…」
早く撤退したいが、背後に騎士団がいるので逃げられない。
すると、騎士達が……。
「オーク程度に何を手間取っている!これだから平民は!」
「ふん!まだ戦ってもいない奴らが好き勝手なことを言う!」
俺はつい、反応してしまう。
「雑魚の相手をなぜ我等栄光ある王国騎士団がせねばならない!そんな戦いは平民がお似合いだ!」
騎士達はニヤニヤしながらそう、宣う。
「ふん!クソッタレが!」
俺は目で周りの冒険者に合図する。
すると、全員が魔力を高める。
「ぶちかませ!《魔衝波》!」
俺たち冒険者がCランク以上になると使える奥の手の技、魔力を衝撃波にして敵に飛ばす《魔衝波》を使ってオーク共を吹き飛ばす。
すると、奥からオークキング、が姿を現した。
オークキングは、体長3メートルを超える体格でランクはBだ。
「ごくろう、彼奴は我等騎士団に任せよ!いくぞ!」
騎士達がオークキング目掛けて走って行く。
騎士達がオークキングの前まで到着すると。
「我等!栄えある王国騎士団いざ尋常にしょぶべぇらぁ」
「……魔物の前で口上を述べるヤツ初めて見た…」
近くの冒険者がポツリとこぼした。
「俺もだよ……」
他の冒険者も同様の様だ。
俺は余りのアホさ加減に開いた口がふさがらない。
その後、200対1と言う戦いにも関わらず、騎士団の攻防は一進一退の膠着状態になった。
「ぶふぅ〜!可愛い子がいるじゃな〜い♪」
膠着状態が少し続いた頃、オークキングの背後から三体の巨大なオークが姿を現した。
二体のオークはオークキングなのだということが分かる。
しかし、あと一体はどう見ても確実に大きい個体がいた。
オークキングが体長3メートルなのに対してそいつは体長5メートル以上あり何より、そいつは人の言葉を喋った。
「いや〜ん、沢山居て困っちゃう!まずは、一人目♪」
騎士の一人が捕まって、あの金ピカ装備を剥ぎ取られる。
「い〜や〜!やめて〜!」
騎士の男は少女の様な悲鳴を上げて暴れる。
「暴れても無駄無駄〜♪痛いのは最初だけだから〜ね♪」
オークの手が騎士の男をがっしり掴んで離さない。
「や、やめろ!…アァーーーーーー!!」
俺は目を背けた、……合掌。
それからあのオークに次々と騎士達が犠牲になり、俺たちはその隙に撤退を開始した。
撤退時も多少はオークに襲われたが、あのオークは、人間のしかも男にしか興味もなかった様で、オーク達も男ばかりを襲ってきた、二重の意味でケツの穴が締まる思いで必死に逃げ、俺たちはジョージの街に辿りついた。




